劇場公開日 2016年8月26日

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「作家性と作品のクオリティのバランスが良い」君の名は。 tabletapさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0作家性と作品のクオリティのバランスが良い

2022年11月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

新海誠らしい美しい映像、モノローグ、SFテイスト
そこに映画作品として成立するだけの展開、演出
冗長な部分がなく、良い構成
作品としてのクオリティが良好
『秒速5センチメートル』でも印象的だった挿入歌の使い方が本作でグレードアップしている。これがとても良かったRADWIMPS好きには刺さる。

入れ替わり、という特殊なシチュエーション下で
どんな恋愛展開をするのかという視点で視聴していたが
そこの掘り下げは浅めなので、残念だった

視聴後この恋愛描写不足について気になったのでネットでの意見を覗いてみると
同じような問題提起に「人を好きになるのに理由はない」という暴論をしばしば見かけた。
演出不足への言及にたいして、思考停止で受け入れろという発言は正直笑ってしまった。

『小説版 君の名は。』『君の名は。Another Side:Earth bound』では、
しっかりと瀧の三葉への興味、特別なムスビつき、関係性への愛着が記載されているので、そんな雑な話ではなく、演出の取捨選択の結果、描写が削られている。
完璧な作品だと思っている方には大変申し訳ないが、この点は失敗だろう。

日記のやり取り、それぞれの生活の問題解決などが作中描写されていて、
そもそも特殊なシチュエーションに置かれた男女、お互いが気になるのは当たり前・・・と、
もちろん映画単体でも想像の余地はあるが、小説を確認したあとでは
尚更、後半の盛り上がりに説得力を持たせるだけの描写が不足していると感じる。

小説ならたった数行の内容なので、モノローグを入れたり、入れ替わっているときの行動を聞いて反応するだけでも全く違ったのにもったいない。
映画本編に心を奪われたなら小説を読むことをオススメする。

新海誠作品は本作まで一通り視聴済み、しかし本作だけは公開から6年経ってようやく視聴
個人的にこの作品の前2作品『星を追う子ども』、『言の葉の庭』が琴線に触れるものがなく、
その上で「大ヒット」という触れ込みになった本作は、一般受け=妥協の産物になって作家性が感じられない作品になっているのではないか、と感じてしまい当時食指が動かなかった。
そして、そのままネタバレを受けて未視聴へ・・・という残念な経緯があったが、
ネタバレありでも楽しめたのと
思いの外、新海誠らしい作品で、クオリティも十分だったので
同じような理由で視聴していない方はもったいないので見たほうがいいと思う

tabletap