川っぺりムコリッタのレビュー・感想・評価
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死んだ後、魂はどこに行くんですか?
久しぶりに映画を観ながら何度か嗚咽を堪えた。静かで柔らかい時間が流れているのに、どこかで時折その時間は淀んでいた。それは、息苦しい世間の生きづらさなのか、この先の自分の人生の不安からなのか、なんなのか。
そして画面からは、そんな詰まってしまった流れを押し出してくれるような、なにかが、こちらの気持ちを洗ってくれる。例えば、美味そうな炊き立ての白米であったり、風呂上がりの一杯の牛乳であったり、取れたての野菜であったり。そうか、食は生きていく基本だものな、と気付かされる。
そんな一息をついたところに届いた、父の死亡通知。そこからの展開がまあ、揺さぶられた。それも、しっかりと食でこちらの心を満たしたあとっていう手順の手練れぶりには頭が下がる。しっかりとメッセージを聴く準備ができてから、じゃあ行くよ、って感じで重いものをどんどん投入してくるのだから。いのちの電話、喉ぼとけ、捨てられた家電の山、河原乞食、七の段のおまじない、隣のばあさん、墓石の訪問販売、空、雲、ナメクジ、、、、。意味なさげで意味ありげで。「はい、いのちの電話です」と聞かされた時の衝撃はこちらも同じだった。そして亡夫の遺骨。満島ひかりのあの性交は、稀にみる崇高な性交シーンだった。とても愛にあふれ、尊厳の気高さに圧倒され、僕は涙を流してしまっていた。そして、じんわりとしみこむしみこむ、おまじないような「せつな、たせつな、ろうばく、むこりった」。むこりったとはささやかな幸せという意味もあるらしいが、この映画にはそんなささやかな幸せを得て、生きていることを存分にかみしめている人たちがいる。この舞台が浄土真宗の根強い富山(おくりびとの原作もここ)っていうのもまた意味深い。仏教には「草木国土悉皆成仏」という教えがあるが、いつのまにかその言葉をかみしめていた。
「お弔いなんて、残された者の癒しの儀式。」という。そう、生きている者が勝手にケジメをつけたいだけなのかもしれない。だけど、そのケジメをしないと前に進めない者もいる。曇りがちだった人生を、晴れやかなるものにする準備のように。
と、こうして家でレヴューを書きながら、僕は塩辛でご飯を食べている。たまらなく美味い。生きているって感じている。
(ところで、エンドロールで見つけたが、薬師丸ひろ子はどこにいたんだ?)
役者が良い
「かもめ食堂」から雨後の筍のように"丁寧なライフスタイル"映画がボンボン公開されて、
果たしてこの監督がどれだけ関わってたのかも知らないが、もうお腹いっぱいになって見なくなりましたが、
今回、久々にていねい映画を。
言ってる事は当たり前の事で、描かれているのも割と当たり前の範疇だったのですが、嫌いになれない一本でした。それは、キャストがクセもの揃いだったからかもしれません。
狂気を孕んだ吉岡秀隆!
社長なのにマスクせずイカの上で喋りまくる緒方直人!
