劇場公開日 2015年6月27日

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「「廓初買」ではなく「巴白浪」でした」NEWシネマ歌舞伎 三人吉三 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「廓初買」ではなく「巴白浪」でした

2020年11月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「三人吉三」といっても、「廓初買」と、その簡略版の「巴白浪」の2種があるようだ。
自分は知らずに、「廓初買」のややこしい台本を、短時間でどう料理するのだろうと期待していた。
ところが、ただの3人の吉三の“顔見せ興業”にすぎない「巴白浪」であったので、ガッカリだ。文理も一重もおしづも出てこないストーリーなんて、意味があるのか?
よく考えれば、古典作品でありながら、2時間ちょっとで完了の歌舞伎作品なんて、不自然だ。
とはいえそれは、もともとのテキストの問題であって、この舞台の責任ではないのかもしれない。

すべてライブで撮ったものではないはずだが、要所でライブ映像を入れており、雰囲気を感じさせる仕上がりだ。
また、コクーン歌舞伎ということで、普通の歌舞伎とは違う演出が目立つ。
三味線の代わりにギターが鳴り、舞台には水槽が作られてバチャバチャ飛沫が飛ぶ。
小さな回り舞台は、角度を変えるだけでなく、役者の動線を複雑にしている。
そして何より、明るい普通の歌舞伎とは異なり、徹底的に“光”と“闇”のコントラストを追求している。
ラストの大量すぎる(笑)の紙吹雪も、作り手の執念を感じさせる鮮烈なイメージである。

残念なのは俳優陣だ。
研師役の片岡亀蔵は良かったが、いかんせん最も重要な役である、和尚役の勘九郎と伝吉役の笹野高史に“侠客”としての存在感や迫力が無い。
確かに、和尚役は難しいと思うので、勘九郎には気の毒だ。しかし、それこそ白鸚や吉右衛門(あるいは故勘三郎)クラスをもってこないと舞台がしまらないのも事実。
また、七之助も本作では才能が出しようがない感じだし、松也もカッコいいだけで終わっている。

帰りの東劇のエレベーターでは、マダムたちが「松也、松也」と連呼していた(笑)。
2015年の制作らしいが、舞台の中身よりは、斬新な演出とフレッシュな役者の姿を堪能する作品だろう。

Imperator