NEWシネマ歌舞伎 三人吉三

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NEWシネマ歌舞伎 三人吉三

解説

歌舞伎の舞台を映画館でデジタル上映する「シネマ歌舞伎」シリーズ第22弾。中村勘九郎、中村七之助、尾上松也ら歌舞伎界の新世代スターたちが河竹黙阿弥の名作「三人吉三」に挑んだ、2014年6月・渋谷シアターコクーン上演の舞台を収録。本公演の演出と美術を手がけた串田和美が監督を務め、編集を重ねて新たな映像作品としてよみがえらせた。木屋の手代・十三郎は夜鷹のおとせと一夜を共にするが、店から預かった百両を宿に忘れてしまう。翌日、十三郎に金を届けようとしたおとせは、その道中で出会った娘に金を奪われる。その娘の正体は、お嬢吉三という盗人の男で、さらに通りすがりの男から名刀・庚申丸を奪い取る。そこへ犯行を目撃した盗人・お坊吉三が現われて百両を横取りしようとする。2人が争っていると、今度は和尚吉三という盗賊が止めに入る。自分たちが同じ名前であることに不思議な縁を感じた3人は、兄弟の契りを結ぶが……。

2015年製作/135分/G/日本
配給:松竹
劇場公開日:2015年6月27日

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映画レビュー

5.0舞台×映画を超えた! 大絶賛!!!

2024年2月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

萌える

暫く、歌舞伎を観に行っていないうちになんてことになっていたんだ。
 ミュージカルかオペラか、軽快なリズムの音楽から始まる。そして、それとは一転した緊張感のある場面。暗がりの中に男が出てきて、刀が空を舞う…。

歌舞伎座・国立劇場なら花道を使って出てくる登場人物。花道がない代わりに、客席の通路をふんだんに使いながらの演技。
 歌舞伎座・国立劇場ならイヤホンガイドで説明される部分を巧みに台詞に入れながら舞台が進んでいく。

えっ?私は歌舞伎を翻案した現代劇を、映像に収めた作品を観に来たの? あれ?

だが、歌舞伎役者が、特に主役の三人が出てくるや、世界は歌舞伎ワールドへ。
 チャンバラとは違う殺陣・立ち回り。日本舞踊を観ているよう。
 流れるような七五調の言いまわし。おなじみの台詞。
 そしてパシッと決まる見得。
 おお!やっぱり歌舞伎だ!!!
パンフレットを読むと、普段の歌舞伎に比べて、殺陣・立ち回りもかなり崩しているらしい。七五調の台詞もわざと崩しているらしい。でも、さすが御曹司達。すべてが崩れるわけではなく、崩れた箇所が良いメリハリになって、適度に緊張感・臨場感満載。それぞれの型を演ずるのなら予定調和の世界のはずなのに、思わず手に汗握ってしまう。

笹野さんの演技は秀逸。好々爺から極悪人への様変わり。手だけ、脚だけで、顔の半分であんなに盛り上げてくれるとは。さすが千両役者。
 勘九郎丈、声から台詞の言い回しからお父さんそっくり。
 でも、今回の一押しは七之助丈。昔拝見させていただいた時は、失礼ながら、品は良いけどあまり深みのない女役というイメージしかなかったけれど。今回は、娘役の艶と、若衆の本性現した時のメリハリ、そして役柄はしょせんチンピラなんだけど、どことなく品と華があって、見惚れてしまいました。「よ!中村屋!」
 松也丈は、二人に比べるともう一歩かな?悪くはなかったけどね。

そんな江戸の歌舞伎をアレンジした新歌舞伎の舞台。客席も使い、回り舞台もふんだんに使い、セットも歌舞伎座のように固定ではなく自由自在に動く。歌舞伎座や国立劇場で観る歌舞伎も良いけど、なんて躍動感にあふれているんだ。

