偶然と想像のレビュー・感想・評価
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数多の偶然から生まれ出づる真実
全作品の中で「偶然」がものすごい方向に物語を揺さぶった。
1話目、芽生子の「好きな人を傷付ける自分が欠陥品のように思える」だって、様々な偶然が重なった上で導き出した答えだ。それまで苛立っていた歩を劇的に変化させるほどに。自分自身に価値を見出だしていないと、なぜ自分なんかを好いているのだろうと疑問に感じ、拒絶してしまう。自己を肯定することから、相手を想うことが始まるはずなのだ。
2話目、瀬川の「社会的な評価に惑わされず、自分の価値を自分で抱き締めて生きていきなさい。例え難しくとも。(曖昧)」も同じ。社会でどれだけ罵倒されても、社会が知ってる私は私の中のごくわずかである。その「私」を生かすための努力は努力ではなく娯楽だ。私は目一杯「娯楽」に興じたい。
3話目に関しては、偶然が知恵の輪のように複雑に絡まり合って紡がれている。お互いを知っているようで知らなくて、でも知ろうと努力をしている2人。偶然が努力を生み出し、幸福感を与えている。たまには「努力」という言葉を信じてみてもいいかもしれない。
偶然が、努力を、事実を、その他数多なる感情を紡いでいる。否、偶然の結晶が事実なのだ。その事実を抱え、自分を抱き締めて、精進したい。
2人の役者が繰り広げる会話劇の緊張感が面白い
偶然とはなんと恐ろしいものだろう。そんなことを考えてしまう短編オムニバス。
基本的に2人の会話劇で話が進む。タクシー、オフィス、研究室、自宅…。2人の会話で話を進めるのは映画的になかなか難しい。カメラの位置や角度、アングル等を工夫しながら構成していることが伝わった。
でも、それよりも脚本と役者陣の演技がいい。3話それぞれの雰囲気は若干違うが、緊張感のある言葉のやり取りを楽しみ、その緊張感ゆえに起こるおかしさに笑ってしまった。ものすごく舞台で繰り広げられる演劇的な鑑賞だった。2人の会話劇中心だったことにも納得。
どんでん返しほどではなかったが、少し意外な展開が待っていたことも演劇的。「ドライブ・マイ・カー」を観た印象だと濱口監督は雰囲気づくりのうまい監督と思っていたが、どうやら自分で話を作った脚本で撮るのが相性いいのかもしれない。
脚本としては、同級生と再会する女性の話、役者としては身勝手で嫌な女の役を演じた古川琴音がよかった。観た後に印象に残ったシーンやセリフを語り合いたい欲求に襲われた。誰かと一緒に観に行くことをオススメする。
風景の切り取りが良い
偶然という状況で発する言葉が人間を描写する。
元カレへの身勝手な心情!
セクハラに身構えながらも真摯に応じる教授、そして制御できない自分!
想いを寄せた高校の同級生との再会!が別々にそれぞれの感情を呼び戻す。
(英題) Wheel of Fortune and Fantasy
ベルリン国際映画祭で審査員グランプリを受賞した3つの物語から成るオムニバス形式の人間模様を描いたヒューマンドラマ。
少し難解だったけど、新感覚の会話劇って感じで面白かったです。
脚本が良かったです。
僕にもメールを送ってください
恣意的な偶然を感じさせないストーリーで3話とも面白かった。ほぼ会話劇なのに引き込む力がすごい。
一番はまったのは、第二話の『扉は開けたままで』。瀬川教授と交わした約束に奈緒が念を押すシーンでは、堪え切れず笑ってしまった。上品な雰囲気の劇場なので笑わないように我慢していたが、奈緒が教授に対して放った二の矢は強烈だった。朗読のシーンは何度も見てみたいというか、目を瞑って聴いて見たい。
『魔法(よりもっと不確か)』は、古川琴音に当て書きしたように感じた。不思議ちゃんのオーラをまとっているから、彼女の行動に妙に納得がいってしまう。
『もう一度』の展開には、びっくりさせられたが、他の章に比べると面白味に欠けたかな。
やはりスクリプトの妙
想像以上に思いっきり笑えて、やっぱ発せられ絡み合うスクリプトが絶妙で、知的だなーと─終いには感動。
