コラム:編集部コラム やっぱりアニメはヽ(´▽`)ノ日本が一番 - 第23回
2014年5月15日更新
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第23回:宇宙世紀を総括し、新たな可能性を切り開いた「ガンダムUC」堂々完結
シリーズ誕生から35年目となった「機動戦士ガンダム」。その35周年記念作品のひとつと位置付けられる「機動戦士ガンダムUC episode7『虹の彼方に』」の劇場上映が、いよいよ5月17日からスタート。過去6作を上回り、上映劇場は35館、上映期間も4週間となり、4年にわたった「ガンダムUC」の映像展開が堂々のグランドフィナーレを迎えます。作品内容も、Blu-ray/DVDの発売に先駆けたイベント上映という域を超えた、1本の劇場用映画と言っても遜色ないボリュームで、往年のガンダムファンなら見逃せない作品になっています。

「機動戦士ガンダムUC」は、「亡国のイージス」などで知られる人気作家の福井晴敏氏が執筆した小説(全10巻)をアニメ化したもので、1979年の元祖「機動戦士ガンダム」(以下、ファーストガンダム)と同じ「宇宙世紀」を舞台にした作品。異なる世界観の作品を含めて多数の派生作品のあるガンダムですが、宇宙世紀シリーズは、いわば本家本流。富野由悠季監督が直接手がけたファーストガンダムや「機動戦士Zガンダム」(85)、「機動戦士ガンダムZZ」(86)、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(88)に続く物語として描かれ、それらの作品に登場した人物やメカニックが再登場するなどし、往年のファンにはたまらない作品となっているのは有名です。

物語の時間軸は、「逆襲のシャア」から3年後の宇宙世紀0096年に設定され、地球から宇宙に広がった人類社会を統治する巨大組織・地球連邦政府の体制を覆してしまうと言われる「ラプラスの箱」なる秘密をめぐる争乱に巻き込まれた主人公の少年バナージ・リンクスが、箱を開ける「鍵」となるユニコーンガンダムを託され、連邦政府でも、敵対するネオ・ジオン軍でもない、中立的な立場から戦いを通じて成長していく姿を描きます。
当初は1話約60分・全6話のシリーズとしてスタートし、2010年2月にepisode1「ユニコーンの日」が上映・発売。以降、1年に1~2話のペースでリリースされてきましたが、途中で全6話から全7話に延長されることが決定。しかも、最終話の本編は約90分と、これだけでも短めの劇場用映画と変わらないボリュームです。

先述したように、往年のファンには嬉しい、過去作品からの再登場キャラクターやメカニックの活躍も見どころのひとつ。宇宙世紀の歴史年表で、それまで大きな物語のない空白の部分(0093年に「逆襲のシャア」があり、0105年に小説作品「閃光のハサウェイ」があった)を絶妙にいかした設定で、かつ宇宙世紀の成り立ちや、約100年の歴史がどのように紡がれてきたのかを総括する物語として、過去に語られた重要な戦いや事件、人物の再登場の必然性もおのずと増し、episode1~6でもそうした過去作とうまくつながる設定や演出に驚かされましたが、最終章はこれまで以上。ネタバレになってしまうので詳細に言及できませんが、それこそファーストガンダムが世に送り出されてから35年、ガンダム作品を見て育ってきた30代以上のファンには、さまざまな思いが去来し、見終わったあとにファン同士で語り合いたくなる作品になっていることは間違いありません。宇宙世紀100年を総括する物語であると同時に、現実世界でのガンダム誕生から35年の間に集積したファンの思いや幻想をも総括した作品になっているとも言えそうです。
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また、ビジネス面でも、Blu-ray&DVDの発売に先行して劇場上映&有料配信&劇場限定版DVD&Blu-ray先行販売を同時にスタートさせるというビジネス手法をいち早く取り入れ、成功させた記念碑的な作品と言えるかもしれません。「宇宙戦艦ヤマト2199」「攻殻機動隊ARISE」などが同様の展開で話題を集め、直近では実写作品の「THE NEXT GENERATION パトレイバー」もドラマシリーズを劇場で順次先行上映というかたちをとっています。「ガンダムUC」作中では「可能性」という言葉がひとつの重要なキーワードになっていますが、過去作品を総括する物語でありながら、ビジネス面では文字通り新たな可能性を切り開いた、エポックメイキングな作品になったとも言えるかもしれません。
配信でもパッケージでも、さまざまなかたちで楽しめる作品ですが、もしお近くに上映劇場があるならば、ぜひとも一度は映画館の大スクリーンでご堪能あれ。
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■「機動戦士ガンダムUC episode7『虹の彼方に』」
2014年/日本
監督:古橋一浩
声の出演:内山昂輝、藤村歩、池田秀一
5月17日より、イベント上映&配信&Blu-ray劇場先行販売スタート
⇒作品情報