バリー・シール アメリカをはめた男 : 映画評論・批評

バリー・シール アメリカをはめた男

劇場公開日 2017年10月21日
2017年10月17日更新 2017年10月21日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー

ダグとトム、二度目のタッグが狂騒的時代を豪快に駆け巡る

ダグ・リーマンは変幻自在な映画監督だ。決して型にはまらず、作品ごとにその題材に最も適した映像の質感、テンポ、語り口を見つけ出す。まさにゼロからイチを生み出すタイプ。きっとトム・クルーズもそんな彼に惚れ込み、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」に続く二度目のタッグを切望したのだろう。そうやって織り成された映画だからこそ、前作とは全くタイプの違う、社会派とコメディの狭間を勢いよく駆け抜ける快作が誕生した。

ことの始まりは78年。旅客機パイロットのバリーは、CIAエージェントの誘いを受けて、民間人ながら南米諸国の上空を飛び回る偵察任務を請け負うことになる。この腕前が高く評価され、今度は武器輸送にも着手し、さらに現地では麻薬王の依頼を受けてドラッグを機内いっぱいに詰め込んで米国内へ緊急密輸。そんな役回りをこなす度にバリーの身には巨万の富が転がり込み、その本拠地、アーカンソー州のミーナという小さな町は異様なほどの経済発展に見舞われるのだが……。

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 レーガン、ノリエガ、クリントン、ブッシュを始め、時代の顔ともいうべきビッグネームが次々と浮上する中、常にスクリーンを印象的に彩るのはトムのトレードマークともいうべき"自信満々の笑顔"だ。彼はどんなにビクついていてもこの虚栄のような笑顔を絶やさず、政府や麻薬カルテル、反乱軍に至るまであらゆる組織の信頼を勝ち得ていく。ただし表向きは従順でも、頭の中は目の前のピンチを何とかうまく切り抜けることで精一杯。自分と家族の身を守るためなら、政府や組織を出し抜くことだって少しも厭わない————そんな佳き家庭人の綱渡り的な人生にじっくり焦点を当てることで、本作は驚くほどタフで人間味に満ちた実話ドラマとなりえている。

各国の情勢をめぐる複雑な相関図も、ダグ・リーマンの手にかかれば分かりやすい説明で一発解決。タイトな編集とスピーディーな展開、それに70~80年代のテレビ番組やCM、家庭用ビデオカメラのテイストなども織り交ぜながら、この時代特有のギラついた映像質感を創り出している点もさすがだ。ちなみに、ダグの父親は、本作に連なる「イラン・コントラ事件」の真相解明に尽力した人でもある。息子もその血をしっかり受け継ぎ、本作にはジェットコースター的な娯楽性のみならず、時の政権の愚かさを鋭く突く皮肉や風刺も健在だ。こうした視点あってこそ、硬派で骨太な魅力が一層高められているのは間違いない。

牛津厚信

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