終わりなし
劇場公開日:2003年3月8日

解説・あらすじ
1996年、54歳の若さで生涯を閉じたポーランドの名匠クシシュトフ・キェシロフスキ監督の劇場初公開作。夫の死を受け入れられない妻の姿を描き、フランソワ・オゾンの「まぼろし」を彷佛とさせる物語「終わりなし」。
1985年製作/109分/ポーランド
原題または英題:Bez konca
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2003年3月8日
劇場公開日:2003年3月8日
1996年、54歳の若さで生涯を閉じたポーランドの名匠クシシュトフ・キェシロフスキ監督の劇場初公開作。夫の死を受け入れられない妻の姿を描き、フランソワ・オゾンの「まぼろし」を彷佛とさせる物語「終わりなし」。
1985年製作/109分/ポーランド
原題または英題:Bez konca
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2003年3月8日
戒厳令下のポーランド。
ひとりの弁護士(イエジー・ラジヴィオヴィッチ)が急死した。
残された妻(グラジナ・シャポーフスカ)のもとに現れ、「私は四日前に死んだ・・・」と観客に語る。
死に関しては不審なことはなかった。
彼が携わっていた案件は、戒厳令下のストの指導者と目される男の弁護。
弁護の後釜を引き継いだのは、死んだ弁護士の師にあたる老弁護士で、彼は体制寄り。
残された弁護士の妻、拘留されているスト指導者とその妻及びスト仲間、後釜の老弁護士と、それぞれ異なる立場の物語が進行する・・・
といった物語。
あらすじ冒頭で「戒厳令下の」と書いたが、かなりの長期にわたって戒厳令が敷かれていたようで、もしかしたら解除された後の物語かもしれない。
それでも、社会主義国の息苦しさ、自由のなさが物語の背景から迫って来る。
『デカローグ』で描かれた各話のシンプルさと比べると盛りだくさんの内容で、キエシロフスキー監督作品の中でもっとも重厚。
政治背景的にはアンジェイ・ワイダ作品に通じる。
しかしながら、残された妻の前にしばしば現れる弁護士の姿は、ある種幻想譚めいており、他のキエシロフスキー監督作品のテイストが色濃く感じられます。
なお、ストの指導者の裁判、執行猶予付きの有罪で、彼は拘留を解かれるものの、それは負け戦であり、政治的には苦い敗戦です。
見応えある一編でした。
「僕は死んだ」と告白して始まる。心霊ものかと思わせる冒頭だったが、物語は政治的な方向へ走り、妻が行きずりの男に身をまかせる話にも展開したり、精神的に病んでいく方向へ。妻ウラのセックスシーンや自慰シーンという大胆な映像もあるが、死んだ夫への想いも募るばかり。
一つ一つの心理描写、映像表現。部分的には面白いのに、全体的な繋がりが全く面白くない。催眠治療を受けているときにはアンテクも現れるが、他の性的なシーンには現れない。裁判の流れも最終的には略式となり、傍観者的な視点では共鳴できず、傍聴していた幽霊のアンテクが虚しく映る。夫が残した仕事を最後まで見守り、再生の旅に出ると告げたウラはガス栓を開き、夫が迎えにくる・・・ラストの葬送行進曲のような音楽では感動もできない。虚しくなるだけでした。