この二人は役を入れ替えても面白い作用があったと思う。
松山ケンイチの演技にも、もらい泣き。
江口のりこをたったあれだけのシーンで贅沢使いしてたり。
たま(さよなら人類)ぽい音楽はあからさまであまり好みではないけれど、良い時間を過ごせました。
「川っぺりムコリッタ」って、語感いいなぁ~。
ムロツヨシさん演じる嶋田のキャラが面白い。とてつもなく図々しいんだけど憎めない。
松山ケンイチさん、満島ひかりさん、吉岡秀隆さんもそれぞれ個性的で面白かった。
ご近所付き合いが希薄になった現代において、この感じは羨ましくもあります。すき焼きのシーンは笑えた。お葬式のシーンも好き。
誰もが様々な過去を抱えながら、それでもささやかな幸せを見つけながらなんとか一生懸命に生きている。
「ムコリッタ」って仏教の時間の単位らしいが、この独特な緩い感じの映画にピッタリの語感だなぁ~。
近い
お隣さんとの距離感が
50年前くらい
さかのぼってます。
いつから
知らない人とは
話さないように
なったんだろう。
すき焼きを
皆で
食べるシーンが好きです。
呼ばれてないのに
集まってくる…
虫が鳴くお堂で
坊さんと島田さんの
やりとりも
なんかいいです。
どうしてるかな。
あいつ。
薬師丸さん
どこにいたんだろう…
小さな喜びをひと匙で笑顔が生まれる
荻上直子さんの小説を読んでとても良かったので、延期してからずっと楽しみにしていた映画です。観れて嬉しかった。
白米ときゅうり、トマトにイカの塩辛、なんて美味しそうなことか。俳優さんたちが素直に頬張ってモグモグしてる姿を見ているだけでも笑顔になるというか、あたたかさが伝わってきました。個性豊かな住人たちの会話にクスッとしたり、切なくもなったり、ゆっくりとした時間が流れていくのが良かった。
小説では冒頭の方から主人公山田の過去や境遇について説明があったけど、映画では中盤や後半に語られていて、無口な男の子が山田と少しずつ距離をつめていくところとかも、映画では始めから男の子が喋っていたりとアレ?となったけど、映画では違う入り方にしたようですね。それは自然で良かったんですが、小説版の中島さんが好きだったので、彼女とのエピソード(山田が仕事で手を切っちゃうところとか)が減らされていたのはちょっと残念。彼女の静かで真面目な雰囲気がとても好きです。社長さんの言葉もじんわりする。ああいう気にかけてくれている人がいるっていうのは大事なんですよね。あと市役所職員の堤下さんも好きです。素朴で誠実なところが行き場をなくした人たちの救いになっている。そんな人たちがいるから、小さな喜びも生まれるんだと思う。
私も小さな日常の喜びを大切にしていきたい。自分がいなくなったとき、一人でもさびしいと思ってくれる人がいたら幸せですね。
味わい深い作品
場面はほぼ固定で舞台向きな感じ。
登場人物のキャラが皆、際立ってる。
ムロツヨシは相変わらず、良い味。
だけど、あまりの図々しさにイラッとしました、、
ある食事シーン、子供の方が気を使ってるという、、
まあ子供並みの無邪気さが
バリケードを剥がしたのでしょうが。
見終わった直後より、数日後の方が思い出して反芻しました。
うーん...
うーん、うーん…
こちらの監督のいつもの感じは、
ちょっと飽きちゃったかもなー。
狙い過ぎなんだよなー。
テーマはステキだと思うんだけど、
演出が好みじゃないんだろうな…。
寓話とリアルのバランスが悪い。
もっと、リアルよりで良かったなー、
吉岡秀隆親子の感じとか、
宇宙人のくだりとか、最後の行進のとか、なんだかなぁ…
ご飯を美味しく炊く才能
とくに事件が起こるわけでなしドラマチックな展開があるわけでなし、コメディーでもなし。前科者が淡々と日々を過ごすだけの映画。
私は前科者では無いけれど、昔この映画の主人公と似たような貧乏生活をしてました。
だからかもしれないけど最後まで飽きずに観ることがてきましたが、人にオススメとかはどうかなぁ?
