コラム:若林ゆり 舞台.com - 第67回

2018年5月10日更新

若林ゆり 舞台.com

第67回:不器用な「アメリ」に共感しまくりの渡辺麻友が、初ミュージカルで殻を破る!

パリのモンマルトルを舞台に、一風変わった女の子、アメリのささやかな冒険とロマンスを描いた「アメリ」。ジャン=ピエール・ジュネ監督の醸し出すファンタジックでお洒落な雰囲気と、オドレイ・トトゥのコケティッシュな魅力がマッチ、2001年の大ヒットとなったユニークな一作だ。いまも高い人気を誇るこの映画が、2017年にブロードウェイでミュージカル化。そしてまもなく、日本版の幕が上がる。アメリ役を演じるのは、アイドルグループAKB48のメンバーとしてグループ屈指の人気を集め、2017年末に卒業した渡辺麻友。初ミュージカルに挑戦中の渡辺に、話を聞いた。

まずは、この映画「アメリ」についての感想から聞かせていただこう。

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「独特ですごく素敵な世界観に、一瞬で引き込まれました。オドレイ・トトゥさんの演じたアメリがすごく愛すべき女の子で。不器用ではあるんだけどお茶目な一面も持っていて、見た人は絶対、好きになっちゃいますよね。オドレイさんの表現力でこの役が存分に表現されている上にぴったりで、あの表情や仕草のすべてが、アメリそのもの。あんな風に演じられるなんて、ただただすごいと思います。今回、この役を演じるにあたって見直しても、勉強になることばかり。私も今回、少しでもああいう魅力が出せたらいいな、と思っているんです。まだまだレベルが違いすぎるんですけれど」

ヒロインのアメリは愛情表現の下手すぎる両親に育てられたことで、コミュニケーション能力に問題を抱えた女の子。その分、豊かな空想力を持っているという個性的なキャラクターだ。渡辺はこのアメリに「ものすごく共感を覚える」と言う。

「私も、小さいころから人とあまりコミュニケーションをとらずに成長して、大人になったいまでも周りとうまくなじめない人間です。だからアメリには、たくさん共感できています(笑)。私もコミュニケーション能力がなくて。だからアメリの、人が集まっているところに居づらくなっちゃう感覚や、自分1人の世界に浸っちゃう感じもよくわかるんです。私自身も1人の世界が好きで、人の輪から離れてしまいがちだし、何にでも不器用なタイプ。現実逃避で空想するのも好きです」

アメリは豆に手を突っ込む、クリームブリュレのお焦げを叩く、サンマルタン運河で水切りをする、など、小さな自分だけの幸せを見つけているけれど、渡辺にとっては……?

「晴れ渡っていて紫外線も降り注いでいるようなとき、自分が歩いている道に日陰がいっぱいあると、ちょっとハッピーな気分になりますね(笑)」

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では、このミュージカル版「アメリ」の魅力についてはどう思う?

「最初に台本を読んだとき、映画の世界とほとんど同じ印象をもちました。ちょっと時系列が違ったりはしているんですけど、基本的なストーリーや世界観は変わらないので、映画を好きな方にも絶対、楽しんでいただけると思います。パリという街については、舞台装置とかいろいろなものを駆使して表現します。お稽古初日にセットの模型を見せていただいたんですけど、出演者のみなさんからも『おぉ~!』という歓声と拍手が起こりました。私も最初は『あの世界観をどうやって表現するのかな?』と思っていたんですけど、『こういう表現のし方かぁ、なるほど!』と。それから、共演者のみなさんがいろいろな役を演じられるのですが、そのみなさんがパリを感じさせてくれることになると思うんです。それぞれが適材適所というか、それぞれ存分にお力を発揮されていて、そこも、この作品の大きな魅力です」

AKB48のメンバーとしては、舞台で歌や踊りを披露してきた。しかし、ミュージカルとなれば「全然違う!」のだとか。

「AKB48のメンバーとして11年間在籍させていただきましたが、その経験をまるで生かせないくらい、もうまったく違います。とくに歌は、歌唱法も違ってきますし。とてもまだ気持ちよく歌える状況にはほど遠いです。音域も低いところから、めちゃくちゃ高いところもあって。ブロードウェイで『ハミルトン』の奥さん役をされた、フィリッパ・スーさんというすごいシンガーさんのために書かれた曲なので、難易度がものすごく高いんです」

筆者紹介

若林ゆりのコラム

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

Twitter:@qtyuriwaka

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