いや待てよ。映画用の演出がそう感じさせるのか。
この映画は単なる、舞台を映像化したものではない。
 舞台なら、長々と続く間も、映画では一瞬に場面が切り替わる。アップとアップの切り代わりによって生れる緊張感。そして舞台全部を収めた画、一部だけを切り取ったような画、上から見下ろすような画、下から見上げるような画。大立ち回りの中に差し込まれるスチール写真のような映像。
 これってどこから撮っているんだと言う角度もあり、何回かの上演を、観客入れないでこの映画の為だけに上演したものを組み合わせて編集した?と思ってしまうほど、多彩な画を見せてくれる。(パンフレットによると、セットをくりぬいてとか、上演中にカメラマンが黒子等にふんして舞台の上で撮った画もあるとか)
 そして、音楽。こういう音楽を合わせるかと言う選曲。歌舞伎ならではの効果音が効果的に響くかと思うと、無音。(舞台とは別の音楽?・音響?)
 なんていうメリハリ。画、音楽、演技。勢いがある。

舞台としても魅せてくれるが、それを映画として完全に昇華している。

物語は下世話物。古典”鑑賞教室”のノリで行くと、なんだこりゃとなると思う。決して学校お墨付きの品行方正な話ではない。だって主役はチンピラ、大半の登場人物は自己中だもん。(それでも自分が悪いことやっている自覚はあるし、彼らなりの筋の通し方は知っているけどね)
 要は「悪いことをしたら罰が下るんだよ」という話なんだが、盗み・殺し、しかも生首まで出てくるし、登場人物は自分達の正義に酔ってはいるけど、なんちゅう自己中なと共感できにくい物語ではある。
 「実は」の人間関係が複雑で、百両と名刀があっちこっちに動いて、頭がこんがらがる。この映画では、ストーリーを比較的わかりやすくしているが、それでもなんだこりゃになりやすい。
 しかも、家宝を盗まれて切腹・お家断絶とか、よたかとか、今の感覚と違う当時の風習とかもある。
 そんな、なんだこりゃと言う話や登場人物を、観客が魅力的と感じる、もしくは少しでも感情が揺さぶられるように如何に演じるかが、役者の腕の見せ所。

親子二代にわたる因縁話に時間が割かれているので、キャッチコピーの「三人だから生きられた」や、パンフレットにある「(主役)三人の孤独」はあまり感じられなかった。
 けれど、華のある主役三人の勢いと親世代の笹野さんの侘びの対比が面白く、和尚吉三の難しい役どころも見応えある。

あっという間の2時間15分。

舞台、映画の可能性を拡げた作品だと賞賛してもしきれない気分です。

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とみいじょん

5.0大吹雪

2023年1月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

女装男子、武士(浪人)、坊主の三人が、揃って盗人で、偶然同じ吉三という名で、奇妙な縁で出会ってしまった。同じ名前だから、お嬢吉三、お坊吉三、和尚吉三、と呼び合うことに。彼らの縁は、和尚吉三の父から始まっていた。因果応報の話である。

歌舞伎座ではなく、渋谷Bunkamuraでの上演。演出も現代劇の人。当然、古典を現代の味つけにしてある。と言っても、基本はいじらず、舞台装置や照明に工夫しているだけ。暗い話ということもあろうが、照明が暗くて、陰鬱なムードが出ていた。さらに、収録を編集して映画にしている。ラストの紙吹雪が圧巻。観客の頭上まで白くなってる。裏方さん達は掃除するの大変だっただろうなぁ。

勘九郎、七之助、松也の三人は華があり、絵になる。笹野高史はよく歌舞伎に呼ばれてるけど、淡路屋と屋号まであるようで、見得もきまっていた。鶴松かわいい。新悟は背がすらっとして柔らかい。亀蔵さんの声好き。