正直、絵にはそれほど引きつける力を感じなかったし、音楽もシンプルなクラシックで、ほぼ会話で成り立っている作品集だったので、個々が長く感じたけれど、それでもずーっと面白かったです。長く感じさせないために、短編集という形をとった、と勝手に解釈。それが奏効して、3倍楽しめる映画に仕上がっていた気がしました。
演出も、プロチックなところから素人的なところ或いは台詞棒読み的なところ等々、これまでの濱口映画の集大成(もっともっと進化していくんでしょうけど─)といった様相で、これぞ唯一無二と断言したくなるほどに、シンプルかつ個性的な映画でした。
静かに、しかし深く感動した
「ハッピーアワー」「寝ても覚めても」「ドライブ・マイ・カー」に続く濱口竜介監督の新たな傑作。
これは心に刺さる3つの短編のオムニバス。
①魔法(よりもっと不確か)・・・親友と仲良くなった男性が2年前に別れた元カレだと気づき、彼と再会するが…
② 扉は開けたまま・・・落第し内定取り消しになった男子学生が大学教授を逆恨みし、ハニートラップを仕掛けようと主婦で年上のセフレ女子学生に教授の研究室を訪ねさせるが…
③ もう一度・・・高校時代に友人だった2人の女性が地元・仙台で20年ぶりに再会したが、話が噛み合わず…
「偶然」から導き出される真実は往々にして厳しいものだが、それも一つの通過点なのだろう。未来まで見えた気がした。
極上の短編小説を読んだみたい
餅浸りで鈍重に成り下がった身体をどっこいしょして、近くでかかってなかったので渋谷までわざわざ観に行った甲斐ありの傑作でした^ ^
濱口監督は「恋愛小説家」を飛び越えて「人間小説家」と呼びたくなる優しさに満ちた観察眼と表現力です。類稀な演出力、巧みな構成で役者たちが輝き出す
渋谷くらいしかかかってないけど、正月休みにオススメです🐈
必然の3部作
今年の締めはこの映画!と、観る数日前からわくわくしていた。シアターが暗くなって映画が始まる瞬間、2時間後には終わってしまっている…と早々と名残惜しさが。期待どおりの、濱口監督らしい3部作だった。
3つの物語に、直接の繋がりはない。登場人物も場所もばらばらだ。けれども、3つの並び方は絶妙だった(ぶつかり合い、誘いかけ、繋がりの修復)。すっと始まる第1話は、女友達との他愛ないやり取りが延々と続くと思いきや、彼女が乗ったタクシーと同様に物語は急展開、泥沼の一歩手前となる。親友、新たな恋の予感、元恋人…と相容れない3人。そこから再び、ふわりと予想外の展開へ。クラシカルな映画手法に、気持ちよくすっかり引き込まれた。そして、2話へバトンを繋ぐ。
第2話は、個人的には一番面白かった。第1話の反動のように、軽やかな可笑しみがあふれている。マイペースで捉えどころのない小説家兼教授を演じる渋川清彦さんが、とにかく良かった。彼はまったく揺るぎなく、周りがあたふたと振り回され、変化していく。打算から出会ったはずのヒロインは、会話を重ねる中で、自分の心の奥底を見出す。そんな高揚感もあってか、ちょっとした踏み外しが、唖然とするほどの大惨事を招いてしまう。
第3話は、偶然の再会に説得力を持たせるべく、ウィルスの拡散でメールやSNSが機能していないという設定がなされている。とはいえ、1話、2話と心地よく振り回されてくると、そんな作為的な設定も、すんなり受け入れられるというものだ。物語自体は、ある意味、最も穏やか。旧友との思いもよらない再会から、2人は今の自分の再発見や過去のやり残しに気付き、ぎこちなくもあたたかな共同作業に至る。
「ドライブ•マイ•カー」の家福が役者たちに求めたように、登場人物たちは感情を削ぎ落とし、淡々と言葉を重ねて物語を紡ぐ。だからこそ私は、五感を研ぎ澄ませて彼らの感情を押し図り、自分ならどうするだろうと想像する。彼らが偶然出くわすシチュエーションは、実生活では遠慮しておきたい悩ましさに満ちている。自分はスクリーンの彼らを眺めていればよい、と気楽に高みの見物をしていたはずが、いつしか物語に引き込まれ、そこに居合わせているかのような切実さが胸に迫る。そして今もなお、ふとした時に彼らを思い返し、語られなかった背景や、その後の成り行きを想う。映画が、日常に重なり溶け合っていくのは、つくづく幸せな体験だ。
