偶然と想像のレビュー・感想・評価
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心は風、言葉は花びら
心は風、言葉は花びら
風がどこから吹いてきて、どれくらいの強さなのか?
風向きがいつ変わったのか?
風は無味無臭なので感じることはできても、目に見えることはありません。
ただ、そこに花びらが加わると、その強さや風向きを見ることができます。
この映画はそんな映画でした。
会話劇で次々と役者さんたちのセリフが交わされるのですが、セリフが交される度に彼らの心模様が、あたかもそこあるかのように我々は確かめることができます。
上質でオトナの映画でした。
偶然でなく必然
内容とは関係ないですが、ある視覚障がい者の方が、「人生は偶然でなく必然です」と高らかに語っておられたのを何十年かぶりに思い出していました。なるほど確かに3本とも偶然かも知れない。いや、自分で自発的に引き込んでいるかも知れない。じゃ、何気ない自分の日常はなぜ起こるのだろうか?決して単調でも偶然でもありはしない。そんなこんなを、それこそ想像させてくれる濃密な時間でした。・・・・あの突然に緊張感に包まれる場面が素晴らしいですね。言葉の威力という表現では足りないです。私は2本目の教授の語りに助けられたかな。ありがとうございました。
タイトルとアイデアは秀逸だが…
う〜ん。予告編を観て、それなりに多少の期待は感じつつ、
とはいえ当日、特に過度な期待もせず、観に行った訳だが…
そんなフラットなマインドを超えるほどの内容ではなかった。
3話目は結構よかったけど。
1話目と2話目は、もう一歩で眠るところだった。
特に2話目は途中からイイ線いってたのにアノ展開はないわな。
あんな際どい音声データ、その場で直ぐメール送信させるでしょフツー。
と言うか、スマホ録音したデータを敢えてPCから送信するなど訳わからん。要するに御都合主義やね。
あと他にも現実味の薄れてしまう展開や設定によって、違和感が出てしまい随分と勿体なかった。
女の子が青山〜六本木〜渋谷へと一気に走り抜けたり(距離が長すぎるわ)
仙台の中心地から女性がゆっくり歩いて15分で住宅地に辿り着いたり(近過ぎない?)
思春期の子供がお気に入りのフィギュアを自室でなくリビングに飾っていたり…
些細な事だが、やはり神は細部に宿ると思うのだ。
他にも諸々とあったが、結局こういうのが続いてしまうと、役者がイイ芝居していても「所詮は作り話の絵空事か…」となってしまい、なんとも微妙にシラけた気分になってしまう。色々な箇所に都合の良い設定が現れていた。
まだ『ドライブ・マイ・カー』を観てはいないが、なんだか同じような気分になってしまいそうな予感がする。
ちなみに、女たらし役を小室某氏に似た俳優にしたのは、偶然?想像?