生の舞台で三人吉三を観たくなってきた。

BS松竹東急の放送を鑑賞。

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ぷにゃぷにゃ

5.0悪いことは出来ねぇなぁ

2020年11月26日
iPhoneアプリから投稿

タイトルのセリフがこれほど沁みる三人吉三は見たことがなかった。
コクーン歌舞伎の特徴と言える取り上げる物語の原作のテーマを伝えると言う意味ではかなり伝わってきた。
ことに素晴らしいのが勘九郎さんの和尚吉三と笹野高史さんの伝吉。
笹野さんは江戸の言葉を巧みに使っていてすっかり歌舞伎役者と言われてもいいような雰囲気。
勘九郎さんは大川端より伝吉内で伝吉に甘える子供の面がとても素晴らしかった。
そして、伝吉内で八百屋の話をじっくり聞く伝吉と吉祥院で十三郎とおとせの話を聞く和尚が好一対。
親の起こした悪事が巡り巡って子供にまで重くのしかかる。
まさに「悪いこたぁ出来ねえなぁ」。(三人吉三がした悪事もそれぞれに重くのしかかるので全て伝吉のせいとは一概には言えないが。)
作品の悪いことはできないと言うテーマがかなりストレートに伝わってきた。

その上で、あえて苦言を言うなら立ち回りの時に刀を振る音が入るのは余計な気がした。
歌舞伎に慣れ親しんだ僕からしたらかなりの違和感であった。
後、最後の立ち回りは是非フルで見たい。

とある方が廓初買じゃなかった巴白波だったと批判されていたのでどう違うのかを改めて調べてみた。
初演の時は一重と文里の恋愛が綯い交ぜで上演されていたことは知っていたが三人にどのような影響を与えているのかがわからなかったからだ。
調べてみて長年の疑問が解決した。
文里の話を出すことで三人吉三が自害しても安森家の御家再興が叶うというハッピーエンドになっていたのだ。
もしまたコクーン歌舞伎で三人吉三を出すことがあれば文里の話も復活して欲しい。

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よっちゃんイカ

3.0「廓初買」ではなく「巴白浪」でした

2020年11月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「三人吉三」といっても、「廓初買」と、その簡略版の「巴白浪」の2種があるようだ。
自分は知らずに、「廓初買」のややこしい台本を、短時間でどう料理するのだろうと期待していた。
ところが、ただの3人の吉三の“顔見せ興業”にすぎない「巴白浪」であったので、ガッカリだ。文理も一重もおしづも出てこないストーリーなんて、意味があるのか?
よく考えれば、古典作品でありながら、2時間ちょっとで完了の歌舞伎作品なんて、不自然だ。
とはいえそれは、もともとのテキストの問題であって、この舞台の責任ではないのかもしれない。

すべてライブで撮ったものではないはずだが、要所でライブ映像を入れており、雰囲気を感じさせる仕上がりだ。
また、コクーン歌舞伎ということで、普通の歌舞伎とは違う演出が目立つ。
三味線の代わりにギターが鳴り、舞台には水槽が作られてバチャバチャ飛沫が飛ぶ。
小さな回り舞台は、角度を変えるだけでなく、役者の動線を複雑にしている。
そして何より、明るい普通の歌舞伎とは異なり、徹底的に“光”と“闇”のコントラストを追求している。
ラストの大量すぎる(笑)の紙吹雪も、作り手の執念を感じさせる鮮烈なイメージである。

残念なのは俳優陣だ。
研師役の片岡亀蔵は良かったが、いかんせん最も重要な役である、和尚役の勘九郎と伝吉役の笹野高史に“侠客”としての存在感や迫力が無い。
確かに、和尚役は難しいと思うので、勘九郎には気の毒だ。しかし、それこそ白鸚や吉右衛門(あるいは故勘三郎)クラスをもってこないと舞台がしまらないのも事実。
また、七之助も本作では才能が出しようがない感じだし、松也もカッコいいだけで終わっている。

帰りの東劇のエレベーターでは、マダムたちが「松也、松也」と連呼していた(笑)。
2015年の制作らしいが、舞台の中身よりは、斬新な演出とフレッシュな役者の姿を堪能する作品だろう。

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