全シーンがラストのために!宮沢りえ&杉咲花「湯を沸かすほどの熱い愛」を貫く“愛”に感化
2016年10月28日 06:00
[映画.com ニュース] 末期がんで余命2カ月を宣告された女性と家族の絆を描いた「湯を沸かすほどの熱い愛」で親子役を演じた宮沢りえと杉咲花が、初共演の手ごたえを語った。
宮沢が演じたのは、持ち前の明るさと肝っ玉の強さで家計を支える一児の母・双葉。突然の事態にめげることなく、1年前に失踪した夫の一浩(オダギリジョー)を連れ戻して休業状態の銭湯「幸の湯」を再開させ、学校でいじめを受けている娘の安澄(杉咲)と真しに向き合い、愛ある行動で家族の成長を促していく。
杉咲は宮沢を役柄同様「お母ちゃん」と呼び、宮沢は「この作品を通して花っていう家族ができたと思います」とほほ笑む。2人からは、本当の親子と見まごう親密な空気が流れるが、撮影ではどのようにして“母娘”になっていったのか。宮沢は、杉咲との初対面を振り返り「うそのない人だなって。自分の心の奥底のものも一緒に放出しないと、太刀打ちできないぞと思いましたね」と語る。対する杉咲は「ご一緒させていただくことへの光栄な思いと、後はやっぱり、緊張しました……」と本音を明かしながらも、「緊張感なんかに負けちゃだめだなと思いました。そんなところで自分が弱くなっちゃうのは絶対にしたくなかった」と芯の強さをのぞかせる。
宮沢は、杉咲の言葉にうなずき「こういう役をやるときに、遠慮ほど邪魔なものはないんですよね」と続ける。「遠慮をなくしてもらいたかったから、作品に入る前に連絡を取り合うようにして。映画と関係のない会話を重ねて、私がどれだけ遠慮が嫌いかということをわかってもらってから(笑)のインだったので、スタートが密度の高いところから入っていかれました。それは映像にあふれているなと思いましたね」。
宮沢からのアプローチを全身で受け止めた杉咲は「インする前にお母ちゃんが『どれだけ現場で時間が掛かっても大丈夫だよ。何も気にしなくていいよ』とおっしゃってくださったんです。その言葉をいただいて、私が持っていた共演への必要以上の緊張感が排除されたんですよ。すごくありがたかった」と“母”からの愛情あふれるアドバイスに感謝。「役をつかめるまでの期間がとても難しかったけれど、家族のような関係をインの前にお母ちゃんと(一浩の連れ子・鮎子を演じた伊東)蒼と作られていた。だからこそ、改めてお母ちゃんの病気を受け止めるのが苦しかったです」と全身全霊で役に入り込んでいたようだ。宮沢も「お芝居という“うそ”の枠の中で私たち(役者)は生きるんだけれど、花もオダギリさんもその枠がぼやけるくらい“本当”(リアルな感情)で生きている人たち。その人たちと対するにはどうあるべきかを考えたときに、“演じる”じゃなくて“本当”で埋めるということなんだと気づいた」と共演したことで新たな発見があったと話す。
「家族とは、損得なく愛せること」(宮沢)、「わざわざ確かめなくても、愛してることをわかっている存在」(杉咲)という2人の言葉やタイトルに象徴されるように、本作で描かれるのは家族の不変の愛だ。杉咲は「試写を見たときに、自分の大事な家族や友達に必ず見てもらいたいって思ったんです。見てくれた人にとっての大事な人を、もっと愛せるきっかけになる作品だと思います」と力を込める。「物語の中でキーとなるシーンではないところにも、優しさが詰まっている。安澄が同級生に絵の具をたくさん付けられてしまってお母ちゃんが学校に(迎えに)来るシーンがあるんですが、そのこと(いじめを受けていること)にお母ちゃんは何も触れないんです。でも『何色が好き?』って聞いてくれる。言葉のいらない、でもどこかで包んであげるという優しさが私はすごく好きです」とかみ締めるように言葉をつむいだ。
宮沢は、「本作はとにかくラストシーンへ向ける芝居なんだなと思って。私はああいうラストシーンが大好きだし、タイトルにも込められていますが、すべてはラストシーンのために重ねられていくシーンで、それぞれのシーンの中にも男女の愛、親子の愛、色々な形がある。余命を宣告された双葉という人が、残りの命をどう生きるかということを通して、皆さんの日常の景色がいつもよりも明るく美しく見えたらいいなってすごく思います」とメッセージを送った。
「湯を沸かすほどの熱い愛」は、松坂桃李、篠原ゆき子、駿河太郎が脇を固める。自主映画「チチを撮りに」で注目された中野量太監督が、商業映画デビューを飾った。10月29日から全国公開。
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