ハクソー・リッジのレビュー・感想・評価
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信仰の狂気が勝利する瞬間。
信仰における信念から誰一人殺さない。武器も絶対に持たないが、ひとりの国民として戦争には役に立ちたい。それも苛酷な最前線で。
劇中で困惑する上官たちならずとも、ちょっとおかしいんじゃねえかと思うだろう。誰一人傷つけたくないのに、戦争の大義は否定しない。そこには大きな矛盾がある。その矛盾を埋めようという努力を主人公はしない。ただ、現実を自分の信仰の基準に強引にハメ込もうとしている気すらする。
だから衛生兵になって、傷ついた兵士を助けたい。そう固く決意して、本当に実践してしまった男の実話なわけだが、クライマックスで男の信念に捻じ伏せられた。
「神様、あと一人助けさせて」と祈りながら、米兵も日本兵も治療し、救出して回る。偽善、と言えば偽善だと思う。が、偽善であってもここまでやれば善なのだ、と本作を観ていると納得せざるを得ない。まさに結果がものを言う。正しいかどうかはわからないが、正直感動した。
ガーフィールド、“日本”と“信仰”との奇縁
ハリウッドスターが日本を舞台にした映画に主演するなど、そうたびたび起きることではない。ところが何の巡り合わせか、アンドリュー・ガーフィールドは時をほぼ同じくして、マーティン・スコセッシ監督の「沈黙 サイレンス」では江戸時代に来日する宣教師、本作では沖縄戦に従軍する衛生兵として主役を張ることになった。
両作品のもう一つの重要な共通点は、どちらの主人公も敬虔なキリスト教者であり、その信仰心が試される受難が描かれていること。メル・ギブソンは監督作「パッション」でキリストが拷問される凄惨な描写で物議を醸したが、本作でも訓練時のいじめや地獄絵図な戦場での命懸けの救助活動が執拗に提示される。キリスト教圏においてあるいは自明なのかもしれないが、受難に耐え克服する熱情こそが信仰の本質である、より端的に言えば「受難は熱情と同義である」ということを、メルギブは諸作を通じて語っているように思える。
メル・ギブソンの執念が成し遂げた、誰も観たことのない種類の戦争映画
メル・ギブソンの執念を見た。溜まっていたものを全てぶちまけるように、観る側が恐れおののくほどの圧倒的な戦場を描き尽くしている。確かに激戦地で銃弾が、肉片が飛び散る様には凄まじいものを感じた。が、秀逸なのは「人命を奪い合うこと」以上に「人命を助けること」をここまでの壮絶さで描き切った点だろう。奇しくもガーフィールドがロープを駆使して崖から負傷者を下ろす様には『アメイジング・スパイダーマン』、あるいは信仰に生きる『沈黙』の役柄すら彷彿させられた。
また、本作は主人公の半生についてドラマを重ね、彼が「絶対に武器を手にしない」という信念を貫く根拠をじっくりと醸成していく。そこで絡まり合う父親像の素晴らしさをどう表現すれば良いのだろう。ギブソンは弱い者、傷ついた者にどこか優しい。彼自身、人間の底にある弱さを自覚しているからこそ、再起しようとする者にかくも特別な見せ場を用意せずにいられなかったのかもしれない。
理屈を超えた信仰心の崇高さと畏怖
本作は戦争についての映画ではない。実際に主舞台は沖縄の地上戦ではある。しかし、本作は戦争の何たるかについて描いた作品ではなく、一人の男の信仰心について描いた作品だ。彼の信仰を試される場として戦場が設定されているに過ぎない。
もっぱら映画の焦点は、アンドリュー・ガーフィールド演じるデズモンドの信仰を貫く姿勢に当てられる。戦場描写の凄惨さに関して『プライベート・ライアン』と比較されているが、内容に関しては、むしろ同監督の『パッション』を連想させる。どちらも信仰に殉じた男を描くという点で両作は同じ方向をむいた作品と言えるだろう。
宗教的信念により、訓練中も武器を持たず、そのため同僚から激烈な差別を受け、衛生兵として従軍を認められても、戦場で一切の武器を持たず、激戦のなか敵味方関係なく命を救い続ける。その姿は崇高さと同時に狂気をも感じさせる。パッションのキリスト同様、理屈を超えた自己犠牲の美しさと畏怖を描いた傑作。
メル・ギブソン監督作品の中では2番目に好き。
デスモンドが子供の頃と訓練の時に、運動神経の良さが出ていた。その伏線が戦場で回収される。
日本兵は殺人マシーンだ。命より大事なものが有るんだな、きっと。
デスモンドの家族や仲間たちが、やがて彼に協力するのでスカッとした。報われて良かった。
彼女との結婚式より自分のポリシーを優先しても、彼女は理解してくれていて、そのあたりのシチュエーションが本作の中で1番感動した。
ひどい(笑)
アメリカ🇺🇸映画らしく、1人のヒーローを描きたかったのだろぉが、昔の日本の刑事ドラマのように主人公だけ弾が当たらないとか、米軍が撤退するたびに何故日本軍があのロープを切らないのか等等ツッコミどころ満載(笑)!実際の戦闘を元にしたと言うがフィクションが過ぎる。
お前なしでは戦えない!! デズモンドが起こしたキセキ!
