初代スーツアクター古谷敏が語る「シン・ウルトラマン」感想と「ウルトラマン」の思い出

2022年6月4日 13:00


初代ウルトラマンのスーツアクターを務めた古谷敏
初代ウルトラマンのスーツアクターを務めた古谷敏

映画「シン・ウルトラマン」の大ヒットを記念し、庵野秀明がテレビシリーズ「ウルトラマン」(1966)から選んだ4エピソードを4K映像で上映する特集「庵野秀明セレクション『ウルトラマン』4K特別上映」がスタート。6月3日、初代ウルトラマンのスーツアクターを務めた俳優の古谷敏が、都内でトークイベントに参加した。

シン・ウルトラマン」では、ウルトラマンのスーツアクター、モーションキャプチャーのアクターとして出演。「製作者の方々にウルトラマン愛をすごく感じました。本物のウルトラマンのアクションのほとんどがちりばめられていた。そんな感じを受けました」と感想を述べ、CGを用い、現代風にアップデートされたウルトラマンについては「僕よりもカッコいいですね。あの動き、しなやかさは僕には出せなかったなと感じます」と語る。それでも、古谷の動きがベースであることに「庵野さんが僕のことをとても好きでいらっしゃったんだと思う」と述懐。

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撮影時のエピソードは「オフレコ」とのことだが、「ただ言えるのは、CGではなくて、いつか普通の特撮を撮ってほしいなあっていうのが僕の夢」と述べる。司会を務めたジャーナリストの清水節氏から「その時には古谷さんは十分準備ができてらっしゃるということですね?」と問われ、「できてますよ。ワンカットでもやりたいです」と意欲を見せると、会場から大きな拍手が上がった。

シン・ウルトラマン」本編については「今は流行っているものは素晴らしい。ただ、画面が変わっていく物語のスピードに僕はなかなかついていけなかった。特撮関係はついていけましたけど。俳優さんたちのスピード感はすごい。僕らにはないカッコよさ」と映像表現における時代の変化を感じたと吐露するも、戦うウルトラマンの身体の動きは「ああ、僕の感じだなと、下を向いてほくそ笑んでました。何回も見ていただければいろんな発見があると思う」と、ファンへのリピート鑑賞を呼びかけた。

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その後、「ウルトラマン」4K特別上映でセレクトされた4エピソードそれぞれの裏話を披露した。

いわゆる“にせウルトラマン”ザラブ星人が登場する第18話「遊星から来た兄弟」では、「今までの怪獣と違い、ウルトラマンとウルトラマンの戦いで、距離が近かった」。マスクの中から、別のウルトラマンを見るという体験から「ほかの人にやらせてはいけないと初めて思った」と、古谷にとって自分がウルトラマンであるという“覚悟を決めた”回だったと振り返る。古代怪獣ゴモラが登場する第26話「怪獣殿下(前編)」は、庵野氏が「ウルトラマンが美しくやられている」というポイントでチョイス。美しくやられるというコツについて、「ゴジラに入っていた東宝の中島春雄先輩が、最初にメロンガで僕と戦った時に、『美しく投げられろ、美しく投げろ。それが基本』と教えてくださった。それが活きていると思う」と、ウルトラマンの“美学”を明かす。

三面怪人ダダが登場する第28話「人間標本5・6」では、本編のロケにも同行。普段古谷はセットでの撮影がメインだったが、「他の人に、等身大を見られるのはつらいんです。ダダ、僕、黒部(進)さんが同じ背丈でうろうろしているのはつらかった」とウルトラマンの世界観へのこだわりを強調。実相寺昭雄監督による、メガトン怪獣スカイドンの登場する第34話「空の贈り物」に関しては、「実相寺さんの回はスペシウム光線を出さないんです。全体を見る監督で、怪獣をどう撮影するかがあの方のテーマ。ジャミラの回など実相寺さんの作品が好きな方はたくさんいますね」と、シリーズの中でも変化球として知られる実相寺監督の現場を語った。

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その後、初代ウルトラマンをデザインした成田亨氏の話題に。成田氏から直々に指名を受け、ウルトラマンを演じることになった古谷。脚本家の金城哲夫氏が描く美しい宇宙人を体現できる人物として「『お前がオファーを受けないとこの映画できないんだよ』とよく言われていました。成田さんと並んで『シン・ウルトラマン』を見たかったです」「素敵な素晴らしい方。僕もああいう人間になりたいなと思っていた」と成田氏との日々を偲ぶ。

ウルトラマンを演じるにあたり、壁にぶつかったこともあったそうで、その時に相談したのは金城氏。体長40メートルの宇宙人ということで、「存在はしないし、絵でも見たことはない」と悩みを打ち明けると、金城氏から返ってきたのは「敏ちゃんがスーツに入って、ファスナーを上げたその時点でもう宇宙人だから、それでいこうよ」という言葉だったという。「いいかげんでしょ(笑)。でもそれから気が楽になって。普通の僕の動きでいいんだと。あとは特撮だからカメラが処理してくれると。そう考えて仕事に入れました」と振り返る。

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また、「ウルトラマン」の生みの親である、円谷英二氏が初めてセットでウルトラマンと対面した写真がスクリーンに映し出されると、「『息苦しくないか? 目見えるか?』と、円谷さんがウルトラマンに優しく問いかける場面です」と説明。喧噪の中、聞き取りづらい言葉があったそうで「『子供に夢』までは聞き取れたんです。でも、それは『子供に夢を与えるんだよ』ということだと。それからずっと、自分が子供の時にもらった夢を(ウルトラマンという)そういう形でお返ししようと演じている」と明かした。

これらの貴重なトークと共に、イベント最後の撮影タイムでは、ウルトラマンがスペシウム光線を放つポーズを披露し、会場のファンを大喜びさせた。「庵野秀明セレクション『ウルトラマン』4K特別上映」は、6月12日まで全国13劇場で開催。

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