あと、どの作品も笑えたのは、結構以外であった。劇場内もみんな笑ってた。
次回作も出来れば、あのユルい笑いを、もっとやって欲しいが、不必要な御都合主義は、ホント勿体ない。ぜひ排除して欲しい。
ちょっとイラついたけど、それは私がおばさんになったからか。
しかし、年をとるのも悪くないかなと思わせてくれました。
若い頃特有の倫理を無視した自己中のこじらせさん、自分を特別な存在と思うあまり道を踏み外してしまうことがあっても、復元できる。30代までなら可能でしょう。
そして、中年期になると、自分の過去も含めてさらけ出すことができるような「親友」なんて、できるわけない、やっぱり学生時代の友だちが一番、、、なんていう人いますが、大人って大人なりの「友だち」が作れる創れる、それが手練れの大人ってものなのです。、、、ということが確認できたような気がします。そして過去の人への思いが強ければ強いほど、会わないでいることができるのも大人なのです。
全編トロイメライのメロディが印象的。たまに歩くたびにドキドキする(ちょっと怖いのです)青学の下のトンネル、確かに青山と渋谷をつなぐ通路でした。都バス内のロケっていうのも珍しい気がして、こんな会話してるようなたちって普通にいるかもと思わされました。
短編集というわりには3話の一つ一つを若干長く感じてしまったのは、例のゆっくりの平坦なセリフ回しのせいでしょうか。ともあれ3話この順番にはとても必然性がありました。
素晴らしき実験映画
前衛的な撮影スタイルと演技で成立している3話からなるオムニバス。
濱口監督はこんな作品までも撮れたのかと驚く。会話劇が中心なのは従来の濱口スタイルだが、難しく重厚な会話劇なのではなく、とても軽やかでウィットにとんでいるのが新生濱口といったところ。
ロメール やホン・サンスの語り口とロイ・アンダーソン的な演技を組み合わせたとでもいおうか、とにかく文句なしに面白いのである。
3話とも偶然と想像というタイトル通りの素晴らしさ。
これはスゴイ。
登場人物の言葉と言葉の豊かさ
3話のオムニバスです。ワンカットなのかわかりませんが、セリフ量の多さにアドリブもあるのかもと思いました。どちらにしても登場人物の豊富なやり取りがあるからこそ、作品の世界に入り込み、感情移入もしました。
所々吹き出して笑ってしまうようなやりとりの中に、励ましの言葉が散りばめられている。本当に面白かったです。
見ていて,とてもかゆい映画だったけれど,おおむね描かれている内容...
見ていて,とてもかゆい映画だったけれど,おおむね描かれている内容は深みがあって面白かった.プロットも時々驚きがあったり,自分の体験と共鳴する部分もあり,楽しみつつもいくつか思う事がある.3連休の息抜きにはちょうどいい映画で,視聴後に近所のタバコ屋で一服していると何となく幸せな感じがこみあげてきた.
気になったことは,1日目で描かれている不思議な魅力のある女の子と,それに振り回される男性のこと.この監督の他の作品でも,女性の不思議さ,神聖さ,分からなさに振り回される男性という描写がよく出てくる.作中に登場する女性のうちでも,男性と同じような合理的で自分をコントロール可能な主体として描かれている女性はとても分かりやすいんだけれど,その分かりやすい女性と対比する形で,分からない女性を描くことで際立って見える.今回は途中からその不思議な女の子の視点をとっていたのが面白かったというくらいか.彼らは彼らで悩みが深いのだと思う.自分は男性だけれど,女性と話しているときにいつも思うのは,何かしら悩みを抱えているときに知るべき対象が自分自身であるという事だ.対象がどうであるのかという事よりも,自分がどう思っているのかという事について考えている話をよく聞く.一方で自分の周辺の男性を眺めていても,自分のことを首尾一貫した意思決定をするとみなしていて,自然と外側に感心が向かっているようだ.この男性と女性の謎の周辺については,この監督以上に上手く表現できる人物を知らないかもしれない.おそらく他にもいるだろうから,知っている人は教えてほしい.
2日目では,オープニングのチープなやり取りに辟易したものの,その後の教授との対話のシーンが大きくしびれた.言語化することができない事を安易に片づけてしまうことなく,そこにとどまることを肯定するメッセージであると認識したけれど,結局教授はスキャンダルで追われてしまった.本当に肯定しているのかは謎のままではある.3日目では,初めのシーンが再現されたところで思わずうなってしまった.名前を思い出せないという事,思い出すという事が主題だったと思うのだけれど,結局最後に思い出した名前はどんな意味があったんだろう.むしろ名前なんてものが初めから存在していなかった,二人のやり取りは破綻することもなく続いていたんだろうにと思うけれど.