ほんと淡々としてるのよ。
良い作品だとは思うけど感動するわけでなし、面白いわけでなし、見終わってスッキリもしないし。
なかなか不思議な作品だとおもいます。
たぶん観おわった人の多くが白ご飯を食べたくなるのではないでしょうか?めっちゃ美味しそうでした。
今も一人暮らしなのでね、ご飯を美味しく炊く才能は本当に羨ましく思います。
イカ宇宙人
まか不思議なお話しで、感想がすっきり言葉になってまだ出てこない。
数年前に親を亡くしたときに思ったこと
「人生にこんな悲しみが用意されているなんて。多くの人がこの道を通っているなんて。」
普段口にはしなくとも、その悲しみを抱えこんで生きる人たち。
野菜を育てて細々と暮らす。遺骨を愛おしむ。捨てられた電話器の受話器をとり続ける。宇宙人と交信する。
それぞれに死と向き合う。その姿をお互いに決して否定せず、毎日手を動かし、食べて生きる。
じんわりと励まされる。
ほのぼの映画の中の大切な言葉
出所した主人公が人々の暖かさに触れる映画
こういう映画は締め方が難しいが、しっかりとまとまっている。
平坦がない田舎のほのぼのシーンが続くのに不思議と飽きがこず、魅力にのめり込んでいくのは脚本と監督の演出のなせる業。
松山さんは流石の演技力。過去のある主人公をうまく表現していた。
緒方さんの言葉は沁みる。つまらない一見マンネリも積み重ねた日々が信用になる。
柄本さんの市役所職員も素晴らしい。
怒りたくなるし、怖い仕事なのに。頭が下がる。
ムロさんの後半の言葉。本当にそう思う。自分はどうなんだろうか?と考えさせられる。
しかしいい街だ
久方ぶりの邦画心地でした。
いやはや全く期待していなかったのですが“松山ケンイチってやっぱ良いよね”と言いたくなる作品です。
ムロさんは通常かなと思ったら裏があったり、満島ひかりの割烹着が色っぽいなと思ったら裏があったりで、非常に楽しめました。
何よりも出演者が豪華過ぎて、、緒方直人・柄本佑・吉岡秀隆など。久しぶりに、江口のりこさんの用法・容量が守られていてグッと来ました。笑
公衆電話、お墓(魂の形?)、お風呂など色々、暗喩というかメタファーがありそうです。
最近、まったりした邦画観てないなぁーと言う方は是非ご観賞下さい。損はしないと思います。個人的には、「護られなかった者たちへ」に本質的に似たテーマかなと思いました。
是非映画館で!!(あの齧る音は映画館こそ!!)
あんな葬式で送ってほしい
登場人物がみんな怪しくて、信じていいんだろうかと心配してしまう。
昔ながらの長屋みたいな生活。助け合いながら、時にはけんかしながら家族みたいに生活して行くんだな。
いいお葬式でした。
暖かく優しい物語
淡々と進む物語の中で、個性的な登場人物たちが、それぞれの痛みを抱えながらも、小さな幸せを細かく見つけて生き抜いていく様が丁寧に描かれている。松山とムロツヨシが一緒に食卓を囲んで食べるシンプルなご飯さえとても生き生きと描写され、実に美味しそうである。無かったことにしていい人はいない、淡々と積み上げていく単調な日常の先に何の意味があるのかはわからない、でも毎日コツコツと積み上げていった人にしかわからないものがある。派手さはないが、個々の役者の演技力、じんわりと染みるセリフに、見終わったのちほんわりとした気持ちになれる作品。
食べる、働く、育てる、怒る、泣く、笑う、生きて行く
かもめ食堂の監督作だから、どんな美味しそうな料理が出るのかと思ったら、まさかの白米!
もう、おにぎりですらない
でも、この白米を訳あり松山ケンイチと、空気読めないムロツヨシという最強の二人コンビが食べると美味しそうなんだ☺️
何かしら抱えた人々が、近すぎない距離を保ちながら寄り添い生きる日々の暮らし
なにも解決しなくても、ただ毎日を懸命に生きる尊さが、川を渡る風や流れる雲、木に降りかかる雨や炊き立てのご飯の白さから伝わってくる
生と死と、いわゆるルートから外れた人々を描いているから、かもめ食堂のイメージで見に行くと、あれ?となりそう
ただ、監督の持ち味のユルいほんわかした空気感と、美味しい料理は健在
脇役まで豪華な役者陣がみんな魅力的で、2時間あっという間でした
個人的に、亡き夫を愛し続ける満島ひかりが印象的だった
健気な未亡人という綺麗事じゃなく、生身の女として美しかった
ラストシーンを彩るエンディング曲もよき😊
ご飯は誰かと一緒に食べた方が美味しいよ、というセリフが、鑑賞後の心に余韻として広がる映画でした
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