コラム:若林ゆり 舞台.com - 第28回
2015年6月30日更新
第28回:イーストウッドも脱帽の舞台版「ジャージー・ボーイズ」に拍手喝采!
イーストウッドによる映画版「ジャージー・ボーイズ」は、日本では好評を博して大ヒットとなったが、本国アメリカではあまり評判がよろしくなかった。なぜか? 答えは簡単。人間ドラマとしては巧みに描けているものの、ショーとして、ミュージカルとしてのシーンがドカンと見せ場にならず、パフォーマンスの描写が地味でもの足りなかったからだ。アメリカでは、これはあくまでも“あの”ミュージカルの映画版。だから観客は“ミュージカル”を期待したのだ。それなら、肩すかしを食らったような気になっても無理はないかも。そこへいくと、舞台版ミュージカルを知らない日本人は先入観にとらわれず、イーストウッドの音楽つき人間ドラマをそのまま楽しめたというわけだ。
さて、今回の来日版は全米ツアーを経験した優秀なキャストがそろい、本当にストレスがない。Wキャストのフランキー役は、どちらもチャーミングで歌声も抜群だ。ブロードウェイとどこが違うかといえば、ハコ(劇場)の大きさくらいか。このショーに渋谷の高層大劇場は大きすぎるんじゃないか、とも思ったが、ラストのスタンディングオベーションで大勢の観客と感激を分かち合うのは悪くない。
最後に、ザ・フォーシーズンズのメンバーを演じた俳優たちに、映画とは違う舞台の醍醐味について語ってもらおう。
マシュー・デイレイ(トミー役)「まず強調したいのが、このショーにはコンサートという様式がそのまま演出に組み込まれているという点だね。実際にお客さんが目の前にいてくれるから、そこでエネルギーのやりとりが生まれる。映画ではあり得ない、生の舞台ならではの醍醐味を味わってもらえると思うよ」
ミゲル・ホアキン=モアランド(フランキー役・Wキャスト)「僕個人の意見としては、映画より舞台版のほうがよくできていると思ってるんだ。いろいろなエピソードが継ぎ目なく、テンポよく流れているから。ロックンロール・コンサートというスタイルを使っているのもいいところだね。最初から最後までいい流れの中、みなさんに1つの体験として楽しんでもらえると思う」
ドリュー・シーリー(ボブ役)「僕は映画が先にリリースされてから日本で公演ができることになって、とてもよかったと思っている。映画を見た人たちが僕たちのやるキャラがどんな人物で、どんな人生を歩んできたのかわかっていれば、楽曲だけではなく人間ドラマの部分もより集中して楽しんでもらえるからね。俳優にとって素晴らしい脚本だし、演じる役者によってひとりの人物でも違う面を掘り下げる自由が与えられている。ひとりひとりが違うエネルギーで演じられるので、それを生で観て受け取るお客さんたちにとっても、TVや映画とはまったく違う体験になるだろうね」
キース・ハインズ(ニック役)「舞台というのはとてもマジカルな体験だと思っている。数千人の観客と実際に対面してライブのステージに立つと、生きているという感覚がすごく得られるんだ。そこが素晴らしいところだよ」
「ジャージー・ボーイズ」は7月5日まで東急シアターオーブで上演中。
詳しい情報は公式HP:http://www.JB2015.jp
筆者紹介
若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。
Twitter:@qtyuriwaka