裸足の季節

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劇場公開日:

裸足の季節

解説

北トルコを舞台に、自由を求めて古い慣習から抜け出そうとする5人姉妹の運命を瑞々しいタッチで描いた青春ドラマ。10年前に事故で両親を亡くし、祖母の家で叔父たちと暮らしている5人姉妹。厳格なしつけや封建的な思想のもとで育てられた彼女たちは自由を手に入れようと奮闘するが、やがて家族が決めた結婚相手にひとりずつ嫁がされていく。トルコ出身の新人女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュベンがメガホンをとり、デビュー作ながら卓越した構成力や美しい映像が世界各地の映画祭で高く評価された。第88回アカデミー賞外国語映画賞にノミネート。

2015年製作/94分/G/フランス・トルコ・ドイツ合作
原題:Mustang
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2016年6月11日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第88回 アカデミー賞(2016年)

ノミネート

外国語映画賞  

第73回 ゴールデングローブ賞(2016年)

ノミネート

最優秀外国語映画賞  
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(C)2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

映画レビュー

4.5禁じられた姉妹たち

2024年2月24日
PCから投稿

徹底的に自由を束縛される5人姉妹。

最初のきっかけは少年の首にまたがった(肩車をしてもらい騎馬戦をした)ことを股間を首におしつける淫らな行為とみなされて幽閉される。
以後、因襲か宗教か世間体かあるいは僻地の閉鎖性によるものか、なんなのかわからないが、5人姉妹には自主も権利も与えられず、家に閉じ込められ脱走するたび鉄格子を強化され、ほとんど女囚ものかランティモスの籠の中の乙女を見ている印象だった。

ばかりか処女膜の検査をうけさせられ年端もいかないうちに初対面の男と勝手に結婚させられ初夜に血が出ていることを確認するためシーツをみせろと言われる世界。継父に性的虐待をうける描写もある。姉妹のひとりは拳銃じさつをとげる。

時代設定も2010年代なので、なにが楽しくてこんな仕打ちをしているのかわからなかったが、保守的な因習もさることながら里親(継母父)の監督下であることが彼女たちの境遇を地獄にしていた、と思われる。
実親がいない火垂るの墓の兄妹みたいな境遇(=親類の家に居候になる)であり、徹底して自由を奪われ、まだ幼いうちにひとりづつ厄介払い(=嫁に出される)されていく。
脱走を真剣に考えるのも無理はなかった。

しかし脱走といっても末娘ラーレ(ドラマはラーレの視点で進行する)は、およそ10かそこいらの少女である。どうやって、どこへいけば、だれにすがれば・・・圧倒的に不利な条件の脱走劇はまるでミッドナイト・エクスプレス(1978)のようにはらはらさせた。

ラーレはしばしば近所を通るトラックのあんちゃんにクルマの運転を教わり、長女次女は嫁にやられ三女はじさつし四女とじぶんのふたりきりになったとき脱走計画を実行する。
内容はアムネスティインターナショナル推薦といった様相の男尊女卑世界だが演出が巧くサスペンスのように見ることができた。

概要によると監督Deniz Gamze Ergüvenはトルコのアンカラ生まれ。フランスに移住し映画学校ラ・フェミスを卒業している。初監督作である本作は彼女自身の体験を反映しつつ書いたそうだ。

邦題の裸足の季節を検索すると松田聖子の曲が出てくるが、おそらく制服少女らの装丁に裸足の季節と名付けることによって岩井俊二みたいな映画だと勘違いして見てくれる層を拾いたかった邦題だろうと思われる。が、とうてい裸足の季節なんていう感じの映画じゃなかった。

原題のMustang(ムスタング)は概して馬の品種を言うが、この映画では少女たちを調教されていない荒馬、あるいは調教を拒む荒馬と見立てた──のではないかと思われる。
ただしこの映画でもっとも恐ろしいのは少女らの諦観だった。末妹ラーレはまだ抗って逃亡してやろうという意欲・気力をもっている。でも姉たちは希望をうしない諦めの境地に入ってしまっていて、うつろな目がいちばんつらかった。

映画は称賛で迎えられ賞レースも幾つか勝ったがトルコ国内での評価は二分したという。

体制批判の映画でもあるゆえ、国内の賛否は分かるがトルコは西側のふりをしつつ親ロシアだったりで、微妙な国だ。西洋とオリエントが折衷している文化同様、規範にも東側と西側が混交している。時代設定ではエルドアンよりも前だが絶句するほど封建的な世界だった。
ちなみにトルコというと必ず親日だとかいうお人好しがいるが「親日」という言葉は人単位の話であって国単位の話じゃないと思う。

imdb7.6、RottenTomatoes97%と88%。

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津次郎

3.0監督の眼は特筆もの

2023年4月4日
Androidアプリから投稿

日本の民法もその例に漏れませんが、どこの国の民法も「父の捜索」を禁止しているのは、少なくないだろうと思います。
子供を産むことができるのは、物理的には女性だけに可能なことですし、真の父子関係は外形的には確定が難しいことから、「父の捜索」の禁止は、あらゆる法律関係の基盤となる親子関係(父子関係)を早期に確定させ、安定させるるために、法律が編み出した「生活の知恵」ともいうべきものなのだろうと思います。

一般の社会生活の上でも、女性(とくに女の子)にだけ、貞操教育に力か入れられたり、「慎ましさ」が求められたり、家庭の中に閉じ込められたり、結婚後は社会を離れて家庭に入ることが強く求められたり…というのも、考え方・目的として、前記のような法律制度と共通の基盤に基づくように、評論子には思われます。

法律制度は、それはそれで一定の合理性があるとも言えるのでしょうけれども、それを離れて社会生活一般にまで、そういう「規制」(?)を推し及ぼすというのはいかがなものでしょう。
そして、本作のような世の中が「かつては、あった」という時代が来ると良いと思うのも、また評論子だけではないと思います。

声高に叫ぶ訳でもなく、しかし余すところなく鮮やかに剔抉した本作のデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督の眼(観察力、洞察力)は、特筆すへきものと評論子は思います。

佳作と言えると思います。

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talkie

3.5【自由恋愛を認めない旧弊的な思想が蔓延る土地、親族から自由への脱出を図る幼き少女達の姿を描いた作品。彼女達の明るい未来を感じさせるラストが救いだと、勝手に思った作品でもある。】

2021年12月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

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NOBU

4.0抑圧から生まれる性的好奇心と反抗心

2021年5月5日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

幸せ

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唐揚げ