フォーリング 50年間の想い出

劇場公開日:

フォーリング 50年間の想い出

解説

「グリーンブック」などの俳優ビゴ・モーテンセンが監督デビューを果たし、自身の親子関係を反映させた半自伝的な脚本をもとに描いたヒューマンドラマ。航空機のパイロットであるジョンは、パートナーのエリックや養女モニカとロサンゼルスで暮らしている。ある時、田舎で農場を経営する父ウィリスが認知症となり、引退後に住む家を探すためジョンのもとへやって来る。ジョンは思春期の頃から保守的な父との間に心の溝があったが、認知症で過去と現在の出来事が混濁する父と向き合ううちに父子の50年間の記憶がよみがえり、不器用な父の秘めた思いに気づいていく。モーテンセンが自ら息子ジョン役を務め、脚本と音楽も担当。父ウィリスを「エイリアン2」のランス・ヘンリクセン、若き日のウィリスを「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」のスベリル・グドナソン、ジョンの妹サラを「マイ・ライフ、マイ・ファミリー」のローラ・リニーが演じる。2020年・第73回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション作品。

2020年製作/112分/カナダ・イギリス合作
原題:Falling
配給:キノシネマ
劇場公開日:2021年11月12日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第73回 カンヌ国際映画祭(2020年)

出品

カンヌレーベル「初監督作」
出品作品 ビゴ・モーテンセン
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(C)2020 Falling Films Inc. and Achille Productions (Falling) Limited· SCORE (C)2020 PERCEVAL PRESS AND PERCEVAL PRESS INC. · A CANADA - UNITED KINGDOM CO-PRODUCTION

映画レビュー

4.5傑作『インディアン・ランナー』の精神的続編か。

2021年12月31日
PCから投稿

『ファーザー』にも通じる、認知症と有害な父性についての物語だが、本作で監督デビューを飾ったヴィゴ・モーテンセンの実体験がベースになっているからか、とてつもなく切実で、「語るべき必然性」がほとばしる人間ドラマになっている。

ヴィゴも主演といえば主演だが、むしろメインを張るのは父親役のランス・ヘンリクセン。旧態依然とした強権的な父親が、価値観をアップデートすることも生き方を変えることもできないまま、家族にとっての厄介者になっていく。この映画の魅力は、そのうんざりするような父親像を克明に描写しながら、成長物語でも家父長制批判でもない、グレーゾーンにとどまる勇気を持っていること。

この父親を持つことは家族にとってほとんど呪いだが、多かれ少なかれ家族には呪いという側面がある。どれだけ絶縁したい相手でも、親の世代は老いていき、納得ができなくとも、見捨てることはできはしない。そうやって家族とは否応無しに続いていくものではないかという命題が、ありのままに綴られている。この温度感の作品はなかなかないように思う。

あと、まあ鴨ですよ。子供と鴨という人生最良の思い出パートを、これだけ奇妙に歪んだユーモアで描いたヴィゴは只者ではない。もうひとつ付け加えるなら、ショーン・ペンの監督デビュー作『インディアン・ランナー』でヴィゴが演じた男が、そのまま老人になったのがランス・ヘンリクセン扮する父親に思えてきて、直接の関連はなくとも精神的続編に感じられるので、傑作『インディアン・ランナー』とセットで観てもらえるとなんだか嬉しいです。

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村山章

4.5一人の才能あふれる監督の船出に祝福を

2021年11月15日
PCから投稿

ヴィゴ・モーテンセンがこれほど素晴らしい作品を作り上げるとは。自伝的要素が強いからか、一つ一つの描写にしっかり想いが籠っていて、一人一人の登場人物にもステレオタイプに陥らない多様性が煌めいている。特にランス・ヘンリクセン演じる父親像ときたら、口を開くと罵詈雑言や悪態の嵐。その上、自分が悪かったとは決して謝らない。となると周囲の人間は大変だ。グッと耐えつつ、こらえ切れず涙を流す者がいる。苛立って声を荒げる者もいる。だがそんな辛辣な描写の後にヴィゴはそっと過去の柔らかな記憶と美しい景色が移ろいゆくさまを詩的にコラージュする。そこに広がっていく人間というちっぽけなれど奇怪な存在の”奥行き”。本作には人間の表面的な部分を撫でるのでなく、観る者をその奥底へと導き、もっと知りたいと、手を伸ばさせる力がある。優しさがある。それはテクニックを超えた、ヴィゴの人間的な慈しみから溢れ出すものなのかもしれない。

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牛津厚信

3.5Highly Personal Drama from Mortensen

2021年11月2日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

Aside from Lord of the Rings, I have always had mixed feelings about Mortsensen's acting style—or at least towards the films he appears in. But his directorial debut is among some of the finest dramas in recent memory. Going along with the actor-turned-auteur trend of building a story around America's homosexual cultural revolution, Mortensen and his actors go places where woke conversation won't.

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Dan Knighton

3.5【保守的思想で、口が悪くレイシストでもある認知症になった老いた父を、同性愛者である息子が面倒を観ようとした理由。そして、父の意志を尊重したラストも印象的な作品である。】

2023年5月8日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

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幸せ

■同性のパートナー、エリックと養女と暮らす航空機パイロット・ジョン(ヴィゴ・モーテンセン)のもとに、認知症を発症した父・ウィリス(ランス・ヘンリクセン)が訪れる。
 超保守的で我儘な父との間に幼い頃から距離を感じていたジョンだったが、認知症のために過去と現在が混濁する父と向きあううちに、徐々に50年間の記憶が蘇る。

◆感想<Caution!  内容に触れています。>

・中盤までは、ランス・ヘンリクセン演じるウィリスの認知症とは言え、品性の欠片もない言動に辟易する。
ー 逆に言えば、ランス・ヘンリクセンの演技が凄いのであるが。-

・その姿に諦観を持って対応するジョンの姿。
ー 認知症の為に、現在と過去が混濁した父が一瞬正気に戻って、ジョンに問うた言葉。
  ジョンは躊躇いつつ、”HYPER"(過干渉)と答えるシーン。
  ウィリスは”そうだ”と答える。
  ジョンが父を心配したが故に、父が愛する住処から自分の元に引き取ろうとしたことに、ウィリスは、強く反発していたのである。-

■確かに、父ウィリスは傍若無人な人生を送って来たが、彼はジョンが幼き時に鴨を撃った時に共に喜び、鹿に対して銃弾を撃てなかった息子に”良いんだ”と優しく言ってくれたのである。
 そして、父ウィリスは自分の意思として愛した家族たちと過ごした家で最期を迎える事を望んでいたのである。

<今作は、そんな父の想いを理解し困惑しつつも、父の願い通りに父の愛する居場所で最期を迎える事を許容した父と息子の物語なのである。>

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NOBU
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