本当に偶然なのだけれど、この映画を観る直前に、古い友人から久しぶりに連絡があった。年賀状がいらなくなるくらい近況をやり取りし、ふっと軽やかな気持ちになった。この偶然は、本作との出会いとも相まって、これからの自分に、きっと欠かせない出来事になっていくと思う。
劇場で静かな笑いが起きた
濱口監督のメソッドに感情を排して淡々と読むというのがあるらしいんだよ。それをやってきたのかなって思った。
三本のオムニバスで、タイトル通り「偶然、こんなことがありました」っていう話で人物を描いてんのね。みんな役者さんは感情を入れずに淡々と演技すんの。
話ももちろん面白いんだけど、スゴイと思ったのは、どの短編も必ず一度は笑いが起きるんだよね。それも「笑わせよう」ってわざとらしい場面じゃなくて、自然に「確かになあ」ってところで笑いが起きる。当然、監督は狙ってやってんのね。そこのワザが見事だと思った。
《魔法(よりもっと不確か》では、情報量の差で笑いを取るんだよね。
観客・古川琴音・中島歩……古川琴音と中島歩がかつて付き合っていたことを知っている
玄里……知らない
って状況を作っておいて、それで古川琴音と玄里がお茶してるとこに中島歩が通りがかって、玄里が喜んで呼んじゃうっていう。
《扉は開けたままで》と《もう一度》は驚き。「それ、言うか」っていう一言で笑いをとってくの。
三本どれも面白かったけど、ちょっとカッタルくはあるの。一本終わるたびに「もうエンドロールでもいいな」と思ったから。淡々とした演技だからしょうがないね。
《魔法(よりもっと不確か)》のオープニングは、古川琴音がモデル役で撮影されてて、玄里がヘアメイクなんだけど、観たとき「これならむしろ玄里を撮れよ」と思ったね。
そのあとタクシーで二人で話すんだけど、「これテキスト、男の人が書いたな」って感じたの。なんでだろ。淡々とした演技を玄里が徹底できてなかったとか、そんなところなのかな。
あと三本とも、二人で芝居をするんだよね。どのシーンも基本は二人。動きもなくて、でも、会話でもたせるのが脚本すごいと思ったよ。
あの小説は読んでみたい
演劇的シチュエーション
言葉の棘があちこちに突起していて普段からキツい言葉に慣れていなければ攻撃力の強さにメンタルがやられてしまう可能性アリ
場面展開が必要最低限なので生の舞台で観た方がもっと没入感を感じられるかも知れない
3作共小説を読んでるかの様な会話劇が繰り広げられる
2作目のメルアドのタイプミス、3作目の宅急便の伝票の氏名共、非常に見え難かった 多分キモになる様なポイントだから画作りに工夫が欲しい
期待していた程ではないのが悲しい・・・
ファンタジーが成り立つところ
濱口竜介監督の作品は2作目。
東京芸術大学出身というのが気になってる。
今回の映画は、棒読みぽい台詞の流れに小津安二郎を連想させたり、ドライブマイカーのチエホフを思い出させた。多分、監督自身が信じている世界であることを感じる。
パンフレットに、エリックロメールの名を見て、然もありなんとやけに合点がいった。
日本語理解不能の人が「偶然と想像」を字幕で理解する感覚は、私が見たエリックロメールの映画に通ずると。
(けど、ロメールの方がもっと生っぽさがあった・・)
個人的には、「第3話もう一度」の話が良かった。互いの「もう一度」の再会を脱構築する展開は、とても楽しい。
果たして、初対面の相手(同性)に、私はあそこまで、心を開くだろうか? けど、開いたら(拓いたら)きっと世界は楽しくなる。
パンフレットの表紙に「wheel of fortune and fantasy」を見るに、想像=ファンタジーなんだということにたどり着く。
意味の世界は、それぞれ個々の人間の脳内で形になる。
そもそも、映画はそのようにできているのだ。
ひとつ、世界がより幸せになる映画の手法を目撃した。
色々とこちらの意表をついてきて
思っていた以上に楽しい映画だった。タイトルとの絡ませ方も三篇三様で手を抜かない仕上がりにも好感を覚える。
台詞は比較的普通に思えるシーンもあるので(タクシーの中やバスの中)、やはり意図的なのだろうか。
(at jig theater)
こういう機会は非常にありがたい。
人ば自らのコミュニケーションや行為の主体ではなく、言葉は、主体を...
