新作を発表するたびに世界の注目を浴びる三池崇史監督にとって、『マスターズ・オブ・ホラー/恐ー1グランプリ』の一篇『インプリント〜ぼっけえ、きょうてえ〜』は、アメリカ監督デビュー作である。それは、人間の……女の……おぞましい心を華麗な映像美で表現し、正視できぬほどのとてつもない衝撃的な作品である。
「三池さんの『インプリント〜』を観た夜、悪夢をみたほどだったよ」と、『悪魔のいけにえ』(74)のトビー・フーパー監督を震え上がらせたほどだ。
原作は岩井志麻子の短編小説「ぼっけえ、きょうてえ」(角川ホラー文庫刊)で、第13回山本周五郎賞と第6回日本ホラー小説大賞をW受賞したものの、女郎による怖ろしい一夜の寝物語の特異な設定と、日本の忌まわしき因習を描写しているため、絶対に映像化不可能といわれてきた。だが今までも、『オーディション』(00)や『殺し屋1』(01)などで、映画界のタブーを破壊してきた三池崇史は、原作の精神を抑えながらも、女による陰湿な世界を巧みに表現し、特に正視できぬほどの拷問シーンを盛り込み、美しくも怖ろしい狂乱の世界を現出している。
まず全編英語劇にする制約があるため、原作世界の重要な要素をしめる岡山弁訛りを、機械的な翻訳ではなく、日本語訛りの英語という特異なイントネーションに移し替え、艶のある味わいを生み出すことに成功。しかも華麗な衣装や美術によって、煌びやかな和テイストを漂わしつつも妖しい雰囲気を醸し出し、かつての日本にありそうでありえなかった、架空の明治を創造している。
舞台は、夜霧に包まれた川の中の小さな浮島にある、遊郭。放浪するアメリカ人記者は、愛する女性・小桃を探し求め、その地を訪れると、一夜を共にすることになった醜い女郎から、自らの陰惨な過去と、小桃の哀しい末路を聞かされる……。
脚本には『オーディション』で組んだ天願大介があたり、原作の精神を損なわず大胆に脚色。斬新且つ誇張した虚構の明治の空気を漂わせようと、『御法度』(99)や『クッキー・フォーチュン』(99)等、ワールドワイドで活躍する撮影監督・栗田豊通と、『殺し屋1』や『メゾン・ド・ヒミコ』(05)の北村道子の華麗な衣装により、見事な色彩美を醸成している。寝物語を話す醜い女郎役には、『SAYURI』(05)の好演が光る工藤夕貴、米の文筆家クリス役には、『アンタッチャブル』(87)の悪役が印象に残るビリー・ドラゴがあたり、原作者の岩井志麻子も怖ろしい役柄で特別出演している。
視覚に強烈に焼きつくほどの異様な世界観ながら、三池監督はじめ優秀なスタッフ&キャストによって芸術の域まで高め、早くも国内外でセンセーショナルな話題を呼んでいる。
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