コラム:若林ゆり 舞台.com - 第7回
2014年5月20日更新
第7回:「天使にラブ・ソングを…」のミュージカル版で、エモーショナルな森公美子が憧れのウーピーを超える!
「天使にラブ・ソングを…」はミュージカル映画だろうか?
疑いもなくそう思っている人もいるだろう。確かに、“音楽映画”という意味では非常にミュージカル。歌はたくさん歌われる。しかし厳密にいえば、「せりふ代わりに登場人物の心情を表す歌とダンスが随所に盛り込まれ、ストーリーを動かしていく」という定義にはあてはまらない。
それなら、これほどミュージカル化にふさわしい作品はないのではないか。映画のミュージカル化が花盛りなショウビズ界でこの金脈が見逃されるわけはなく、2009年にロンドンで、2011年にブロードウェイで開幕、大ヒットを飛ばした。その作品「シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~」がいよいよ日本でも上演される。映画でウーピー・ゴールドバーグが快演したデロリス役の森公美子(瀬奈じゅんとダブルキャスト)を直撃すると、とたんにアツアツの「ウーピー愛」が炸裂!
「私、映画がすっごく好きなんです。よく見ているし、ときどき映画評も書くほど好きなんですよ。なかでもウーピー・ゴールドバーグは大好きな女優さんなんです! 最初に「カラー・パープル」を見たとき、なんってうまい演技をする人なんだろうと思って。あの微妙な感情をせりふもないところで、あの目ね、目の動きだけで見事に伝えていて。あのときが映画はほぼ初めて? すごくうまいなぁと。これは(映画史に)残るなって確信しましたね。それ以来ファンで、だからもう「天使にラブ・ソングを…」は何度見たことか。まさか自分がやることになるとは思っていませんでしたけど、好きだから自分のコンサートでやったりしていたんです。だから、思えば叶うんだと思います。よっぽど思ってれば。だって最初は、あのソプラノの太った修道女のほうだと思ったんですから。そっちもいい役だし、そっちでいいよって(笑)。あの太った人ともうひとり、若くておとなしい子が成長していく姿が感動的だから、そっちもすごくいい役なんですよね。そっちもやりたい(笑)」
出演が決まってから、ブロードウェイ版を慌てて見に行った。これ、実はウーピー自身がプロデュースをしているのだ。
「もう、もう、大興奮しちゃった! 映画が好きだっていう人も、絶対に満足できると思う。舞台がリノからフィラデルフィアになってたりとか設定は違っているところもあるし曲も違うんですけど、あの楽しさ、面白さ、興奮、感情的なものはそのまま味わえますから。いや映画以上に! それが劇場中に感染してね、もう『オーッ! イエーッ!』って、うれしくなっちゃうの。そこで客席と舞台で感情的なキャッチボールが生まれる。私が見たときもみんながスタンディングでね、踊っちゃって、大盛り上がり! これは映画では体験できないものですから。演じる人間と見ている人間の間に起こる、舞台と客席の空間がひと続きになっている劇場空間ならではのものですからね。あの雰囲気やユーモアは、さすがウーピーがプロデュースしているだけのことはあると思う。ウーピー、日本にも見に来てくれないかなぁ(笑)」
コラム
筆者紹介
若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。
Twitter:@qtyuriwaka