ドキュメンタリー監督・海南友子、母の視点でダルデンヌ兄弟新作を語る
2012年4月15日 13:30
[映画.com ニュース] 第64回カンヌ映画祭グランプリ受賞、ベルギーの名匠ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督とリュック・ダルデンヌ監督の新作「少年と自転車」の公開を記念し4月14日、ドキュメンタリー映画監督の海南友子を迎えたトークイベントが東京・代官山蔦屋書店で開催された。
本作は2003年にダルデンヌ兄弟が来日した際、少年非行を専門とする日本の弁護士が語ったエピソードに着想を得て製作された。児童養護施設に預けられ、父親と再び暮らすことを願う少年シリルと、週末に少年の里親になる美容室オーナーのサマンサとの交流を描く。「世界の人が共通で感じる母と子の絆を感じた。少年の青年期の始まりが印象的に描かれていた」と感想を述べた海南監督は、昨年末に男児を出産したばかりで、母と息子という関係を自身となぞらえながら作品を楽しんだという。
女性の母性の芽生えについて「子どもを持ってみて、無条件で愛せるものはほかにないと思った。20年映像を作る仕事をやってきて、仕事が一番楽しいことだったのに、全然違う喜びを日々感じています」と自身の変化を明かす。劇中で里親になるサマンサは独身の設定だ。「この作品はサマンサがどういう気持ちで養子を迎えたか、母からの視点を空想する余地があって素晴らしい」と話す。
ドキュメンタリー映画監督として活躍する海南監督、是枝裕和プロデュース作「ビューティフルアイランズ 気候変動 沈む島の記憶」が国内外で高く評価され、今年は山田洋次プロデュースの「いわさきちひろ 27歳の旅立ち」が7月に公開される。常に社会問題に目を向け、震災後は妊娠がわかるまで福島第一原発から4キロ地点まで取材を進めていた。
ダルデンヌ兄弟や是枝監督のようにドキュメンタリー出身で、劇映画に転向する監督は少なくない。海南監督も、再来年を目処に劇映画を手がける予定だという。ドキュメンタリー製作の醍醐味を「行き先の分からない船に乗り込む喜び」と例え、「それとは別に、テーマをもっと人に伝えることができるのが劇映画。この作品(『少年と自転車』)のように希望を伝えることができる。ドキュメンタリーだと、絶対的な失望の中で終わることもある」とその違いを説明する。
そして「日本で聞いた短い話から、これだけの作品を作っていけることをすごくリスペクトしています。カンヌで賞を獲っているから良い作品ということではなくて、あたたかい話がひとつの悲劇からちゃんと紡がれている」とダルデンヌ兄弟の手腕を絶賛した。
「少年と自転車」は公開中。
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