コラム:若林ゆり 舞台.com - 第90回
2020年9月9日更新
「ビリー・エリオット」は、ものすごく丁寧に作られた作品だ。約1年をかけたビリー役のオーディションを行い、数ヵ月にわたる厳しいレッスンが実施された。今回も同様にオリジナル作品のクオリティを守るため、ロンドンのクリエイティブ・スタッフを招いて約1年にわたるオーディションを行い、昨年12月に1500人以上の中から4人のビリーが決定。コロナ禍の影響を受けながらも、全力で向上しようとレッスン中のビリーたちに会いに行きたいのは山々だったが、今回はアンケートという形で熱い思いを言葉にしてもらった。
まずは、4人のビリーたちを紹介しよう。
川口調(かわぐち・しらべ)は子役としてNHK連続テレビ小説「まんぷく」など数々の作品に出演し、2歳から習っているバトントワーリングでは全日本大会の優勝経験も。
利田太一(としだ・たいち)は3歳からバレエを習い、初演のオーディションにも参加したが惜しくも落選。今回、再挑戦で見事にリベンジを果たしている。
中村海琉(なかむら・かいる)は幼い頃から声楽を習い、ボーイソプラノユニット“ソプラノ♪7ボーイズ”のメンバーとして活躍。タップダンスのレッスンも積んできた。
渡部出日寿(わたなべ・でにす)はロシア人の父、日本人の母ともに世界トップクラスのバレエダンサー。自身も幼少期からバレエを習い、数多くのコンクールで入賞・優勝を果たした高スキルの持ち主だ。
この4人が、ビリーにいちばん共感したのはどんなところだったのだろう?
川口「踊りたい! という気持ちです。僕はバトントワーリングをやっていて、踊ることが大好きなので。ビリーも僕も、地方からオーディションを受けに行ったところが同じですし、オーディションに行くときの不安な気持ちや合格した後もみんなについていかなきゃと思う気持ちがきっと同じなんだろうなと思いながらやっています」
利田「バレエにだんだんはまっていくところです。僕もバレエが大好きなので」
中村「共感できるところは、感情を爆発させてしまう部分です。ビリーは『アングリーダンス』のシーンで、自分の思いを全て出して感情を爆発させるんですが、自分も感情を爆発させてしまうことがあるので、似ていると思います」
渡部「『エレクトリシティ』という曲の『電気』という歌詞です! 僕は踊る時にスイッチが入るような感じがするので、ビリーの電気という表現が共感できるなと思いました。嫌なことがあった時に引きずっちゃうところは僕と似ているな、と思います」
他のビリーたちとは違う、自分ならではの個性はどんなところだと思う?
川口「演技やダンスを通して自分を表現しようとするところだと思います」
利田「笑顔と、手足が長いことです」
中村「歌とタップダンスに感情を込められるようにしたいと思うので、そこを見てほしいです」
渡部「いろんな表情が出るところです」
では、他のビリーたち、それぞれの魅力をこっそり教えて!
川口「タイチ君は踊っている時にすごく楽しそうなのがわかります。カイル君は見ている人に感情が伝わるところです。デニス君はバレエのお手本のように踊れるところです」
利田「シラベ:演技で伝えたいことがはっきりわかっておもしろい!
カイル:ダンスがはじけていて、見ていておもしろい! デニス:回転力が素晴らしい。最後に回転が決まった時は気持ちいい!」
中村「調くん:面倒見がよいところです。太一くん:信じられないぐらいの身体の柔らかさと、僕の苦手なバレエの時間になるとたくさん教えてくれるやさしいところです。出日寿くん:バレエがうまいのはもちろん、普段はおとなしいのに、ダンスとか歌になると切り替えがすごいところです」
渡部「調くんの魅力はいつでも人の心をひきつけられるところです。太一くんは柔軟性。海琉くんはダンスの力強さです」
では、あなたにとって「ビリー・エリオット」とは?
川口「僕の人生を変えてくれたものです。諦めずに最後までやり遂げる力や1つのことに集中して取り組む大切さを教えてもらいました。さまざまなダンスを習えたことで将来の夢が広がりました。『このミュージカルは、人生を変える』というのは僕にとって本当にその通りだと思っています」
利田「このミュージカルは人生を変えた――最高の舞台です。お客様に『見に来てよかったな』『また見たいな』と感じてほしいです」
中村「大きな壁にぶつかってもそれを乗り越える強さを持つことがどれだけ大切かを教えてくれた作品だと思います。新型コロナの影響で、舞台が中止になったりして暗いニュースばかりですが、見に来てくれた人が明るくなってくれるように、来てよかったと思ってもらえるようにすべてを出し切りたいです」
渡部「とても素晴らしい、大好きな作品です。見たことがある方にはいままでのビリーの中でいちばんよかったと思われたいです。見たことがない方にはビリーの気持ちや状況をわかってもらいたいです」
Daiwa House presentsミュージカル「ビリー・エリオット リトル・ダンサー」は、9月11日~10月17日に東京・赤坂ACTシアター、10月30日~11月14日に大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演される。詳しい情報は、公式サイト(https://www.billyjapan.com)へ。
筆者紹介
若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。
Twitter:@qtyuriwaka