コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第177回
2012年4月20日更新
第177回:Apple TVの魅力を徹底分析!
新しいApple TVはとても重宝している。最近はドラマの記事を書くことが増えたのだけれど、リアルタイムの視聴はスケジュールの都合で難しい。かといって、ハードディスクレコーダーに録画しても、チェックしている番組が多いのですぐに容量が一杯になってしまうし、ブルーレイの発売前に記事を書かなきゃいけない場合が多いので、結果的にはiTunes Storeでエピソードごとに購入していくことになる。でも、Macbook Proでの視聴じゃ物足りないし、iPhoneやiPadは移動中には助かるけれど、自宅ではやはり大画面で見たい。そんなこともあって、1080pのHDに対応したApple TVは、とても助かっている。
前モデルからある機能だけれど、AirPlayによるストリーミング機能も素晴らしい。Apple TVにはiOSは搭載されていないので、好きなアプリをインストールすることは出来ないのだけれど、iPadの画面をそのままテレビに投影すれば事足りる。たとえば、僕は日本の実家にロケフリ的なデバイスのSlingboxを仕掛けてあるので、iPadのSlingboxアプリで日本のテレビ番組を再生しつつ、テレビにミラーリングするという使い方をしている。
アメリカで発売されているApple TVには、Netflixのアプリも入っているので、iTunes Storeで購入やレンタルできるコンテンツと合わせれば、かなりの数の映画やテレビを鑑賞できることになる。
でも、Apple TVさえあれば事足りるとは言い切れないところに、このデバイスの限界がある。iTunes Storeを利用すればそれなりのコンテンツを視聴できるけれど、とくにテレビ番組に関しては、ケーブルや衛星放送で提供している番組数には遠く及ばないし、見たい番組をいちいち購入していたら高くついてしまう。iTunes StoreがNetflixやAmazonのような定額制サービスを開始してくれればコストにかんしては問題がなくなるけれど、デジタル音楽を支配したAppleの参入をメディア企業側が警戒している。米CBSのレスリー・ムーンベスCEOは、生前のスティーブ・ジョブズ氏から定額制サービスへのコンテンツ提供を頼まれたことを明かしているが、従来の収益モデルが根本から覆されてしまうとの理由から断ったそうだ。この見解は他のネットワーク局も同じだろうから、iTunesが定額制のデジタル配信サービスを開始したとしても、最新のテレビ番組が大量に提供されることはないだろう。
僕のようなユーザーにとっては現状でも十分役に立つけれど、状況さえ許せば、革命的なデバイスとなるだけにちょっと残念だ。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi