劇場公開日 2016年1月23日

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「この監督の次回作が早く見たい」サウルの息子 アイアムOKさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この監督の次回作が早く見たい

2016年2月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

難しい

ホロコーストがテーマなので、当初はあまり気乗りしていなかったんですが、オスカーの外国語映画賞最有力ってのと、やはりユダヤ人研究は自分の生涯のテーマなので、意を決して見ることにしました。

そしたら、これがとんでもない代物だった。去年のカンヌでグランプリ取ってます。ゴールデングローブでも外国語映画賞受賞。見れば納得ですよ。

何が凄いかって、とにかく画面設計が斬新なんです。それを実現する撮影も凄い。画面は3:4というスタンダードの画角で、カメラは主人公の背後30センチあたりが定位置。いわゆる三人称視点です。ピントは常に浅く、主人公の背中に記された赤い大きなバッテンにフォーカスされます。だから背中越しに見える風景は、いつもピンぼけています。舞台はアウシュビッツの収容所。その中で繰り広げられる陰惨な出来事は、狭い画角とピンぼけ状態で描かれます。つまり、肝心の場面は「見えそうで見えない」。そして、主人公はある使命に取り憑かれていて「あちこち目まぐるしく移動する」。……ワンカットが20〜30秒というのはザラ。1分以上の長回しもたくさん出てきます。

監督は弱冠38歳。ハンガリー出身のユダヤ人ネメシュ・ラースロー。長編1作目だそうです。ゲーマー世代ですよね。そうじゃなかったら、こんな映画の撮り方思いつかないでしょ。

終盤、カメラは収容所を飛び出し、森を抜けて川を渡ります。映像は観客に若干の開放感を感じさせながら、実に複雑なフィナーレを提示します。

久々に「ヨーロッパ映画」を見たなという感じ。早くこの監督の次回作が見たい。

アイアムOK