信仰を貫き、最後まで勇敢に仲間を護ろうとした兵士、デズモンドの信念が強く伝わるストーリーでした。
ハクソーリッジの崖の上から吊るした太いロープに結ばれた人の絆が込められていました。
グローバー大尉に認められたときのデズモンドはとても男気のある姿でした。
本当は、亡くなった兵士が英雄だと言い遺して他界したことを後に知ることが出来ました。聖書を片手にした彼が見る人たちに勇気を与えた作品でした。
これは戦争映画か?それとも・・
この作品はれっきとした宗教映画である。圧倒的なリアルな戦争描写の中にあって、人間の戦いの愚かしさ、神の恩寵、そしてそれを戦争のさなか実践する事の奇跡性の高さ、しかも実話としてそれが現実であったとこの救い。これらすべてが一体となってこの映画の気高さが強く印象付けられている。日本兵へのリスペクトもあってとても良かった。実話で無ければ映画としては満点である。
むしろ戦場以外で、繊細な内面を巧みに表現
メル・ギブソンが久々にメガホンを取り、アンドリュー・ガーフィールドがオスカー候補に。ともに表舞台から消えたように見えましたが、しっかり復活したんですね。
冒頭、負傷したドスに「お前を助けるからな」と声をかける兵士がメル・ギブソンに見えた気がして、カメオ出演か?と思いましたが、メルの息子のミロ・ギブソンが出演しているということなので、彼なんじゃないかと。一瞬だったので確証はありませんが。
「プライベート・ライアン」を超える戦闘シーンだとか、R15指定になった過激な殺戮シーンが注目されているようですが、正直言って期待を超えるものではありませんでした。多少なりとも、刺激を求めていた自分が恥ずかしくもあり、「そんな映画じゃなかったんだ」と思った次第です。
良くも悪くも、この映画はデズモンド・ドスの成し遂げた英雄的行動をフィーチャーしたもので、沖縄戦の悲劇とか、戦争のむごたらしさに焦点を当てたものではなかったようです。武器を持たずに戦場にいるということが、どれほど過酷なことかを強調するためには、すぐそばを砲弾がかすめ、死体が転がる白兵戦の迫力がリアルであればあるほどいいのでしょう。
過去の監督作「アポカリプト」や「パッション」には、目をそむけたくなる暴力シーンがありましたが、今作では、むしろおとなしめの描写に意識して抑えたんじゃないかと思います。
映画自体がやや長すぎることと、登場人物が多すぎて負傷した味方の区別が付きにくいことが残念な点です。例えば、奥さんとの恋愛シーンをもう少しサイズダウンして、その分戦場での味方との交流を濃密に描いて欲しかった。
とにかく、負傷した兵士を担いで戦場を駆け抜けるアンドリュー・ガーフィールドの姿に、胸が熱くなり、こみ上げてくるものがありました。「フューリー」なんかが好きな人にはおすすめです。
2017.6.26
1番リアルだったかも、、
戦争映画は割とみている方だが、1番リアルだったかも、、
しかも実話なの知らなかったからびっくり。さらに敵が日本人だったとは。。
第二次世界大戦の話で、舞台はハクソーリッジ(沖縄の前田高地)での戦い。
銃を持たずに戦場に行くとはどんな度胸なんだ、、
最初怖かった大将も、ドスがみんなからボコられたと知ったあとは優しかった。
ラストの大将を助ける場面では、絶対大将デッドエンドかと思ったらちゃんと生きのびててよかった。無駄な悲しみは味わいたくない。このエピソードはちゃんと実話らしい。
「あともう1人助けさせて」かっこよかった。
あと序盤でドスだけ見捨てなかった両足吹き飛ばされた人が生き残ってたのもよかった。
日本兵が手榴弾握りしめて米兵とくっついたシーン鳥肌たった。自分が死ぬとわかってる時どんな気持ちなんだろう、、
お父さんの方はPTSDに苦しんだっぽいけどドスはどうだったんだろう
信仰と狂気
戦争の中信仰により銃を持つのを拒否。衛生兵としての狂気の中活躍を描くメルギブソン監督。
アンドリューガーフィールドが苦手気味なんだけど、最近の活躍や、今作を無視する訳には行かない。ガーフィールドの見事な演技により涙する、実話。
宗教的欺瞞にあふれた作品。
メル・ギブソンの監督復帰作品として大いに期待しての鑑賞だったが、なんとも微妙な作品。
実話に基づく作品だが、それを前提にしても正直この物語には素直に感動できない。
主人公は敬虔なキリスト教徒。幼少の頃の経験から、人の命を誰よりも重んじる青年。そんな彼が戦場で敵味方を問わず人命救助に命をかける様を見れば感動するでしょという作り手の思いが常に透けて見える演出がまず無理。
子供向けと考えれば納得はできるが、本作は結構な残酷シーンもあり、あくまで大人向けであろう。
そもそも主人公が人命を何よりも尊重する人間であるならば、戦場に行くよりも人命軽視の極致である戦争に対して反戦運動をするのが筋ではないのか。にもかかわらず、彼は自ら志願して戦場へ向かう。
彼は戦場で仲間を命がけで救うが、その救われた仲間は治療を受けて再度敵を殺すために戦場に出ることになる。つまり主人公は間接的に敵の命を奪うことに加担しているのだ。たとえ敵兵の命をも救ったとはいえ、やはり人命を重んじるはずの主人公のこの行動には矛盾を感じざるを得ない。どうしてもその辺が引っかかって本作を楽しむことは出来なかった。
同じく敬虔なクリスチャンであるメル・ギブソンがこの物語に飛びついたのは容易に想像がつくが、宗教的欺瞞にあふれた作品としか思えなかった。
メル・ギブソン監督には過去作のアポカリプトやブレイブハートで圧倒的に魅了されたのだが、今作の演出はやたらと仰々しかったりと、いまいちの印象だった。やはりブランクが尾を引いているのだろうか。
テリーサ・パーマー
2022年9月23日
映画 #ハクソー・リッジ (2016年)鑑賞
#メル・ギブソン 監督、#アンドリュー・ガーフィールド 主演の伝記映画
良心的兵役拒否者として衛生兵で従軍し、多くの同僚の命を救い、名誉勲章が与えられた
舞台が沖縄の浦添だとは知らなかった
彼女役がいかにもな美人だった
信仰が狂気に勝った瞬間
1945年3月26日から始まった沖縄戦は6月23日に終結。浦添城跡は戦争中、日本軍からは「前田高地」、米軍からは「ハクソーリッジ」と呼ばれた。
ドスが銃を持たない理由は信仰心よりも、父を苦しめた戦争の象徴そのものであることと、そんな父を更に打ちのめした自分の行為を畏れ、また、恥じたからでもあるのだろうと思う。
心を守るために信仰するのか、信仰が心を守るのか、どちらが先かはわからないけれど、それが戦場において彼がパニックにならず、やるべきことが明確になった大きな要因なのだろう。
自分だけ安全圏にいて戦場にいかないことは国民として公平ではない、しかし銃を持って人を殺すより、傷を負った者を助けたい。彼の中では矛盾せず愛国心と博愛心が同居している。
それは他人にはなかなか理解しがたく、敵を殺めることのできない臆病者だと勘違いされるが、そもそも銃も持たずに戦場にいること自体がとても勇気の要ることなのでは?と思う。
実際、戦場においては人を殺すより、人を助ける方がずっと難しい。
ドスの祈りが皆に与えたものは、束の間の心の平穏。それはまさしく、信仰が狂気に勝った瞬間でもある。
きっとドスの助けた日本兵は他の米軍人には見捨てられたのだと思うけど、彼の行いは決して無駄ではない。きっとその行為を見て、改心した人もいるだろうから。こういう信念のある人が生き延びてくれて、本当に救われた気持ちになった。
武器を持たずに戦線へ…。 最高です。実話です。
デスモンド・ドスという男の実話が描かれている。
しかも身近な沖縄戦。前田高地戦線。
日本とアメリカの太平洋戦争での出来事。
旧日本軍の徹底した富国強兵の軍国主義が徹底された日本にアメリカ軍が日本国土の最後の白兵戦を繰り広げた。
クリント・イーストウッド監督「硫黄島からの手紙」、「父親達の星条旗」の延長線上にあるとても悲しい映画です。
沖縄戦というのは、歴史上日本の完全負け戦で時間稼ぎの戦争でした。
その中でアメリカ軍から見た戦線の映画です。しかも武器を持たずに戦線に出兵するデスモンド・ドスという衛生兵の話。
感動しました。
戦争反対!改めて思わせてくれる内容でした。
戦争映画の中でも優れた映画。
参考資料
YouTubeの「地獄の戦場と化した沖縄…悲惨な戦争の爪痕」で紹介されてます。
銃を拒み、衛生兵となって活躍した兵士の実話。 沖縄戦を描いているた...
銃を拒み、衛生兵となって活躍した兵士の実話。
沖縄戦を描いているため、複雑な気持ちになる。同じように思っていた人々もきっといたはずで、それでも戦わなければいけないのだから。
日本兵を含め、1人でも多く助けようとした。
あと1人、あともう1人と。
あの状況の中でこんなにも信念を貫き行動した人がいたと知り、胸が熱くなった。
戦争は絶対に起こしてはいけないものだけど、こんな想いで戦っていた人もいた、少しでも心が救われるようでした。良作です。
凄惨な戦場
特に前情報無く鑑賞。
戦争映画なのに主人公が「銃には触らない」と言い出してびっくりした。
主人公「人を傷つける銃には触れない」と主張するが、もちろん許されるはずがなく、命令違反で軍法会議にかけられるも、何とか自分の主義主張を通した主人公はついに戦場へ赴く。
舞台は沖縄・前田高地へ。
前田高地は激戦地であり、死屍累々、阿鼻叫喚、屍山血河、、、どの言葉もこの戦場を表すには生ぬるく感じるほどだ。
主人公は血と腐肉の舞い散る戦場を丸腰の状態で駆けまわり、負傷兵を救い出す。
もちろん勇気がないと出来ないことだし、常人には無理だと思うが、「アメリカンスナイパー」のように仲間のために敵を殺し、精神がズタボロになった兵士もいるわけで、、、
結局、自分が殺さなかった分、他の誰かにその重荷を背負わせているのでは、と思ってしまった。
どうしてもライフルに触らなくて他人に迷惑かけてしまうところも、良く言えば「確固たる信念がある」のかもしれないが、自分の生き方を優先し、絶対に譲歩しない「かなり自分本位な人間」ともいえる。
この映画の見どころはリアルな戦場の描写にあり、戦場での活躍譚や友情物語を期待する人には物足りないだろう
深く考えさせられる戦争映画
(2017年7月に劇場鑑賞した直後の感想です。ご参考までに)
世評の評判が良く、一見の価値ありと感じて、劇場に足を運んできました。
デズモンド・ドスという青年が、第二次大戦に志願兵として参戦するも、自らの信念から、武器を持たずに、負傷した兵士を救うということに力を注ぐという実話。
ここでは、彼を動かした「信仰」と、戦場となった「沖縄戦」に分けて感想を述べたいと思います。
【信仰について】
デズモンド・ドスの信仰するキリスト教には、「汝、殺すなかれ」という教えがあります。彼は、これに従い、戦場でも武器を持たない衛生兵として、負傷した兵士の救助に尽力します。
「人を殺してはいけない」というのは、別にキリスト教に限ったことではなく、全人類共通の道徳観だと思います。
それが、戦争という国が下した決断により、人を殺すことが当たり前になってしまう。
彼が、志願するまでの苦悩というのは、あまり描写されなかったけれども、人を殺すことが認められてしまった以上、せめて助かる命は救ってあげたい、という苦渋の選択だったのでしょう。
私は、こうした人間が現れ、武器を持たずに戦場に赴かせ、最後には勲章を与えて英雄とする、米国の懐の深さに感銘しました。
もちろん、日本人だって人を殺さないという信念は誰しも持っていると思います。
でも、それをこのような形で実現することが、日本人には国民性からか、なかなか難しいような気がします。
【沖縄戦について】
本作品では、宣伝の中でも、特別に沖縄戦が舞台だということは強調されていません。
だから、本作品が上映されていることは知っていても、沖縄戦のことを描いているということを知らない人は案外多いのではないでしょうか。
もっとも、本作品の主眼は、沖縄戦ではなく、上記の武器を持たずに戦場で兵士を救ったということなので、それでよいとは思います。
しかし、日本人である以上、沖縄戦ということに着目せずにはいられませんでした。
沖縄戦というと、民間人や年少者に多くの死傷者が出たことで、その悲劇性がしばしば取り上げられます。
今回は、期せずして、アメリカ目線で、沖縄戦を観ることになりましたが、日本だけでなく、アメリカにとってもいかに熾烈な戦いであったかが、臨場感溢れる戦闘シーンでよく分かりました。
本作品は、反戦映画ではないけれど、このような戦争のない平和な日常というものを、とても有り難く感じた次第です。
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