人ば自らのコミュニケーションや行為の主体ではなく、言葉は、主体を載せ、遠くに連れて行くことを、こんなに見事に描いたものはないだろう。
偶然の怖さと人間の本性
恐らく本年最後の映画鑑賞になるでしょう。タイトルは「偶然と想像」。最近の作品では「ドライブ・マイ・カー」がよく知られている濱口竜介の最新作で、短編3本からなります。この後に4本分の短編集を制作して完成らしい。「このままいくと、最悪の結果になるかも…」と言う不安をかき立てながら、最終的には軟着陸すると言うお話。
1本目は古川琴音演じるモデルとヘアメイク、モデルの元彼という構成。2本目は芥川賞を受賞した大学教授と、彼にハニートラップを仕掛けようとする学生(ただし人妻で子供あり。同じゼミの学生とちょっと不倫中)のお話。3本目は仙台に高校の同窓会で帰郷した女性と、たまたま駅で出会った同級生と思しき女性の一時の出会い。ほんのちょっとの偶然が思わぬ事態を引き起こす。車中や家、大学研究室などの閉じられた空間の中で言葉を重ね、それが時にこれまでひた隠しにしてきた本性を浮かび上がらせたりもする。
登場人物たちが胸に秘めたもの、ちょっとした嘘が、これまで大切にしてきた人との関係性を壊してしまうかもしれない、そんな危うさが日常に転がっていることを痛感せずにはいられない。それは少し前に観た「ドライブ・マイ・カー」と通じているところでしょう。
この作品は上映館も少ないけれど、何故か2室で日に7回も上映している。昨日は午後3回目の上映で観たが、ほぼ満席で若い人も多い。特に宣伝がされているというわけではないのに、良い作品については、口コミでその良さが広まるということか。
映画の可能性
今年見納め映画。
なんとまぁ、満席だった、とはいえ、一つ空きなのだが、この映画館で満席は久しぶりの事で、さすが御用納めとビックリしたのと、話題性もあるのか?と思った。
色々な偶然とそれぞれの想像が織りなすという画像作りは、非常に面白く映画の可能性を感じたし、映画って改めて、奥深く、そしてこういう映画は好きだなぁ🥰
で、私は3話が好き。何てったって笑いがあった。へー、そんな勘違いが今時あるのか〜、と思いながらも、全く偶然に関わった人と、あんな風に時間や思いを共有出来たのなら その一瞬の人生は楽しそうだし、しばらく幸せな気持ちでいられそうだ。私も欲しいな、そんな偶然。
アヤ役の役者が断然光る。声とその佇まい、ものすごく自然で日々の生活を 少しのクエスチョンを持ちながらもキチンと暮らしている感じを演じていたのがとても良かった。
俳優の力が試される会話劇
セリフセリフの連発で、一つ間違えれば眠くなるし、映画でなくてもいい?と思われてしまうくらい、場面変更も少ない。
しかし、しかし
俳優人のセリフがうまく感情の伝え方が観ている人に響いてくる。
3つのオムニバスだが、全てがまさにタイトル通りの偶然と想像の世界。
強いていったら一つ目が物足りない。
古川さん、中島さんの演技が良かっただけにもっと長い時間見たかった。
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