コラム:編集長コラム 映画って何だ? - 第81回

2025年9月24日更新

編集長コラム 映画って何だ?

レッド・ツェッペリンは、「ロード・オブ・ザ・リング」の大ファンだった件

このページを訪れた皆さんは、レッド・ツェッペリンも「ロード・オブ・ザ・リング(LOTR)」も両方大好きか、好きじゃないまでも両方ご存知の方が多いだろうと推測します。そして、「え、マジか?」って思ったんじゃないかと。

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2025年9月26日公開の「レッド・ツェッペリン ビカミング」というドキュメンタリーを見て、そのレビューを特集記事に寄稿したのですが、今回発見した、ツェッペリンとLOTRの関係があまりにも驚きだったので、改めてここに綴ってみることにします。

「ビカミング」を見て、レッド・ツェッペリンがロンドンで初めてライブを演ったライブハウスの名前が「ミドルアース(=中つ国)」であることが分かりました。ただしこの情報だけでは、まだ「ふふ〜ん」というレベル。だって「ミドルアース」と名付けたのはライブハウスの経営者なわけで、ツェッペリンの嗜好とは必ずしも関係ない。

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ところが映画が進行し、彼らのセカンドアルバム「レッド・ツェッペリン II」の「ランブル・オン」という曲が紹介されるシークエンスで、なんと「指輪物語」の原作本が画面に登場するんです。ロバート・プラントが歌う歌詞には「モルドールの奥深い闇の中、美しい娘に出会った。だが邪悪なゴクリ(=ゴラム)が忍びより、彼女を連れていった」という日本語字幕がついています。

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「モルドール」や「ゴラム」という単語が、ロックの楽曲の中で使われているのを耳にするのは初めてです。しかも、私がティーンエイジャーの頃に相当聞き込んだレッド・ツェッペリンの楽曲。2025年の今に到るまで、彼らの楽曲がLOTR風味をまとっていたなんてまったく気がつかなかったよ。

それもそのはず、1970年代にツェッペリンを聴いていた頃の私は「指輪物語」を読んでいなかった。2001年に映画「ロード・オブ・ザ・リング」が公開されてから全巻読破しましたが、今回改めてJ・R・R・トールキンって大昔からとっても偉大だったのねっていう事実を思い知らされたわけです。

もちろん、私はたまたま今回発見しただけの話で、ツェッペリンが現役だった時代から「指輪物語」の影響は知ってたよって方も大勢いらっしゃるかと思います。そんな方々にはリスペクトしかありません。

そしてふと思ったのは、ツェッペリンの代名詞的ナンバー「天国への階段」についてです。LOTRの映画には、モリアの坑道という洞窟の中にある長い階段が登場します。フロドと旅の仲間たちが、命からがら通って行く長い階段。もしかしたらあの階段が、「天国への階段」と関係あるんじゃないかと。

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ただの思いつきですが、これは、AIに聞いてみるしかないでしょう!

Q:「レッド・ツェッペリン」の「天国への階段」は、「指輪物語」に出てくるモリアの坑道にある階段のことですか?

得られた回答はこんな感じです。複数のAIの答をまとめます。

AI:「天国への階段(Stairway to Heaven)」は、「指輪物語」に出てくるモリアの坑道にある階段(たとえば「終わりなき階段」)を直接指しているわけではありません。(中略)ロバート・プラントジミー・ペイジは、歌詞のインスピレーションについて具体的な出典を明言していませんが、トールキンの作品に影響を受けた可能性は考えられます。

なるほどなるほど。当たらずとも遠からず的な感じです。なおも掘っていくと、

AI:「ジミー・ペイジは神秘主義やオカルト(アレイスター・クロウリー)にも興味があったため、歌詞に魔法や古代的モチーフが多く含まれるのは自然」

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AI:「ロバート・プラントは文学好きで、特に『指輪物語』の熱狂的ファンだったとされます」

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はい、ビンゴ来ました! ツェッペリンのボーカルで、作詞も担当するロバート・プラントが指輪ファンでした。そして、「ランブル・オン」の他にも、トールキン的な歌詞や世界観を表現した楽曲が出てきました。さらにAIとやりとり。

AI:「レッド・ツェッペリンの楽曲には、明示的・暗示的にトールキンの影響が色濃く現れています。特に以下の3曲は、確実にトールキンと関連があります」 1.「ランブル・オン」 Ramble On アルバム『Led Zeppelin II』収録(モルドール・ゴクリ登場) 2.「限りなき戦い」The Battle of Evermore アルバム『Led Zeppelin IV』収録(中つ国的戦争) 3.「ミスティ・マウンテン・ホップ」 Misty Mountain Hop アルバム『Led Zeppelin IV』収録(地名引用)

1の「ランブル・オン」 はすでに紹介しました。2の「限りなき戦い」における光と闇の戦いを描いた歌詞は、「指輪物語」の「ペレンノール野の戦い」や「ゴンドールの陥落」を彷彿とさせます。ロバート・プラント自身が「これはトールキン的世界を描いた」と語っているとのこと。そして、3の「ミスティ・マウンテン・ホップ」は「ホビットの冒険」に登場する「霧ふり山脈(Misty Mountains)」がタイトルに使われています。トールキン由来であることは明らか。

そうですよ! アルバム「Led Zeppelin IV」において、「天国への階段」の次の曲が、この「ミスティ・マウンテン・ホップ」なんです。

いやあ、面白すぎる。改めてLOTRを見直してみると、モリアの坑道の階段はとても長いのですが、暗くて閉鎖的なシークエンスの連続で、天国へと続く感じはありません。むしろ、その後のガラドリエルの居住地にある階段の方が、「天国への階段」の歌詞とシンクロするような気もします。

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特集にも書きましたが、今回の体験は、ツェッペリン → LOTR → ツェッペリン という50年越しのブーメラン。さらに、AI活用で裏が取れまくりという、「21世紀のレッド・ツェッペリン再発見」。

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こうなったら、「レッド・ツェッペリン ビカミング」の続編にも期待したいですね。「ビカミング」は、「天国への階段」より前のツェッペリン誕生秘話みたいな内容。次は、ツェッペリンがさらに大成功をつかむ「天国への階段」誕生秘話が是非とも見たい。そしてもちろんメンバーたちの「指輪物語」やトールキン愛の話ももっと聞いてみたい。

ということで、久々の続編待望案件となりました。この映画を見てからというもの、毎日レッド・ツェッペリンを聞いています。LOTRの痕跡を探すという、新たなミッションを伴って聞いています。

筆者紹介

駒井尚文のコラム

駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。

Twitter:@komainaofumi

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