「ジャージー・ボーイズ」で天使の歌声を聴かせる中川晃教の表現力が深い! : 若林ゆり 舞台.com (2)

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コラム:若林ゆり 舞台.com - 第71回

2018年9月26日更新

第71回:「ジャージー・ボーイズ」で天使の歌声を聴かせる中川晃教の表現力が深い!

中川が今回の再演で初めて発見したことは、まだまだある。

「たとえば、秋から冬にさしかかるところ。秋の語り部であるニックが『グループから抜ける』と言って去っていって、フランキーが『Let’s Hang On』を歌い終わってから冬に入るんです。『なんでこの歌までが秋なんだろう?』というのが僕の中で引っかかっていた。『どこまでも果てない あの本当の愛 まだ遠い』という歌詞から始まる歌で、去りゆくニックへの心情をかけて歌うこともできるけど、それにしてはざっくりしているな、と思って。フランキーは冬の傍白者なんですが、語り部としての言葉は時系列で今、その瞬間の言葉として語ることもできる。でも、ニックは2000年のクリスマスイブに死んでしまったことが、最後にフランキーによって語られます。だからフランキーの傍白は、ニックが死んだことを知った上で語っている、という風にもできるわけです。その当時の自分とは別に、俯瞰で自分たちの物語を見ているフランキーとして『どこまでも果てない~』と歌い出したとき、湧きあがってきたのが『もう彼はいないんだ』という思いでした。それをわかった上で歌えば歌うほど、もし彼が生きていてくれたら、埋まらなかった自分の後悔もすれ違いも、なんとかできたかもしれないと思えて。そんな風に、いまはいないニックへの思いを感じることで『ああ、ここまでが秋なんだ』と腑に落ちたんです」

撮影:若林ゆり 撮影:若林ゆり

中川がここまで深く作品を読み解いているのは、彼がこの作品をほかのメンバーの2倍、生きていることも大きいのだと思う。ザ・フォー・シーズンズのメンバーはチームWHITE、チームBLUEというWキャストによって演じられているのだが、フランキー役の中川だけがシングルキャストとして両方のチームに出演しているのだ。そんな中川から見て、それぞれのチームが持つ魅力は?

「チームWHITEのガウチ(中河内雅貴)くんと福井(晶一)さん、海宝(直人)くんは、初演を立ち上げている仲間なんですよ。これはもうどうしようもない、BLUEとの違いなんです。台本と譜面しかないところから作品と向き合い、何回も何回もブレないようにやってきている僕たちだからこそ自由度も違うし、確実に必要な球を打って返すようにリアルな会話をする。そういうところでのWHITEの安心感、安定感は抜群だと思います。BLUEは、矢崎広くんが続投で伊礼彼方くんとspiくんが新たなメンバーなんですが、新参の2人はとても繊細なものを持っていて、それでいて大胆。その繊細さと大胆さが、大きい波と小さい波のように交互に押し寄せてくるんです。その波にうまく乗るのが面白い。フランキーはまずトミーが作り出す波に乗っかり、次にボビーが作り出す波に、そしてニックが作り出す波に乗っかっていく。実はこれ、中河内くんが教えてくれたんですけど、『フランキーってサーファーだよね』って(笑)。とにかく俳優たちも、作品を通して成長している。そしてそれは、成長し続けているということなんです、この物語が終わらないように。歌い続けていくように。両チームどちらのよさも堪能していただけたら」

チームBLUE 左より、矢崎広、中川晃教、伊礼彼方、spi チームBLUE 左より、矢崎広、中川晃教、伊礼彼方、spi 撮影:若林ゆり

映画ファンでイーストウッドの映画版は好きだったけれど、舞台のミュージカルは見たことがないという人も、この作品は絶対に見て後悔しないはず。登場人物がいきなり歌うということがないし、ライブシーンのエキサイトメントは格別だし、心を打つ物語も、映画とは違った視点で楽しめるからだ。

「このミュージカルには、映画版と決定的な違いがあるんです。娘が死んだ後に『Can't Take My Eyes Off You』を発表しているのが、映画。舞台では、この曲が生まれてヒットした後に、娘が死んでいます。そこは、舞台ならではの表現、映画ならではの視点からなんですね。映画ではフランキー・ヴァリというところに、より物語を集約させようとしているイーストウッドの試みがあって、それもよくわかる。舞台の場合は4人がそれぞれに物語を語っていくところに、最後にお客さんが『観に来てよかった』と思える感動がある。そこを作るために、敢えてその曲以降に娘の死を持ってきているんですよ。失っていくもの、失ったもの、得たもの、変わらないもの。その変わらないものが、この4人なんです。そして4人を支えてきた民衆や観客すべてに対して『変わらぬ愛をありがとう』というところに還元されていく。それが舞台であり演出であり、作品なんですね。映画と舞台で同じ作品なのに、どうしてこんなに味わいが違うのか? それは受け止める人によって変わるものだと思うんです。映画も見て、舞台を見ることでどちらもより楽しめる。相乗効果が生まれますので、ぜひ、両方を楽しんでほしいです!」

ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」は10月3日まで、シアター・クリエにて上演中。以後、秋田、岩手、愛知、大阪、福岡、神奈川公演あり。詳しい情報は公式サイトへ。

 https://www.tohostage.com/jersey/

[筆者紹介]

若林ゆり

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

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