美しき異端のダンサー、セルゲイ・ポルーニンが来日「世界に足りないものを補うことが芸術の役割」
2017年4月28日 14:00
[映画.com ニュース]英国ロイヤル・バレエ団史上最年少の元プリンシパルで、バレエ界きっての異端児として知られるダンサー、セルゲイ・ポルーニンが、ドキュメンタリー「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」の公開を記念し来日。4月26日に都内で会見し、27日には、東京藝術大学奏楽堂でパフォーマンスを披露した。
映画は、「ヌレエフの再来」と称され19歳で英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルとなるが、わずか2年後に突如として退団を発表。本人や家族、関係者のインタビューなどを通し、ポルーニンの真の姿に迫る。
ポルーニンは、歌手ホージアのグラミー賞ノミネート曲で、劇中にも登場した楽曲「Take Me To Church」にあわせた華麗なパフォーマンスを披露。パイプオルガンを背景にした荘厳な雰囲気の中、優雅かつ躍動感溢れるダンスで観客を魅了した。
イベントでは、東京藝術大学美術学部准教授でクリエイターの箭内道彦氏が聞き手を務め、映画や芸術について質問を投げかけた。芸術をどう捉えるか?と尋ねられたポルーニンは「美をつくり、人の心に通ずるもの。日々の生活が完璧であったなら、アートはいらないと思うのです。世界には足りないものが多く、それを補うのが芸術だと思います。戦争やテロなど悪いことが溢れているからこそ、芸術は優雅で美しいものとして存在する。芸術家は世の中を導くことが出来る存在、政治家もクリエイティブなビジョンを持つべき。どんな仕事であってもクリエイティブであれば、みなアーティストだと思うのです」と持論を述べる。
若者へのアドバイスを求められると、「勇気を持ってください。例えば、飛行機が離陸するとかなりの高度を持った場所で安定しなくなる。そうなると、安定する場所まで降りようとするのが人間の性質だと思うけれど、安定しない高さで、高いまま必死に維持しようとする、そういうイメージを私は持つようにしています。失敗を恐れず、そうすると前進することが怖くなくなるのです。そして、自分にとって心地のよい環境を探すこと。孤独を恐れず、静けさの中に身を置くこと。本の中にすべての答えがあるわけではありません。自然のエネルギーに耳を傾けると、自分しかわからない答えが見つかることがあります」と助言する。
最後に、自身のゴールを問われると「世界を一つにすることがアーティストの仕事だと思うのです。このことに気付くのに何年もかかってしまいましたが、地球上に人間がいて、家族があって、愛があって、国や文化が違っても基本的には同じこと。国境はいらないと思います」と穏やかな口調で語った。
「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」は7月15日からBunkamura ル・シネマ、新宿武蔵野館ほかで公開。
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