銀座二十四帖

劇場公開日:

解説

週間朝日連載の井上友一郎の小説を「うちのおばあちゃん」の柳沢類寿が脚色し「あした来る人」の川島雄三が監督「七つボタン」の横山実が撮影を担当した。主なる出演者は「志津野一平 地獄の接吻」の河津清三郎、「おしゅん捕物帖 謎の尼御殿」の月丘夢路と北原三枝、「青空の仲間」の三橋達也、「緑はるかに」の浅岡ルリ子の他日活入社第一回の大坂志郎など。

1955年製作/117分/日本
原題または英題:Tales of Ginza
配給:日活
劇場公開日:1955年9月16日

あらすじ

京極和歌子は少女時代、奉天で、今ではただ五郎としか記憶がない放浪画家に“少女像”を描いてもらった。この絵にはGMとだけサインがある。画家との再会を夢見る彼女は、その絵を銀座の泰西画廊に持ちこむ。まもなく桃山豪という画家が名乗り出たがやがて第二の男が名乗り現われ、桃山はニセであることがわかる。第二の男はプロ野球のスカウト三ツ星五郎であるが、彼も怪しい。一方、銀座の顔役で花屋を経営している三室戸完こと通称コニイは、この事件の最初から和歌子に異常な関心を示していた。彼女は夫の克巳がヒロポン密造の事業に関係しているのを嫌って、一人娘珠代を大磯の自宅に残したまま別居しているが、そこへ突然大阪から姪の仲町雪乃が上京して来た。ある日、コニイは子分ジープの政のことからバー「キャロル」の連中と大乱斗を演じ留置場へ放りこまれるが、その中でバーのマスターからGMという名は三室戸五郎のことで、大陸からの引揚者で年は四十才前後ということを聞き驚く。コニイの実兄だったのだ。翌朝釈放されたコニイはやがて、和歌子に花屋を手伝ってもらうことになった。和歌子も彼の店で働くことに生き甲斐を感じた。ところが三ツ星から和歌子は三室戸五郎の妻だといわれ、コニイは二度吃驚し、果して兄か否かその男と対決しに行く。ところが、意外にもそれは三室戸五郎の昔の親友であり、現在和歌子の夫である克巳であった。兄の名をかたってポンや麻薬を密売している憎い男と思った時、すでに克巳の背後に警官隊の包囲が迫り、克巳は自殺した。和歌子は、コニイと再会を約しながらも、銀座を去って行くのであった。

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映画レビュー

4.0本作が日活の無国籍アクション映画の始祖だと思います

2025年4月10日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

銀座二十四帖
1955年、昭和30年、日活白黒作品
川島雄三監督、若き日の今村昌平が助監督を務めています

二十四帖は「にじゅうよんちょう」と読みます
銀座は八丁目まで、それが朝、昼、夜で二十四というわけです
つまり、銀座の隅から隅までを朝昼晩の全てを紹介しますという意味です
といいつつ、多摩川の新田銀座が序盤に映ります
ここに主人公のコニーという花屋の男性が住んでいて、銀座まで通っているのです
今の東急多摩川線武蔵新田駅辺り
戦後すぐ「州崎パラダイス赤信号」の江東区州崎から業者が来てこの辺りにカフェー街を作ったそうです
カフェー街といっても今のようなインスタ映えを競うようなものでなく、早い話が売春を伴う歓楽街です
1957年の売春防止法の施行を見越してのことと、羽田に進駐軍が駐屯した地の利も見越してのことでしょう
本作で描く垢抜けてどこか外国のような銀座が、そこいらにある観客の身近な銀座とは遠い世界ではない地続きであることを説明しようとしたものでしょう
日活の無国籍アクション映画の始まりです
こうした映画を受け入れてもらえる為には、こういう工夫が必要だと思われたのでしょう

すぐ場面は本物の中央区銀座に変わり、お話が始まります
それもコニーがオート三輪で武蔵新田から第二京浜を走って銀座に向かうシーンを挿入します そうすることで地続きですよと説明している訳です

敗戦から10年後の銀座です
瓦礫など戦災の跡形はすでになく、明るく綺麗な街並みになっています
真白く新しい大きなビルも見えます
鉄筋コンクリート造りです
戦前、戦中や戦後の混乱期の暗い世情は影も形も残って居ません
というかわざとそういうものを写していないのです
当時の観客が外国映画で観る憧れの光景を銀座で再現しようとしたのだとおもいます
東京の銀座だってこんなに復興して外国にだって負けない街になったのだと背伸びした映画です
その意味で本作が日活の無国籍アクション映画の始祖だと思います

お話はヒロインの月丘夢路が15年ほど前というから戦前満州奉天で少女時代に描いてもらったポートレートの画家をコニー役の三橋達也の力を借りて探すというもの
銀座は今も昔も画廊の街でもあります
月丘夢路の姪役の雪乃は北原三枝です
素晴らしいスタイルです

劇中のミス平凡の司会の水の江瀧子は後の日活無国籍アクション映画で辣腕をふるった泣く子も黙る名物プロデューサー本人です
公開当時40歳です
20歳の頃は男装の麗婦人として既に大スターでした
宝塚の娘役大スターの月丘夢路が当時の彼女の楽屋を訪ねたときににはガタガタ震えたほどの大スターでした
太陽の季節の大ヒットでその地位を得るのは翌1956年のこと
本作ではまだプロデューサーではなく俳優てましかなかったかもしれませんが、映像や衣装、ロケ地の選定などは彼女の好みであると分かります
北原三枝がサブリナパンツを穿いているシーンのセンスは流石水はの江瀧子です
1954年公開の麗しのサブリナで一躍ブームになったオードリーヘップバーンが履いていた短い履いパンツのことです
またラスト近くに地下鉄の風で本作と同年公開の「七年目の浮気」でのマリリン・モンローのスカートがめくれあがるシーンのオマージュがあります

平凡というのは、出版社の平凡社のことで、戦前から続く大出版社
今のマガジンハウスです
本作公開前年に
百科事典の刊行を始めて大当たりをしていたそうです

キャバレーオペラの部屋で映写していたのは恐らくご禁制のエロだと思います
ヒロポンは覚醒剤のこと
ノアール映画でもあまりに露骨にそういうものを見せない匂わせないのは後の日活無国籍アクション映画でも同じです

70年も昔の銀座や、大阪の各地が映ります
これもまた楽しい限りです

終盤新橋駅が写ります
新聞スタンドのビラ、プラットフォームでの創立されたばかりの自衛隊員の万歳シーンなど
観客を、無国籍アクション映画から現実に引き戻すシーンをわざと挿入してからエンドマークがでます
これもまた必要なことだと監督は思ったのでしょう

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あき240

3.5森繁

2021年10月17日
Androidアプリから投稿

最初っから森繁が歌い、ナレーションする。森繁は気違い部落でもこれをやっていた。タクシーでの言付けしてる男がカッコいい。画廊16件中13が銀座、ナンパしながらのダンスがカッコいい。バーで流しの花屋がカッコいい。というか、ポン出回ってたんですね。マンボクラブがカッコいい、あのパーカッションの腕のヒラヒラ取り入れたい。

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タカシ

3.0和製ノワール

2019年2月11日
Androidアプリから投稿

ノワールの踏襲を感じさせるストーリー物としては楽しめるが、川島作品らしさは物足りない
いわゆる生活のための映画なのだろうか

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村岸猫目錠

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