コラム:編集長コラム 映画って何だ? - 第64回

2024年1月24日更新

編集長コラム 映画って何だ?

2024年、初の海外取材はラスベガスのCESでした

2024年1月8日、ゴールデングローブ賞の授賞式をオンラインで見届けたあと、ラスベガスへと飛び立ちました。毎年この時期に行われるテクノロジーのイベント「CES」に参加するのです。

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例年、最初の海外取材はテキサス州オースティンのSXSW(サウスバイ・サウスウェスト)が通例でした。テックと映画と音楽のフェスで、かなりカオスな感じでつかみ所のないイベントです。映画に関して言えば、最近、SXSWの映画祭はサンダンス映画祭と張り合うクオリティーにまで育っていて、「エブエブ」とか「AIR エア」なんかがワールドプレミアを行うなど、けっこう勢いがあります。

SXSWに参加している日本人は毎年およそ1000人規模ですが、映画関連の人はほぼ皆無。テック関係の人たちが多い印象です。そんな彼らが口々に「今年のCESがどうだったか」をテーマに会話しているのが気になっていました。両方参加している人によると、その年のトレンドがドーンと提示されるのが1月のCESで、3月のSXSWはそれのバリエーションがあれこれ示される流れみたいです。ちゃんとリンクしている。なので、いつかCESには行ってみようと思っていて、今年ついに実現に至ったと。

そもそもCES(日本人は「セス」と呼びます)とは、Consumer Electronics Showの略で、電子機器や家電をお披露目するイベントでした。最近は、主催団体が変わってかなりテックに寄っています。映画作品を上映する映画祭などは併設されていませんが、映像関連の重要な発表が過去に何度も行われています。DVDやハードディスクレコーダー、ブルーレイなどの新技術がいち早く公開されるなど、映画関連の人間としてもかなり気になるイベントなのです。

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今回、私はCESに参加するのも、ラスベガスを訪れるのも初めてでした。最先端の映像技術を体験するとともに、日本では遭遇できない新たなテクノロジーに出合う、というのがざっくりの目的でしたが、会場を訪れてみて、とにかくそのイベント規模には圧倒されました。SXSWは何度も行っていますが、そのレベルを遙かに凌駕するスケール。そして、ラスベガスの街も無駄にデカい。私が泊まったホテルは、ピラミッドの形をしていて、傍らにはスフィンクスが鎮座していましたよ。

午前中、ホテルからコンベンションセンターに移動すると、至近距離に「sphere」が見えます。球体の巨大シアターです。これについては次回レポートします。

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コンベンションセンターにやって来ました。家電、オーディオなど、いわゆる電機メーカーが集まっているセントラルホールに突入します。パナソニックやソニーなどの日本メーカーも多数出展しています。

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パナソニックをちょっと覗いてみましょう。

新製品のデモとかは特になく、もっぱらSDGs系の展示に終始していたようでした。日本メーカーはこの傾向(SDGs推し)が多かったように思います。ブースは地味なんだけど、環境コンシャスなメッセージを感じ取ってねって感じ。

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特に目的を決めず、会場をブラブラしていると、行列が出来ているブースが2つありました。

まずはサムスン。時間にそれほど余裕がなかったので行列はスキップしましたが「透明なディスプレイ」のデモなどが行われていたようです。

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透過型の、後が透けて見えるディスプレイはLGのブースでも展開しており、韓国勢がリードしていますね。これについては、同行していた小西未来さんが別の形でレポートしてくれるかも知れません。

さて、次なる大行列はこちら。

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Netflixです。

家電メーカーが多いセントラルホールにあって、ストリーミング系のNetflixはちょっと場違いな感じもします。何でここにいるの?

この箱の中で何が行われているのかスタッフに聞いてみたら、なんと「三体」のバーチャル体験型VRのデモということでした。おお~、それは体験してみたい。

しかししばらく並んでみたものの、全然行列が短くならないのでこれまた断念。公式のYouTube動画があったので貼っておきます。


「三体(The Three Body Problem)」は3月21日からNetflixで配信されます。これは楽しみです。あくまで個人的な推測ですが、このアトラクションは3月のSXSWでも出品される可能性がありますね。

小一時間ほどあちこち見て回り、最後はソニーのブースへ。ホンダと共同開発しているEV(電気自動車)、アフィーラが展示されています。

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そして、もっとも面積を多く使っていたのは、映画撮影のセットで、背景をバーチャルに投影するソリューション「バーチャルプロダクション」をデモするもの。これは、すでにハリウッドの色んな映画に使われているソリューションです。

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オープンカーの実車が置いてあり、その手前にドリー撮影用のレールが敷設されています。で、自動車の向こう側、背景にあたる部分にはLEDスクリーン。ここに、色んな風景を投射していくと映画撮影を効率良くできるのよっていうデモでした。傘下に映画スタジオ(ソニーピクチャーズ)があるだけに、実用的かつ楽しそうなブースになってました。

これ、テクノロジードリブンなんだけど、VRでもAIでもない、何だかホッとする展示でした。

ところで、2024年のCESのテーマは「AI」であるのは間違いありません。主催者も「AI for All(オール)」ってスローガンをあちこちに掲げています。しかし、色んなプロダクトを見て回っても、今ひとつAIがピンと来ません。そこには「凄いAI」などなかったのか、あるいは、単に私が気づけなかっただけなのか。

いずれにせよ、AIって人々に見せるのが難しいテクノロジーなんだろうなって思いながら、セントラルホールを後にします。

CESの会場と会場を結ぶ交通機関として、「INFINITE LOOP」が大人気です。イーロン・マスクの会社が掘ったトンネルの中を、テスラのEVに乗って無料で移動できる交通インフラです。

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しかしこのテスラにしても、AIによる自動運転とかでは全然なくて、運転席に座ったドライバーが普通に運転しているだけです。何だかなあ。

さて、気を取り直して「sphere」を体験しに行きましょう。これまた、今回ラスベガスにやって来た大きな目的のひとつです(次回へ続く)。

筆者紹介

駒井尚文のコラム

駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。

Twitter:@komainaofumi

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