「死刑弁護人」安田好弘弁護士と勝間和代が死刑制度を語る
2012年7月10日 13:40
[映画.com ニュース] オウム真理教事件の麻原彰晃、和歌山毒カレー事件の林眞須美、光市母子殺害事件の元少年など、死刑事件の弁護を請け負う弁護士の安田好弘氏の活動を記録した映画「死刑弁護人」公開記念鼎(てい)談が7月9日、ポレポレ東中野であり、ドキュメンタリー作家で映画監督の森達也の進行で、安田氏と経済評論家の勝間和代が死刑制度について意見を交わした。
“極悪人の代理人”“人殺しを弁護する人でなし”と世間から非難を受け、また、加害と被害両者の苦しみに向かい合う死刑事件の弁護人は多くない。さまざまな負の感情が交錯する渦中で苦悩することになっても弁護を引き受ける安田氏の活動や生き様を通して、司法制度のあり方を問う。
映画では和歌山カレー事件で警察が押収した紙コップの色に食い違いがあることを指摘し、安田氏が追求する場面を映している。ライブドア事件の堀江貴文氏や郵便不正事件で逮捕・起訴された元厚労省局長の村木厚子氏と交流があるという勝間は「様々な犯罪がでっち上げであることは理解していた」と話し、「状況証拠で固めて、それもねつ造の可能性があるなら、誰でも死刑になる可能性がある。(林被告が)保険金詐欺をはたらいていたことと、殺人はたらくことは全く別の事情なのになぜ世間は混ぜてしまうのか。それを検察も裁判官も同意してしまうなら、何のための司法制度がさっぱりわからない。それが一番ショック」と感想を述べた。
安田氏は裁判官が「判決に対してのメディアや世論の反応を非常に気にしている」といい、「官僚制と官僚的な体質を持っているから。常に裁判官、検察官として一生暮らし、務めあげようと思っていますから。地位がどれだか安泰であるかしか見られないんです」と世論に迎合している体質について説明。感情に流されがちな世論について、勝間は「日本市民は社会や家庭のしがらみで抑うつされている。そこから外れた人に対するバッシングが激しい。そこを直さないと問題は解決しないのでは」と持論を述べる。そして安田氏は「安定した社会でない限り、温和や寛容の精神は育たない。貧富の差はどんどん大きくなっているし、ルーツの差の分別が起こりつつある。いろんな場面で転換期に来ている」と分析した。
「死刑は犯罪の抑止力に何の役にも立たない。死刑の問題が感情的なところで議論されている」という考えで、勝間は死刑廃止を主張する。安田氏も「死刑というのは政治制度。死刑がいいかどうかということよりも死刑をどう利用するかで存在する。それは死刑という威かく力を最後に用意しておきたいから。社会全体が犯罪のことを理解し、それを防止するだけのすべをつくり上げれば、死刑廃止は難しいことではない。世界の3分の2を超える国が廃止しているわけですし」と語った。
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