劇場公開日 2016年7月29日

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「国家総動員の危機管理を克明に描いた日本のリアリティの面白さとゴジラ」シン・ゴジラ Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5国家総動員の危機管理を克明に描いた日本のリアリティの面白さとゴジラ

2023年12月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

正体不明の巨大生命体に襲われる首都東京が、未曽有の国家規模の災害対策を迫られるリアリティを突き詰めた怪獣映画。総理大臣始め各大臣と内閣役員、官僚、自衛隊、都庁、警視庁、生物学者に、アメリカ合衆国の特使とオールキャストの豪華さ。そのキャスト数328名というかつてない程の登場人物を的確且つスピーディーにモンタージュした労作にして、その災害対策過程を克明に描写するために進化するゴジラに設定した脚本のコンセプトが命の映画。狼狽える官邸の姿、専門知識に特化した官僚、個性豊かな生物学者が面白い。残念なのは石原さとみ演じる日系三世のアメリカ特使。祖母が被爆者という家系とアメリカ人の父の家柄の良さが取って付けたような設定で、背伸びした石原ひとみの努力も報われていない。ここは強弁なアメリカ人女性で良かったのではないか。大臣の中で一人女性の防衛大臣余貴美子も終始緊張した演技を求められ、彼女の良さが出ていない。主演の長谷川博己と、対立する役の竹野内豊は、何故この役職の二人なのかが意味不明ではあるが、流石に高齢の総理大臣を主役には出来ないのは理解する。ここがアメリカ映画との違いで、大統領の活躍や存在感を前面に描くのがハリウッド映画の威容と言えよう。それでも大杉連の優柔不断さと不安げな表情の演技がいいし、平泉成の頼りなさげでも冷静に対処する姿も可笑しい。それと私服で登場する生物学者の3人に、犬童一心、緒方明、原一夫が揃って出演はコントラストの面白さ。映画監督は、言葉は悪いが曲者揃いです。俳優より個性が強い監督に出演をお願いしたのでしょうね。最終形態のゴジラの特撮は見事。口と尻尾から同時に熱線を放つのが更に脅威を呼ぶ。

映画としては人間のリアリティに主力を置いた怪獣映画でした。そのための精密で細部に渡る人物配置を短いカットで畳み掛けるリズムに見入りながらも、台詞が聴き取り辛かったのは個人の問題かも知れない。それ以外は、長短合わせてとても面白く観ることが出来ました。大変な力作であると思います。

Gustav