コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第120回
2009年12月15日更新
第120回:シーズン6でフィナーレを迎える「LOST」オアフ島取材記
いま「LOST」の取材でハワイのオアフ島にいる。ご存じの通り、「LOST」は来年放送のシーズン6でフィナーレを迎える。撮影は来年4月中旬に終了する予定で、いったんクランクアップを迎えてしまったら、キャストやスタッフはバラバラになってしまうので、彼らが一同に介する機会はおそらく2度とない。そこで、まだ撮影が行われているうちに、現場に乗り込むことになったのだ。どうして年末のこの時期に招待してもらえるようになったのかは知らないけれど、シーズン後半に記者を呼んでしまうと、大切な結末がバレてしまう危険性があるためではないかと推測する(ちなみに12月10日の現時点で、シーズン6全18話のうち第10話の撮影が行われている)。
個人的にもっとも感激したのは、ビーチ沿いに作られたキャンプ村のセットだった。オーシャニック815便の生存者たちの居住地となる通称「サバイバーズ・キャンプ」は、オアフ島ノースショアにある。広大な私有地のなかにあのままの状態で残されていて、いまも撮影で使用されている。撮影模様は見学できなかったけれど、ソーヤーのテントや、ダーマ・イニシアチブの缶詰が並ぶスタンドをこの目で確認できたのは嬉しかった。キャンプのすぐ隣には、ニッキーとパウロが埋められた墓場や、ミスター・エコーの教会が残っていた。
セットを巡りながら改めて実感したのは、「LOST」のプロダクション・デザインの凄さだ。ご存じの通り、「LOST」は主に不思議な島を舞台にしている。しかし、実際にはそのほとんどをオアフ島で撮影しているから、そのまま撮影してしまっては、ハワイそのものになってしまう。そこで、監督や美術監督は限られた予算のなかで、最大限の工夫を凝らしているのだ。たとえば、サバイバーズ・キャンプの前は、ドラマ上では白い砂浜が広がっている設定になっているが、実際には岩場である。2つのロケーションをミックスしているのだ。
出演者や製作陣のインタビューも順調に進んでいるが、こちらはさすがにまだ早すぎるので、シーズン6の日本放送が始まるころに発表させてもらいたいと思う。
と、ここまで原稿を書いて、はたと気がついた。こんな素敵な取材をする機会は、おそらく2度と来ないだろう、と。インタビューの場数はそれなりに踏んでいるつもりだし、セット見学も少なくない。それでも、大好きな作品と素敵なリゾート地が組み合わさったのは、今回が初めてなのだ。そして、最愛の「LOST」が終わってしまう以上、こうした機会が訪れる可能性はかなり低いと言わざるを得ない。もっと時間がゆっくり進んでくれればいいのに。閑散としたビーチテラスで自分勝手な願いを呟きながら、夕陽を眺めている。
※今撮影中の「LOST」シーズン6は、2010年初夏に海外ドラマ専門チャンネルAXNにて独占放送予定。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi