劇場公開日 2017年6月24日

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「デスモンドは平和憲法の日本そのものなのかも知れません」ハクソー・リッジ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0デスモンドは平和憲法の日本そのものなのかも知れません

2021年4月24日
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鑑賞方法:DVD/BD

前半はデスモンドが何故衛生兵となったのかが描かれます
後半は沖縄戦の地獄の戦場の中での彼の英雄的な活躍が描かれます

日本人にとってはやはり沖縄戦を米軍側から描いている事に注目せざるを得ません
機関銃でなぎ倒され、火炎放射器で焼き殺されるのはナチの親衛隊ではなく、私達と同じ日本人なのですから

1945年5月に彼が部隊とともに沖縄本島に上陸するところから後半が始まります

岡本喜八監督の名作「沖縄決戦」を出来れば観て置くとより立体的に状況の理解を得られるかと思います
メル・ギブソン監督もそれを参考にしたようなシーンも有ります

劇中で語られる通り、戦争とは敵を殺すこと
沖縄で家族の誰か、縁者の誰かが戦争で犠牲になった人なら、米軍は絶対悪だと思う人もいるでしょう
その米軍の彼らも多数の犠牲者を出した真珠湾攻撃に対して日本は絶対悪だと思って戦っていたのです
結局、戦争にはどちらの側にとっても正義であり、相手は絶対悪であり相対的なものでしかないのです
絶対悪とは米軍がとか日本軍がとかではなく、戦争そのものが絶対悪なのです

プライベート・ライアンが最高の迫真性で戦場を描いて見せた映画とされています
しかし本作を観たならば、本当の最高の迫真性で戦場描いた映画は本作であると考えが変わると思います

ボロクズのように粉砕される人間の肉体
泥まみれの人体のミンチ
それらがプライベート・ライアンのような彩度をわざと落としてどきつさを抑えてはいないのです
砲煙で薄暗くなる戦場には、沖縄の強烈な初夏の陽光が時折明るくその地獄のさまを照らしだすのです
それどころか長い鋭い銃剣で、素手で、直接殺し合うのです

目を背けるな本当の戦場とはこんなものだ
これだって映画なんだと
本物の戦争はこんなものどころではないと

こんな戦争の現実を知ることが、本当の反戦なのだというメッセージだと思います

では戦いたくない
戦争するくらいなら殺されようというのか?
それも違う

デスモンドは平和憲法の日本そのものなのかも知れません
不戦の誓いとは戦争を無条件に拒否するものではないと思います

デスモンドは軍需工場で働いていたので兵役免除されてたいたのに、軍隊に志願したのです
銃には触れないという誓いをもったまま
自分のやれることを果たそうとしたのです
誰よりも勇敢に敵の攻撃に立ち向かって、地獄のような砲火の中で英雄となったのです

彼は卑怯者ではなかったのです

また沖縄の周辺には戦争が起こりそうな雲行きです
そのとき私たちは戦争前のデスモンドと同じです

どのような行動をとるのか?
それが否応なく決断させられるのです
その覚悟を本作は厳しく問うています

ハクソー・リッジ
日本軍は前田高地と呼んでいた場所
那覇空港からゆいモノレールで35分の浦添前田駅で降りて、たった徒歩20分程のところ
今は綺麗に整備された見晴らしの良い高台の緑豊かな公園になって小さな慰霊碑が在るそうです
一度訪れてみたいと思います
今の日本の平和はこのような地獄の上にあったことに思いをはせたいと思います

あき240