劇場公開日 2016年11月12日

「観賞後、罪悪感を抱きました。」この世界の片隅に ジョージさんの映画レビュー(感想・評価)

0.5観賞後、罪悪感を抱きました。

2017年1月2日
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この映画は、戦争を体験した方々、大切な人や物をを喪った方々、一生懸命に必死に生き抜いてきた方々、気持ちや想いや悲しみをこらえて進んできた方々に対しての敬意が感じられない。
失礼だと思いました。
この映画を観たことで、その「失礼な、平和ボケしていて、先人たちを不幸な人々だと思っている『傍観者』」に入ってしまったことへ、罪悪感と後ろめたさを抱きました。
そして、映画に対して強烈な反発も感じました。

私は、戦争を題材にしたフィクション作品に絶対に欠かしてはならないことがあると考えています。
ひとつは、「感情」が揺さぶられること。
ノンフィクションではなくフィクションである以上、戦争や戦時中の暮らしを「幸せそうだな」と思わせてはいけないと思っています。(救いがなかったわけじゃないんだな、という程度なら別ですが)
望む望まざるに関わらず時代に翻弄されながらも必死に生き抜いてきた人々への「敬意や尊敬」
そして、正義も真実も立場によって見方は様々で、それぞれにとって「真実」であるという多視点。

この映画には全てが欠けている。
というより、全てが感じられませんでした。

”非常時にも日常は続き、その中で生き、笑い、泣き、食べ、暮らしていた。”
”そうやって暮らしていても、戦争は容赦なく壊し、奪っていく”
そんなことわかってるんですよ。

知るべきは、知らしめるべきは、その奥にあるもののはず。
観た人に何を伝えるのか、何を考えさせ、何を気付かせるのか。
そして造ったものに、どんな使命を与えるべきか。
戦争を題材にフィクションを創るのならば、ポリシーとして、信念として、確固たる意志を持つべきだと思います。

生きることに必死な中、「日常」をことさら「日常」にしてきたこと(日常、を演じたという面もあっただろうと思いますし)、その底に横たわる不安や諦観、希望や祈り、苦しみや悲しみ…そういった本質を描けていなかったと思います。

こんなぼやけた主人公に、こんな表面をなぞっただけの”戦時下の日常”に、何を語らせ、訴えたかったのでしょうか。

とても消化できない映画でした。

※原作の漫画は未読ですので、原作でなら「リアルさ」「敬意」などを感じられるのかもしれません。
同じ原作者の『夕凪の街 桜の国』は本当に本当に素晴らしかったので…
もしかしたら、あのタッチや空気感は、アニメーションで表現するのは難しいのかもしれませんね。

ジョージ
naga1548さんのコメント
2018年9月16日

つまり反戦運動のプロパガンダに利用しやすい誰にでも分かる反戦メッセージが入っているのが「良い戦争映画」だというわけですね。

naga1548
relayerさんのコメント
2018年3月23日

重苦しい描写、悲惨な描写ばかり入れれば「敬意」を感じるというように読めるのですが…
当時を生きた人々が実際に重苦しさや悲惨さばかり感じていたなら、「この世界の片隅に」という漫画は生まれませんでした。今日と同じような朗らかさを感じ取り、それを伝えるのも敬意の表れです。

relayer
Kazu Annさんのコメント
2017年2月10日

そこまでは、思い至りませんでしたが、成る程。敬意が無いというのは、その通りだと思いました。確かに、戦争に対する知的な考察の欠如は、l犯罪的だとお思います。

Kazu Ann
うにう兄さんのコメント
2017年1月4日

個人の感想は人それぞれですが、二つ気程になりました。

夕凪の街がお好きなようですが、同じ原作者が何故、次の作品としてこの原作を書いたかを考えて欲しいと思います。

戦争というものを考えるあまり変な義務に妄執していませんか?(私は性格が悪い人間なので普段それを戦争ボケと言ってますが)

平凡倶楽部やユリイカの11月号にこうの先生のコメントがあります。参考までに

それと実写のこの作品をご存知でしょうか?
TVドラマでしたが、特に大きな話題になることなく埋もれています。(原作内容の再現度は高いです)

それはつまり、この作品はアニメーションだからこそ光る作品である事を物語っていますよ

うにう兄