コラム:編集部コラム やっぱりアニメはヽ(´▽`)ノ日本が一番 - 第22回
2014年4月21日更新
第22回:“一歩を踏み出す勇気”がテーマ 「たまこラブストーリー」山田尚子監督に聞く
もち屋の娘・北白川たまこが暮らす、うさぎ山商店街。南の島からやってきたしゃべる鳥デラ・モチマッヅィが巻き起こすさまざまな事件を通じ、たまことその友人たち、そして商店街の人々の心の交流を描いたハートルフルコメディが「たまこまーけっと」だ。2013年にTVシリーズとして放映された本作は、暖かみのあるストーリーはもちろん、「Free」「境界の彼方」で知られる京都アニメーションの丁寧な仕事ぶりも相まって、高い評価を獲得。
そして、その続編に当たる劇場用作品「たまこラブストーリー」が、ついに4月26日より封切りとなる。その見どころと制作秘話を、監督である山田尚子さんにうかがった。
取材・文:トーキョーアニメニュース
コメディ色の強かったTVシリーズに比べ、若干シリアスな雰囲気へとシフトした本作。その理由は「主人公であるたまこのことをちゃんと描いてみたいと思ったんです。高校3年生の等身大の女の子を描いていくのがいいんじゃないかな」というところにあった。結果、本作は近年まれに見るほど直球の正統派青春ラブストーリーに仕上がっている。
その一方で「たまこラブストーリー」には、TVシリーズで重要な役割を果たしたデラがほとんど登場しない。これも“等身大のたまこのことを描く”ことに注力した結果だ。「今回はたまこが見て見ぬフリをしている問題に踏み込んでいく内容なんですが、デラちゃんがいるとなんでも解決してくれそうだったので、今回はこのような形になりました」とのこと。「たまこラブストーリー」は、たまこたち高校3年生の少年少女が、自分自身で将来のことを考え、道を選び進んでいくという物語なのだ。
アフレコについて山田監督は、「いつもどおり、17歳の等身大の女の子として演じてくださいとお願いしました」と語る。映画だからといって、ことさら感動させる演技を求めることはしなかったのだそうだ。
たまこ役・洲崎綾さんと、もち蔵役の田丸篤志さんの役の掘り下げはかなりのもので、物語のクライマックス、もち蔵がたまこに想いを告げるシーンでは、収録ブースの向こうの監督たちが照れて冷静な判断ができなくなるほどのお芝居を見せてくれたとか。声優たちの熱演も大きな見どころになりそうだ。
ところで、山田監督お気に入りのシーンは、たまこの幼馴染・もち蔵が映研の部室で、友達と過ごしているところだとか。「TVシリーズでは、もち蔵登場シーンはほとんどたまこと一緒なので、意識してしまって、いつもアワアワしちゃってるんです。そうではなく、落ち着いて自分のペースでしゃべっているもち蔵が見られるので、新鮮ですね。あとは、みどりに対して秘密を持ってしまったたまこが、みどりにそれを独白するシーン。2人の乙女の間の秘密を覗いてしまった感じがあって好きですね」
ファンからの反応としては「もち蔵のたまこへの恋を応援していただいている感触が強い」という。純粋な気持ちでたまこに思いを寄せるもち蔵は、男性ファンからも好感度の高いキャラクター。TVシリーズの時には、男性スタッフから「もち蔵をこの後どうする気なんですか、放っておかないであげてください」と言われたこともあるとか。
そんな本作の見どころは「思春期の恥ずかしさと、暗さと、鋭さ」だという。それは画面の作り方にも反映されており、レイアウトやキャラクターの配置、色味などもTVシリーズとは空気感の異なるものに仕上がっている。背景についても、より実在感のあるものに変更されているらしい。
そして、本作のテーマは「一歩を踏み出す勇気」。「本作に登場する子たちは、みんななんらかの形で、それぞれの一歩を踏み出しているんです。そんなたまこたちの物語が、ご鑑賞いただくみなさんの一歩にもなるといいな、と思っています」と、山田監督はファンにメッセージを贈った。
なお、本作の同時上映作品は短編「南の島のデラちゃん」。こちらについては、「南の国で、その後楽しく暮らしているデラちゃんたちを描いています。本編と違ってシリアスなところはまったくありませんが、『デラとたまこはつながってるんだな』と思っていただけるかと思います」とのこと。さらに、7月には南の島の少女チョイ・モチマッヅィと、王子メチャ・モチマッヅィの恋模様を描いた小説の刊行も予定されているとか。こちらも要注目だ。
■「たまこラブストーリー」
2014年/日本
監督:山田尚子
声の出演:洲崎綾、田丸篤志、金子有希、長妻樹里、山下百合恵
4月26日より、新宿ピカデリーほかにてロードショー
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