劇場公開日 2017年6月1日

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「アクションとヒューマンドラマの快作」LOGAN ローガン 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0アクションとヒューマンドラマの快作

2017年6月25日
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鑑賞方法:映画館

興奮

 XMENシリーズはいずれも、単なるヒーローアクションの映画ではなく、ミュータントとして生きている自分自身のアイデンティティの相克がテーマになっている。
 本作も例外ではなく、悩める主人公が迫り来る敵と戦いながら、自身のレーゾンデートルを模索し続けるという二重構造の奥行きを持っている。そこに少女が加わって、物語は立体的に進んでいく。
 兎に角ヒュー・ジャックマンがいい。肉体は衰えても百戦錬磨の中年男らしく胆の据わった主役にぴったりの堂々とした演技だ。これまでのXMENの役柄とは一味違う深みがある。
 わかりづらい設定も、ストーリーが進むにつれて徐々に明らかになっていく。決して説明的ではないところがいい。

 結局家族が一番という世界観はいかにもアメリカ映画の定番だ。よく考えたら、アメリカで軍事小説とスパイ小説のベストセラー作家であるトム・クランシーもロバート・ラドラムも底流にあるのは家族が一番大事という考え方だった。アメリカという国は、信じられるものが家族だけだった開拓時代の心情がいまだに民衆の心の底に色濃く残っているようである。それはそれで悪くはないが、世界観の広がりを制限してしまっているのは否めない。
 本作品もそんな世界観にどっぷりはまってはいるものの、映画自体としてはストーリーも演出も演技もカメラワークも一級品で、とても楽しめる快作である。

耶馬英彦