コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第122回
2010年2月16日更新
第122回:大型レンタルビデオ店の縮小は時代の流れ?
今日、仕事場にしているベーカリー・カフェに到着したら、異変に気がついた。向かいのブロックバスターが、突如、閉店セールを始めていたのだ。ブロックバスターといえば、アメリカ最大のレンタルビデオチェーンで、かつてはぼくも熱心な利用者だった。この店の立地は悪くないし、いつも賑わっているように見えていたので、けっこう驚いた。調べたところによると、ブロックバスターは大がかりな規模縮小の最中で、全米4000店のうち、年末までに900店以上を閉店するのだという。そういえば、最近は車を運転していても看板を見かける機会が減っていた。
ブロックバスターの縮小は時代の流れと言える。97年にNetflixがDVDの宅配レンタル業を始めてから顧客を奪われ続けていたし、03年にはスーパーなどにレンタルDVDの自動販売機を設置するRedboxが登場した。ブロックバスターも、宅配レンタルなどのサービスを追加して対応していたが、映画のネット配信がアメリカで主流となりつつあるいま、最盛期の規模を維持できるはずもない。
ぼく自身も見たい映画やテレビがあれば、iTunesやhuluを利用するし、よっぽど気に入った作品はオンラインショップでブルーレイを購入する。ブロックバスターを最後に利用したのは、たぶん10年くらい前のことだ。
それでも、時代の変化をまざまざと見せつけられると、ちょっと動揺してしまう。去年、大型CDショップのヴァージン・メガストアがアメリカから完全撤退したときもそうだが、自分の生活の中心にあったショップが消えると、思い出までもが消されるような気がするからかもしれない。
まず、音楽のヴァージン・メガストア、次に映画のブロックバスターが潰れるという流れは、インターネット配信が開始した順序と呼応する。となると、次に犠牲となるのは書店だろう。以前もこのコーナーでもご紹介したように、アマゾンの電子書籍リーダー「キンドル」は書籍の流通革命を起こした。その後、大手書店チェーンのBarnes & Nobleがタッチスクリーン方式の電子書籍リーダー「nook」を発売、アップルも電子ブックに対応した「iPad」を発表するなど、アメリカでは電子書籍市場が加熱している。まだフォーマットが入り乱れ、どの端末にも改善の余地があるものの、電子書籍の価格やロイヤリティ率などの基準は定まりつつある。今後ますます大きな市場になっていくに違いない。
しかし、電子書籍が本格的に流行すると、書店や取次、印刷会社が大打撃を被るのは間違いない。お気に入りの本屋さんもいつか潰れてしまうことになるのだろうか? そんなことを気にかけながらも、nookを手放せない自分がいるのだが。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi