コラム:若林ゆり 舞台.com - 第6回
2014年5月2日更新
第6回:燃え上がる究極のダンスショー、「バーン・ザ・フロア」の人気ダンサーは熱かった!
ジャックは08年に「アメリカン・ダンスアイドル」のオーストラリア編第1シーズンで見事、優勝。これを見た「バーン・ザ・フロア」の芸術監督・振付のジェイソン・ギルキソンに認められ、このカンパニーに迎えられた。「僕には姉が2人いるんだけど、3歳のとき、ダンスを習っていた姉たちの振付を真似て踊り始めたんだ。母に『ダンスをやりたいの?』って聞かれてイエスって答えてから、ずーっと踊ってる。歌や演技も学んでいるけどね」
一方のジャネットは、本格的にダンスを習い始めたのは19歳のときというスロースターター。「glee/グリー」の第1・第2シーズンにライバルチームのダンサーとして出演したり「アメリカン・ダンスアイドル」でもおなじみの彼女は、実は映画が1本できるくらいのドラマティックな人生を歩んできた。「両親はキューバの出身で、家族のなかでは私が初めてのアメリカ人なの。サルサ、ルンバ、チャチャチャといったラテンの音楽を身体の一部として育ち、12歳のとき初めてミュージカルの舞台に立つという経験をしたわ。でも高校を出てからは毎日9時から5時まで銀行で働きながら、夜は学校に行って会計士になるための勉強をしていた。そこで自分の人生を考えたとき、どうしてもダンスが頭から離れなかったの。その道に進みたいって言ったら、周りはみんな『バッカじゃないの?』って感じでまともに聞いてくれなかったわ。そういう意味ではつらい時期もあったし、ずいぶん努力する必要もあったけれど、結果としていま、自分がここにいることは誇りに思うわ。最高の選択をしたと思えるし、出会いに恵まれて、そうできたことに感謝している」
「バーン・ザ・フロア」に話を戻そう。このショーはとにかく、燃える。観客たちの熱狂ぶりも作品のうちなのだ。「日本の観客はおとなしい」とよく言われるが、「ええっ!? 冗談だろ! それは嘘だと思うね(笑)」とジャックは断言。「おとなしくない観客が僕たちは大好きなんだけど、日本の観客からはアドレナリンが吹き出るようなリアクションをもらった。パッションもエンジョイも、高く評価してくれているなということもビシビシ伝わってくるから、日本の観客がいちばん好きなくらいさ。いろんな国に行っているけど、僕らの意見として一致してるのは、日本人がいちばん騒がしいってこと(笑)。ワクワクしながら前のめりで見てくれているのがわかって、やる気を起こさせてもらえるんだよ」
それはこのショーのダンサーたちが、シャイな日本人の殻を破ったからに違いない。
「ダンサーをやることで私が目指しているのは、人の心に触れて、解放するということ。だからそんなふうに言ってもらえるとほんとうにうれしいわ!」(ジャネット)
では、あなたにとって「バーン・ザ・フロア」とは?
「僕ももともと、ジャズ、コンテンポラリー、タップ、バレエといったダンスを専門にやってきたけど、ラテンやボールルームはレッスンを受けたことがなくて。誘われたとき、いままでやったことのないことへの挑戦だと思った。新しいことへのチャレンジ、そこから刺激を受けるということが好きだし、それこそが自分のやっていきたいことなんだ。この「バーン・ザ・フロア」は、つねにクリエイティブにチャレンジを続けているショー。そのなかに自分がいるってことに大きな喜びを感じているよ」(ジャック)
「私はダンスを始めたのが遅かったからとくに思うんだけれど、ラテンやボールルームはもう少し年をとってからでもできる。バレエだとかコンテンポラリー、ジャズという分野では、そうはいかないわ。だから私にとってはそうしたジャンルをいま踊れるということが、すごく意味のあることなの。それにボールルームが基盤にあるからパートナーがいて、曲のもっているイメージや感情を分かち合えるというところにも素晴らしさがある。できる限り長くこのカンパニーで踊りたいわ。ダンスにしても音楽や振付にしても、ブロードウェイ以上のショーだと思っているの。何より、楽しい! 見たら踊りたくなるのは間違いないわよ!」(ジャネット)
「バーン・ザ・フロア」は5月2日~7日、東急シアターオーブで上演。5月9日~13日に大阪・フェスティバルホールで、5月16~18日には名古屋・国際会議場センチュリーホールでの公演あり。詳しい情報は公式HP
http://www.ktv.jp/btf/index.html
筆者紹介
若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。
Twitter:@qtyuriwaka