コラム:映画食べ歩き日記 - 第4回
2020年3月5日更新
すっかりショートフィルムの虜になり、2日後に行われたオールナイト上映会にも参加。会場となった“泊まれるシアター”「Theater Zzz」は、男女混合ドミトリータイプの体験型宿泊スタイルのホステルとして営業しています。スクリーンの前には芝生が敷きつめられ、座椅子や寝袋とともにリラックスした状態で映画を楽しむことができる、おしゃれな空間。天井からはドライフラワーが下がり、テントが張られ、野外での夜間映画祭のような趣も感じられます。入口でドリンクやスナックをチョイスし、6時間半(午後10時~午前4時30分)にわたるショートフィルムの世界を全力で楽しむため、幸運にも空いていたテントの中におさまることができました。好ポジションをゲットし、飲んだり食べたりリラックスしながら、あとは上映を待つばかり。最高の週末の始まりです!
ショートフィルム計23本というボリューム、そしてBSSTOの編成会議で配信が見送られたというエッジのきいたディープな内容もあいまって、先日のペアリングイベントよりも濃密な時間になりました。初対面の観客の間にも、非現実的な一晩をともにすることで、不思議な絆が育まれたように感じられます。上映作品は「きわどくてNG 愛のプログラム」「ハードコア過ぎてNG アートフィルムプログラム」「不思議ちゃん過ぎてNG ファンタジープログラム」「そのうち機会があればで 実は良作プログラム」という4つのユニークなカテゴリーに分けられていました。カテゴリーの合間には、コンセプトや内容を解説するトークの時間も設けられており、めまぐるしく始まり終わっていく各作品を、じっくりと振り返ることができる工夫も。フランス、スペイン、スウェーデン、オーストラリア、インドネシアなど世界各国から、実写やアニメーションなど多彩な形態の作品が集結。ショートフィルムと一口に言っても、5分程度のものから30分におよぶものまで、上映時間も様々です。
折り返しに設けられた長い休憩時間では、「久芳焙煎所」がブレンドしたオリジナルコーヒー「ShortShorts Blend」とフルーツサンドのおやつタイムでリフレッシュ。休憩中に会場を探索していたところ、スクリーンのそばに気になるものを発見! 何とハーゲンダッツのミニ冷蔵庫で、中をのぞくとクリスピーサンド(ザ・キャラメル味&期間限定のイチゴのトリュフ味)がギッシリ詰まっています。こんなにたくさんのハーゲンダッツが入った夢のような冷蔵庫、見たことない……。感動にうち震えていると、キャンペーン期間中だったようで、アンケートに答えればおかわり自由とのこと。ハーゲンダッツは大いに好評で、来場者はアイスで頭をすっきりさせながら、めくるめくショートフィルムの世界に身を投じていました。
印象的だった作品は、「ファンタジープログラム」で上映された30分のスイス映画「彼女とTGV」。ヨーロッパを代表するベテラン女優ジェーン・バーキンが主演を務め、第89回アカデミー賞の短編実写映画賞にノミネートされています。孤独な女性と鉄道運転手との間に起こる物語を描いた、切なくもあたたかい物語。また、「アートフィルムプログラム」のスウェーデン映画「THE BURDEN(英題)」は、ネズミや犬がスーパーマーケット、ホテル、コールセンター、ハンバーガーショップなど様々な場所で歌い踊る、シュールな雰囲気のミュージカル。「愛のプログラム」のフランス映画「DAD IN MUM」は、情事の音が漏れる両親の部屋の前に立ち尽くす幼い姉妹を描いています。セックスをのぞく姉妹の会話がユーモラスに展開しますが、やがて思いもかけない結末へと向かっていきます。
映画館に足を運んだり、動画配信サイトで映画を見たり……、仕事で疲れて家に帰ってくると、「映画のある生活」を夢見ながらも、なかなか時間をとることができない人も多いのではないでしょうか。しかし、上映時間が短いショートフィルムなら、構えることなく、気軽に映画を楽しむことができます。現実から少しの間抜け出し、様々な世界や感情をのぞき見ることができる、非現実世界への入り口。ショートフィルムはまさに、映画とともにある生活を実現させる身近なコンテンツなのです。さらに、イベントを通して気付いたのは、(当たり前ですが)長編映画以上のスピード感で物語が展開すること。様々な暗示や伏線に満ちたストーリーも多く、一度見ただけでは理解できないものも。しかし、ストーリーが短いことで解釈の幅も広くなり、そして何より何度でも見返すことができるんです。 ショートフィルム最高!
池尻ショートフィルムで上映された「バレンタイン」は5月6日まで、「リアル恋人体験」は同月27日まで、また「ハグ」は3月6日~6月5日まで、BSSTO(https://sst-online.jp/)の無料会員登録をすると視聴できます。また、オリジナルカクテル「バレンタイン」と「ハグ」は、3月20日までの期間限定で、代々木上原のバー「No.」で提供されています。
コラム