コラム:編集部コラム やっぱりアニメはヽ(´▽`)ノ日本が一番 - 第34回
2015年6月10日更新
第34回:9課メンバーそれぞれの活躍が熱い「攻殻機動隊 新劇場版」
原作誕生から25周年を迎えた「攻殻機動隊」の劇場版アニメ最新作「攻殻機動隊 新劇場版」が6月20日から公開されます。今回は草薙素子を中心とした公安9課(通称:攻殻機動隊)がいかにして結成されたのかを描く物語で、これまで以上におなじみのメンバーの人間性のみえる作品になっていると思います。
今作は、士郎正宗氏の原作漫画、押井守監督の「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」シリーズ、神山健治監督の「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズに続く、「第4の攻殻機動隊」と銘打ち、2013年から劇場上映が展開されてきた「攻殻機動隊ARISE」シリーズの完全新作劇場版。「攻殻ARISE」は既存の作品よりも過去の物語で、主人公・草薙素子はまだ公安9課に所属しておらず、バトーやトグサといったおなじみのメンバーもバラバラに登場。自分の独立した部隊を設立したいという素子によって集められていく過程が描かれました。
「新劇場版」では、総理大臣暗殺事件という未曽有の事件が発生し、素子がこれまでの事件を通じてスカウトしてきたバトーやトグサらを集め、事件の捜査に乗り出していく様子が描かれます。事件の裏には、「攻殻ARISE」を通して描かれた電脳ウィルス「ファイア・スターター」の存在も見え隠れし、やがて素子の過去にも意外なかたちでつながっていきます。
「新劇場版」を見て印象的なのは――特にこれまでの「攻殻」を見てきた人にとっては――素子はもちろんのこと、9課メンバーそれぞれに見どころが用意されているところでしょう。
押井監督版などの過去の作品では、荒巻課長と素子をのぞいた9課メンバーといえば、まずはバトーとトグサ、その次に登場機会があるのがイシカワ……といった印象で、他のメンバーが深く掘り下げられる、あるいは活躍が直接描かれる機会は、そう多くはありませんでした。
ところが今作では、「お前たちは最高のパーツ(部品)だ」と言い放つ素子に、若干の反発も覚えるメンバーもいる中、「少佐(=素子)は俺たちを部品呼ばわりしても、部品扱いはしてない」と素子に一番の理解を示すのがパズであったり、敵に傷を負わされて熱くなるサイトー、事件現場を冷静に分析して手がかりを発見するボーマなど、各メンバーの思いや活躍なども描かれています。
もちろん過去の作品における9課メンバーは、百戦錬磨のプロフェッショナルな集団であり、無駄口もきかずに任務をこなす姿がカッコよく、魅力的でした。そんな9課の面々が、「攻殻ARISE」シリーズでは、まだ過去の作品ほどまとまっていない中で、個々の性格やドラマが見えることが新鮮に映りました。「新劇場版」では、そんなアクの強い連中が、なんやかんやと言いながらも素子を中心にひとつにまとまっていく様が熱いのです。そして、素子が最初から彼らに寄せている信頼のようなものも見え隠れするもの然り。
押井監督版は哲学性と作家性で突出し、神山監督版はポリティカルサスペンスとして高い完成度を誇り、それぞれの監督によって色のある「攻殻機動隊」ですが、黄瀬和哉総監督のもと、脚本の冲方丁氏らによって生み出された「新劇場版」(「攻殻ARISE」シリーズ)は、キャラクターのドラマ性が最も打ち出された「攻殻機動隊」と言えそうです。
さて、13年から始まった「攻殻ARISE」シリーズも、この「新劇場版」でひとまず一区切りなのかな? などと思っていたら、その矢先、なんと今度は舞台化という驚きのニュースが。
すでに製作の決まっているハリウッド実写版では、スカーレット・ヨハンソンが主演に決まっていますが、舞台版は果たして誰が素子や9課メンバーを演じるのか? 高度なVFXやCGIでなんでも出来てしまうハリウッドの実写映画ならまだしも、生身の人間がその場で演じる舞台というフィールドで、電脳や義体(サイボーグ)といったこの作品ならではのギミックがどのように表現されるのか? これからも「攻殻機動隊」から目が離せそうにありません。
■「攻殻機動隊 新劇場版」
2015年/日本
総監督:黄瀬和哉/監督:野村和也
声の出演:坂本真綾、塾一久、松田健一郎
6月20日から、TOHOシネマズ新宿ほかにて全国公開
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