長いこと余韻に浸れる映画
短編小説を読んだ後にもう一度読んでみようかなと思うのと同じように、もう一度見てみようかなと思える映画でした。
傷ついて…人を傷つけ…面倒臭い女の子、感情の流出を避けるかのように言葉を発する小説家(教授)、過去の出来事に折り合いをつけたいと考えている(中年)女性。
この映画は自分が過去に感じた感覚だったり、あるいは関わった人達を思い出させてくれたりしました。懐かしかったり、切なかったり。それが嫌な感覚だったとしても、それはそれ、悪くはないな。
異彩で賛否分かれる、観た時は酷評次第に印象深く
2021年劇場鑑賞40本目 佳作 54点
上映初日に渋谷Bunkamuraにて行われた舞台挨拶で鑑賞
これは映画ではない、ただの会話劇で役者の棒読みも酷い、当方滅多に眠くならないのにちゃんと寝た。年間ワースト10入り間違いなし。
と、鑑賞数日は思っていた。
鑑賞から2ヶ月ほど経ってのレビューになりますが大筋気持は変わってない。けど色々な声を聞いたり思い返してみて、今作を真っ直ぐみるのではなく斜めくらいから観るとなんだか新鮮である種印象に残る映画体験だったなあとも思えてきた次第。
役者の棒読みはあえてらしい。知らんけど
またあの脚本ありきの会話劇から生まれる笑いは2021年邦画だとまともじゃないのは君も一緒や街の上でとはまた違う面白みがあったのは間違いないです。
映画好きや海外でこの監督のおりなすフィルムが評価されるのもわからなくはない、鬼才だとは思うよ。
けど免疫がないのかやっぱり今サイトの☆3.9はとても頷けない、それだけです。
偶然から始まる想像、あるいは偶然を想像すること
面白かった。非常に良くできた脚本だと感じた。
長いワンカットの会話でずっと見続けられるシーンを撮れているのも凄いし、その先にさらなる展開が待ち受けているのが、見応えがあった。
コントと言われれば確かにそう感じる設定や展開ではあるが、コントというジャンルでは括られない、人間と人間のグシャグシャな感情のぶつかり合いを見ているような感じがした。
きっとこの映画では、このシーンのこのセリフで観客を笑わせようという意図を持たずに、誰もが真正面からぶっ飛んだ登場人物たちを演出し演じていたのだと思うし、だからこそ笑えてしまうような作品になったのだと思う。日常でたまに起きる、ありえないような笑えてしまうことを体験するような感覚である。真面目だから面白い。
ただ笑えてしまうだけではなく、悲喜交々を感じることが出来て、最後は曖昧ではなくちゃんと物語がひとつの結末を迎える構成が秀逸だった。
そして「偶然と想像」というタイトル通りの一貫したテーマ性も感じた。やはり何を主題としているか伝わってくることって凄いことなのだなと再認識した。
各短編に共通して存在する、登場人物がカメラ目線で発言するカットなども効いていた。
ただ、絶対に日常では言わないようなクサイセリフがポンポン出てくるのでむず痒く感じる部分も多々あった。
淡々とした口調が、そのクサイセリフのクサミを取り除いているのか、あるいは増長させているのかは分からない。
素晴らしい映画〝体験〟
ドライブ・マイ・カーでは少し退屈な時間を強いられたのだけど、今作は逆噴射も逆噴射で、謳い文句通りの素晴らしい映画〝体験〟だった!
九条の古びた小さな劇場で、その日ラストの興行に席を満席にした、映画好きの方達と、素晴らしい時間を共有できた!繋がれた!と正に実感できたと、忘れられない体験でした!
「会話にリズムがあるでしょ?」
全編食らった!
1話目
ちょっとダラダラ感のあるタクシー会話はそのダラダラ感が布石でした。まさかそういう話とは。そして、古川琴音ちゃんが可愛い!好き勝手喋りまくって、途中「なんか楽しくなってきた、会話にリズムがあるでしょ?」ときたか!そういう女性に弱いんだよな男は笑
2話目
1話目の終盤に、想像のシーンがあってグゥイネスパルトロウのスライディングドアを彷彿させる未来2つパターン手法だったから、それを踏襲と思いきや、それもなく。ただただ悲しい結末でしたが、研究室での二人の会話は救われる内容で感動。
3話目
これはもう戯曲!笑って笑って、最後に泣きました!最高の終わり方!
