コラム:編集長コラム 映画って何だ? - 第34回
2020年8月28日更新
久々の映画館、IMAX版「テネット」の大迫力にシビれる。新兵器もデビュー
今週の水曜日(2020年8月26日)は、池袋のグランドシネマサンシャインで、クリストファー・ノーラン監督の新作「TENET テネット」のIMAX試写会を鑑賞しました。
個人的に、コロナ禍において初の映画館における映画鑑賞です。試写会場スクリーンの定員は総座席数の半分に制限され、定員分の人数しか入場できない完全予約制。上映中は、もちろんマスク着用がマストというスタイルで行われます。
上映前、ロビーや場内で誰か知り合いがいないか見渡してみますが、皆マスクをしているので、しっかり顔が認識できない。顔だけじゃなくて、仕草や服装も含めて記憶している相手のみが特定できるという状況は、なかなか不便だなと感じます。
しかし、場内で上映を待っている人々はおしなべて平和そうで、あちこちでご無沙汰の挨拶や雑談などが行われています。観客が平時の半分しかいないこと、皆がマスクを着けていることを除けば、新作の披露試写会のいつもの雰囲気です。
さて「TENET テネット」です。アメリカでの公開が、再三延期された結果9月2日に決定。ヨーロッパではそれより早い8月26日と、本作の公開が「ハリウッドの新型コロナ禍からの帰還」を世界中に告げる役割を担っています。超大作です。お金かかってます。始まってすぐに、これぞまさに映画ファンが映画鑑賞を再開するのに相応しい一本だと分かります。
冒頭のコンサートホールでのオーケストラのシーンから、テロリスト突入のシーンに続く一連のオープニングシークエンスで、「ああ、映画館に戻ってきたな。やっぱ映画館いいなあ」という感慨がこみ上げます。
しかもこの日は、日本一のIMAXスクリーンです。迫力の超巨大画面に、地鳴りのように場内を震わす音響を伴って繰り広げられるのは、希代の変態監督クリストファー・ノーランによる、想像を絶する映像世界。まるで、倍速のスクランブル交差点に放り込まれ、そこに一瞬にして大型トラックや戦車やヘリコプターが突入してくるかのような、せわしなくも重厚なストーリー展開。
上映開始からしばらくの間は、右脳も左脳もフル稼働でついていきましたが、1時間経過したあたりで脳がギブアップ。解釈を放棄して、映像と音響を浴びるように楽しむ方針に切り替えました。理解できなくても十分楽しめる。全然毛色は違いますが、デビッド・リンチの映画と同じです。
2時間半を終えた私の見立てでは、「オスカー2個は確実。視覚効果賞と編集賞。上手くいけば撮影賞と監督賞まであるかも」です。作品賞については、まだ保留。もちろん、ライバルはこれから登場しますが、昨年の「1917」や「フォードvsフェラーリ」よりは確実に上のレベルでしょう。
さて、この日、個人的にもっとも億劫だったのはマスクの着用です。マスクしたまま映画2時間半見続けるのは厳しいだろうと思って持参したのは、こんな新兵器。
インナーマスクです。マスクの内側に装着すると、マスクが鼻や口にへばりつかないのでかなり快適です。映画鑑賞にはもちろん、長時間マスクを外せないシチュエーションにおすすめです。Amazonにたくさん種類があるので、お気に入りを見つけてみてください。
マスク着けっぱなしもそうですが、ドリンク飲む時はそのマスクを一瞬外す(orずらす)とか、終映後は座席ブロックごとに退場するとか、映画館での映画鑑賞は、今けっこう面倒であることは確か。まあでも、映画鑑賞のニューノーマル、慣れていくしかないですね。
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi