劇場公開日 2016年2月11日

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「普遍的テーマを美しすぎるラブストーリーで」キャロル Cディレクターシネオの最新映画レビューさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0普遍的テーマを美しすぎるラブストーリーで

2016年5月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

幸せ

観たのは少し前ですが、遅ればせながら。

けど今でも余韻が残ってる、

不思議な映画です。

ルーニー・マーラがオスカーを獲って、

評判もいいので劇場へ。

原作の作者は

アランドロンの名作「太陽がいっぱい」や

「アメリカの友人」「リプリー」の

作者なんですね。

1952年に100万部を超える大ベストセラーになった、

彼女の実体験だそう。

当時は同性愛自体に法規制があって、

30年後にカミングアウトしたとか。

その時代には創られることのなかった、

今の時代の必然なのですね。

決して自分らしく生きられなかった二人が、

運命的な出会いで惹かれあい、

自分を見つけていく成長のお話。

表情やセリフの一つ一つがヒリヒリしてて、

禁断の愛を出口に向けて揺れ動く女たちの心情が、

実にスリリング。

見えない引力の行間がせつない。

こんな恋愛映画は、あまり出会ったことがない。

衣装やメイクも完璧。

その時代背景で対照的な

二人のキャラクターを表現する装置として、

計算され尽くされています。

満たされてる女キャロルは、

ミンクのコートやしなやかなドレスに、

金髪と真っ赤なルージュ。

対して抜け出せない凡人女テレーズは、

ボンボンのついた帽子に、

黒髪とネイビー。

そんな対比が続き、

作品を奥深いものにしてますね。

僕は1950年代が好きなので、

まず舞台設計や完璧な美術にため息。

映像も美しすぎる!

光線が詩的な映像で紡ぐ、

まるでアート作品のよう。

16ミリフィルムで撮影されているので、

粒子の空気感がまるで

当時の銀幕を観ているよう。

それだけでも、劇場でみたほうがいいです。

「ブルー・ジャスミン」で主演女優賞受賞の

ケイト・ブランシェットは、

すごい存在感。

社会からスポイルされる同性愛者の不安と苦しみを、

天才女優が見事な表現力で演じています。

彼女以外に、この役は想像できない。

けど確かにルーニー・マーラは、

助演として素晴らしい仕事をしていた。

自分を見つけられない不安や心の闇、

そして強い意志まで、

眼差しだけで演技する力量はさすが。

葛藤を抜け出して生き方を見つけていく女性を、

息を飲む演技で真摯に向き合っている。

オスカーも納得です。

後半はルーニー・マーラが、

ヘップパーンに見えて仕方なかったのです。

この二人が出会ったケミストリーは、

映画史に残るでしょうね。

自分に正直にいきるという普遍的なテーマが、

ドキドキさせる至高の愛を通して

胸に響いてくる。

マイノリティな同性愛が題材だけど、

先に踏み出せない女性は、

とてつもない勇気が

もらえるんじゃないかな。

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