日本のいちばん長い日のレビュー・感想・評価
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あの事件のメカニズムに迫ろうと試みる意欲作
1967年に岡本喜八監督版とはかなり相違がある。岡本版はタイトルにもなっている、いちばん長い日、日本の降伏を決めた8月14日から玉音放送までを中心に描き、様々な人間が思惑を抱えてうごめくドキュメントタッチの群像劇だった。特定の誰かの心情に深く立ち入らずに「現象」を外から捉えたような作品だったが、原田眞人監督は、それぞれの立場を深く掘り下げ、なぜ宮城事件が起き、あのような決着になったのかのメカニズムに迫ろうとする。
最も大きな変化は、阿南陸軍大臣の解釈だろう。徹底抗戦を主張し、暴走する陸軍を代弁しているように見える彼の発言は、実は陸軍の暴走を止めるための芝居であると本作では解釈している。この複雑な「本音と建前」は日本人を理解しづらくしているものだが、そこに踏み込んだことで、この映画はある種の日本人論のようにもなっている。また、昭和天皇をはっきりと描いている点も特筆すべき点だ。本木雅弘の強さと静謐さを兼ね備えた佇まいは素晴らしい。
緊張感すごい
当時の日本ってこんな感じだったのではって思う。
全体が見えてる聡い人はなんとか機運を制して
戦争を収めようとし
若い兵士は自分の見聞の元、志を持って
日本を良くしようと奮闘し
特に軍部の若者が後先考えず
熱気に飲まれた行動とってるところがリアル
その他の生活の細かい描写も
来館記念が教育勅語なのもとてもいい
今まで見た戦時中の実写の中で一番リアルだと思ってる
反条約派、艦隊派、同盟締結派、開戦強硬派、徹底抗戦派は日本人自ら戦犯として裁くべき
戦争推進派が我が身の保身のために抗戦継続を叫び、早期講和終戦派が表立って動けずにいる間に原爆投下、ソ連参戦、何十万もの命が、
国防国家は兵士国民の命の損耗を最小限に考えてこそ有能であり、その基準に照らし合わせると当時の戦争指導者は無能であると断言できる。
アメリカ側も描かないと、緊迫感が生まれない、九州上陸、オリンピック作戦も進行中、
自国だけでは、
独り善がり、ご都合主義、希望的観測、机上の空論に終始した日本の戦争指導者のよう。
終わらせることの難しさ。
過去鑑賞作のレビュー(レンタルDVD。2023年5月頃)。
同じ原田眞人監督の「クライマーズ・ハイ」とどちらを先に観たのか記憶が怪しいが、本作の方が数ヶ月前であったと思う。
歴史探偵こと半藤一利原作ノンフィクションの映画化2作目。私の昭和史の先生は半藤一利先生。残念ながらお亡くなりになったが、本作の原作も含めまだまだ読んでいない作品も多いので、これからも読んでいこうと思う。
さて、この映画であるが「ポツダム宣言受諾の裏でこんなことがあったとは知らなかった!」という衝撃を受けた。2・26事件未遂のような出来事があったとは。映画は、戦争を題材にしたものだが、残虐な戦闘シーンはなく、薄氷を踏むような駆け引きが展開されるサスペンスドラマのようである。
驚きの史実を描くストーリーもさることながら、昭和天皇を演じる本木雅弘、阿南大臣を演じる役所広司、鈴木首相を演じる山崎努の3人の演技が素晴らしい(松坂桃李の純粋な狂気も良い。しかし、それ以上に3人が良かった)。
始まった戦争は終わらせることが本当に難しいのだと改めて考えさせられる。劇中の台詞にもあるように、終わらせる役割は「貧乏くじ」なのだ。始めたのが自分でなくても責任をとらされるから。それでも、最終的にその貧乏くじをこの3人はそれぞれの形で引いたのだ。
最も重い責任を背負ったのは昭和天皇であろう。本木雅弘が当初この役を引き受けるのをためらったという話を聞いて、それはそうだと思った。しかし、本木雅弘の演技は迫真にせまるものがあった。そこに「人間」としての昭和天皇を観た。
また、侍従として天皇の側で仕えたことのある鈴木、阿南両名も大変な覚悟を迫られた。特に鈴木は「聖断」を迫る役割を担った。ある意味、こんにちの日本があるのは彼のおかげと言えるかもしれない。山崎努は人生最後の大仕事をする首相、役所広司は組織のトップとしての責任の取り方と家族愛を見事に演じていた。
非常に短い期間の濃密な出来事を速いテンポでまとめていく撮り方は原田監督お得意の手法(あるいは癖?)なのだろうか。ある程度の知識がないと、登場人物達の会話や行動の意味、背負うものが理解出来ないまま置いて行かれるかもしれない。万人受けする映画とは言えないだろう。
