コラム:若林ゆり 舞台.com - 第41回
2016年3月3日更新
第41回:大人計画のぽちゃカワ俳優、皆川猿時が「あぶない刑事」におもしろオマージュ!
いま、皆川猿時が熱い。いや、いまに始まったことではないし、暑苦しさも多少あるが、熱い。大人計画になくてはならない存在であり、テレビやドラマにも引っ張りだこの彼は、あるときは宮藤官九郎や阿部サダヲらとのパンクコントバンド「グループ魂」のMC・港カヲルとして。あるときは「あまちゃん」の“いっそん”こと磯野先生として。映画「バクマン。」の万年下積み漫画家・中井巧朗や、「TOO YOUNG TO DIE 若くして死ぬ」でのロックな女子高生・じゅんことして。ハイテンションな東北訛りで、ちょっと下品なキャラを得意とし、愛すべき個性でセンセーションを巻き起こしているぽちゃカワ系イケメン。その濃さ、愛くるしさはクセになるのだ。
その皆川が、大人計画の後輩である荒川良々とバディになる。その舞台が「あぶない刑事にヨロシク」である。といっても当然、あの舘ひろし&柴田恭兵の「あぶない刑事」をやるわけではない。あの「あぶない刑事」に憧れている、そんなにあぶなくない刑事コンビがひたすらあぶない目に遭うというコメディ、らしい。作・演出は傑作なコントシリーズ「男子はだまってなさいよ!」を主宰したり、映画「ぱいかじ南海作戦」を監督したりと幅広く活躍する、細川徹。皆川から見た細川は、どんな演出家?
「いまはまだ台本が上がってなくて、ちょろっとしたあらすじが4本くらいあるのを読ませてもらっただけで。たいしたこと書いてなかったんで、どうなるかわからないですね(笑)。どうやら僕が、荒川くんのせいであぶない目に遭うってことらしい。細川さんとは何本か一緒にやらせてもらってるんですけど、だいたい稽古の前半は台本がないんですよ。それでずーっと雑談して、『ハイ、お疲れさまー』って帰るのが何日か続く。その雑談からちょっとずつネタができて、全部揃うのは本番の1週間前くらい。『男子はだまってなさいよ!』の最後ってミュージカルみたいなダンスをやるんですけど、それの振り付けも、あんまり余裕のない状態でガッガッとやるんです。もうやるしかない、みたいな。追い詰められた状態で本番を迎えてお客さんが入って、すごく笑ってもらえたときはすごくホッとしましたね。今回は前もって台本書くって言ってますけど、どうなるんでしょうねえ」
いや、完成度の高いくだらなさで爆笑を呼ぶ「男子はだまってなさいよ!」の細川がこのキャストを得れば、あぶなくなんかないことは確かだ。皆川としては、相棒が気心の知れた、対照的な薄顔の荒川ということでも「安心感はありますね」という。
「荒川くんは真面目なんですよ、気持ちはね。でも、舞台上に立つと不真面目になる。そこが魅力ですよね。ちゃんとフザケてる。僕は荒川くんにビンタされたり蹴られたりすることがホントに多いんですね。彼はすごく力が強いんです。だから、だんだん気を遣って加減してくれたりする(笑)。やさしいなーって思いますね。今回も扮装して撮影したとき、どっちが舘ひろしでどっちが柴田恭兵って指示がなかったんですけど、『皆川さん、どっちがいいですか?』って聞いてくれて。僕は柴田恭兵が大好きだから、『じゃあ荒川くんが舘ひろしね』って言って。彼は柔軟だし、何が起きてもドシッと構えている感じです」
狙ったわけではないというが、奇しくも本家の「あぶない刑事」シリーズは完結編「さらば あぶない刑事」が公開中だ。
「面白かったですねー。1本前の映画(『まだまだあぶない刑事』)は、なんだか話がややこしくなっちゃってたでしょ。そういうんじゃないんですよねー、『あぶない刑事』って。でも今度の完結編はものすごくわかりやすい(笑)。なんかもう、笑うしかない、みたいな感じでしたね。あの2人、カッコいいけどなんか笑っちゃうじゃないですか。舘ひろしさんが『夏海ーっ!』って叫んだときに『うわー、すげえ口デカいんだあ』とか(笑)。ちょっとバカっぽく見えて笑っちゃう、みたいなのが見事だと思いましたね。ツッコむとこいっぱいあるんですけど、そんなの関係ないんですよ(笑)。僕、高校のときバスケ部だったんですけど、練習でもずっと柴田恭兵さんのナナメ走りで、パスとかでも『ヘイ、タカ!』とか言ってやってたくらい好きだったんですよ。バスケットってけっこう無駄な動きが多いんです、フェイントだとかガードだとかでフザケた動きをして。そういうのって似てるじゃないですか、タカとユージの無駄に動く感じに(笑)。身体動かすのが好きなんで、そういうのも楽しみなんですよね」
筆者紹介
若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。
Twitter:@qtyuriwaka