総括
日本に生まれて、日本語の会話劇ほんといいなぁ、と思いました!!
クスクスとゾクゾク
三つの短編、会話が中心に進んでいく。
会話ばかりだが、予測不能な展開と、登場人物の人間味に引き込まれる。
時折笑わせられ、観客と一体化している感覚はまるで舞台を見ているよう。
全編通じて、言語化できない、人間の心情を表現しているそんな映画が好き。ゾクゾクする。
そして、カメラ目線が、ドキッとする。話している内容は頭に入ってこないがアクセントになる。
ただ、3話でお腹いっぱい感はあり、最後の方まで集中力が持たなかったところはある。
人との出会い
偶然が生み出した、素敵な出会い、魅力的な出会い、導かれるような出会いに、偶然立ち合わせていただいた、そんな気持にさせてくれる作品でした。
舞台を観るような感覚で、出演者の方々の絶妙なやり取り、対話が楽しかったです。
思えば、人との出会いは全て偶然から始まるんだってことを改めて気付かせてももらいました。
もっと早く会えていたら、と思うような人との出会いも、今会えたからこそ大事な時間をシェアできてるってこともあるよなーと想像してみたり、今楽しい時間をくれている人たちに感謝の気持がわいたり、そんなきっかけをくれる映画でした。
明日も自分をやっていくしかない
偶然の積み重ねで今の自分がある。あきらめも後悔もあるけれど、それでも死ぬまで自分でいるしかない。そんな自分を心から理解してくれる人に出会うのは稀有なことだろう。大事な人と出会えうのも偶然。むしろ偶然でないことなどあるんだろうか。
大事な人と向き合い、自分と向き合う。セリフを読んでいるようでもある言葉のやりとりに集中した。
3話のいろいろな場面を思い返してしみじみ落ち着いた気分になる。明日も自分をやっていくしかない。
演劇というか朗読劇のよう
本当にタイミングが合わず、諦めかけていたけど、奇跡的にタイミングがあって見られました。
柏のキネマ旬報シアター。
千葉県では有名なミニシアターです。
未だに、ひとつ空きの席は良い。空調とかの都合もあるので、公開からだいぶ経つのに満席状態。
周りに袋菓子バリバリうるさくて嫌だったけど、売店でも売ってるし。まあ、こういうものなのだろうと。
映画はとても独特。
たんたんと棒読みさせるのは何故だろう。
会話劇であり、朗読劇のよう。
行間を読む力が試されている感じがする。
最後、どうしてあんなことしたのか?
映画見てから話し合えたら幸せですね。
ストーリーはまさに偶然ですね。
言葉にすれば、結構単純だけど、有り得なそうで有り得そうな偶然。
たんたんと話されると、本を読んでいるようで、逆に想像力が湧く。
そういうことかな?
オムニバス映画なのでひとつの話はとても短い。でも、キャラクターに不思議と感情移入が出来る。切なく、愛らしい。
満腹時に観ると辛いかも。あと、ある程度強制的に集中する環境で見るべきなので、スマホでながら見とかでも辛い。
まさに映画です。単館系の。
朗読劇的会話劇に穏やかに
「スパイ…」「ドライブ…」で濱口監督の映画に遭遇したが、巧みなセリフの言葉選びに、シナリオを買ってしまうほどハマりたい。
所謂紋切り型とされる台詞は、現代を映し出すこういった映画の特徴だよねぇ…ではない、日本人古来の歌詞言葉の、無駄の無い、研ぎ出した台詞達がここにはある。しかも、ずっと笑える。
また、占部房子さん河井青葉さんがキャスティングされた3話は、観終わった私の脳内で、二人で入念に仕込んだ朗読劇にも会話劇にも、コントにも変換され、久しぶりに穏やかに興奮した。
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