劇場公開日 2015年6月27日

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「悪いことは出来ねぇなぁ」NEWシネマ歌舞伎 三人吉三 ヨッシーさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0悪いことは出来ねぇなぁ

2020年11月26日
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タイトルのセリフがこれほど沁みる三人吉三は見たことがなかった。
コクーン歌舞伎の特徴と言える取り上げる物語の原作のテーマを伝えると言う意味ではかなり伝わってきた。
ことに素晴らしいのが勘九郎さんの和尚吉三と笹野高史さんの伝吉。
笹野さんは江戸の言葉を巧みに使っていてすっかり歌舞伎役者と言われてもいいような雰囲気。
勘九郎さんは大川端より伝吉内で伝吉に甘える子供の面がとても素晴らしかった。
そして、伝吉内で八百屋の話をじっくり聞く伝吉と吉祥院で十三郎とおとせの話を聞く和尚が好一対。
親の起こした悪事が巡り巡って子供にまで重くのしかかる。
まさに「悪いこたぁ出来ねえなぁ」。(三人吉三がした悪事もそれぞれに重くのしかかるので全て伝吉のせいとは一概には言えないが。)
作品の悪いことはできないと言うテーマがかなりストレートに伝わってきた。

その上で、あえて苦言を言うなら立ち回りの時に刀を振る音が入るのは余計な気がした。
歌舞伎に慣れ親しんだ僕からしたらかなりの違和感であった。
後、最後の立ち回りは是非フルで見たい。

とある方が廓初買じゃなかった巴白波だったと批判されていたのでどう違うのかを改めて調べてみた。
初演の時は一重と文里の恋愛が綯い交ぜで上演されていたことは知っていたが三人にどのような影響を与えているのかがわからなかったからだ。
調べてみて長年の疑問が解決した。
文里の話を出すことで三人吉三が自害しても安森家の御家再興が叶うというハッピーエンドになっていたのだ。
もしまたコクーン歌舞伎で三人吉三を出すことがあれば文里の話も復活して欲しい。

よっちゃんイカ