劇中に登場する昭和天皇、鈴木貫太郎(元侍従長。海軍軍人。2・26事件で襲撃を受けた)、東条英機(元首相。陸軍軍人。戦争を実質的に始めた政府首脳の1人)、阿南惟幾(元侍従武官。陸軍軍人。)、米内光政(元首相。海軍軍人。良識の人)。彼らがどういう人物であったかを知っていると、ぐっと見方も変わると思う。
結論。戦争をやっていい理屈などない。終わらせるのが難しい戦争なんて、絶対に始めてはいけないのだ。
難しかった。
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ポツダム宣言を受け入れるまでの24時間を描く。
最後は役所広司が切腹、受け入れることになる。
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TVで見たが、よくあるパターンで音声のバランスが最悪。
洗脳された軍人は早口なので、とにかく会話が聞き取りにくい。
で音量を上げると、戦争シーンの効果音が異常にうるさい。
そのせいであんまりよう分からんままに話が進んで行った。
題材はいわゆる「宮城事件」。興味はあったんだが・・・。
後で調べたら、陸軍将校が独断でポツダム宣言受諾を阻止しようとし、
近衛師団長を殺害、師団長命令を偽造して皇居を占拠した。
しかし陸軍首脳部を説得できず、切腹したというものらしい。
長い
昨日、戦争末期のとてもいいドラマ(明日待子)をBSで観たことに触発されたのか、今さらながらレンタルしました。
前作(岡本監督)が余りにも良かったので期待と不安がありましたが、結果はイマイチでした。原作がこの展開ならば仕方ないのですが、この映画だと、「いちばん長い日」を迎えるまでのドキュメントを見ているみたいでした。
前作が描いていた「あの一日」に集約されたドラマは、熱気と、苦悩と、朝を迎えた時の無力感とか疲労感とか、そうした人間臭に満ちていたと思いました。
戦地で非業の死を迎える無数の兵士(前日に見たドラマ)がいる反面、東京の本部で何だかんだと揉めている軍の上層部(この映画)、なんだろうな、やり切れません。
犠牲になった兵士の皆さん、空襲で亡くなった民間の方々、今の日本の平和は本当にこうした方々によって築かれたと思わずにはいられません。
1945年8月15日の真実
天皇の生の声と姿。宮城事件とは?
78回目の終戦の日8月15日も過ぎてしまいましたが、
「日本のいちばん長い日」を観ました。
本木雅弘が昭和天皇を演じていて、口調も声も昭和天皇によく似ていて
感慨深いものでした。
でもこれほど鎮痛なお顔をなさったのでしょうか?
私の知る昭和天皇は無表情で時々ニコッとされる印象です。
1945年に昭和天皇は44歳。
日本が1945年の8月14日~8月15日正午を迎えて
敗戦を告げる玉音放送までの24時間をドキュメンタリータッチで
描いています。
広島・長崎に新型爆弾を投下されて7月末にポツダム宣言を受けて、
受諾するかを鈴木貫太郎総理大臣(山崎努)と阿南惟幾(役所広司)など
内閣閣僚が討議するも賛否が分かれる。
天皇は「これ以上の犠牲は避けたい」と説くが、阿南惟幾他陸軍は
「本土決戦派」
しかし丸2日間討議の末ポツダム宣言の受諾を決めて
天皇の生声の敗戦の知らせ(玉音)を15日未明に録音。
12時間後にはそれを全国放送して敗戦を国民に伝えるとの
流れは出来た。
私は「宮城事件」をはじめて知りました。
それもその筈=教科書にも載らない事件で、
宮城は「きゅうじょう」と読みます。
当時は皇居のことを宮城(きゅうじょう)と言っています。
陸軍将校4名を中心に敗戦を受け入れずに「本土決戦」を
行うべきと考える畑中健二陸軍少佐(松坂桃李)他は、
森近衞第一師団長を殺害して玉音放送テープを奪って敗戦を
覆そうと奔走するも失敗して自害した。
これが宮城事件です。
(畑中健二は実名です)
畑中などに計画性や組織力が欠けており大きなうねりにはならなかった。
陸軍には「2000万人を犠牲にすれば勝利出来る」
と信じる者が多くいてまともな精神や判断力ではなかったようです。
総理大臣の鈴木貫太郎は落ち着き冷静で、
「戦争を終わらせる事は、始める事の何十倍も難しい・・・」
と実務的に敗戦に向けて事務処理に奔走。
山崎努は鈴木の飄々とした様子を本人そっくりに演じた。
阿南惟幾役の役所広司。
死を覚悟しており、決起を促す部下に
「俺を殺してから反乱を起こせ!!」
と一喝する。
この映画を観て、敗戦への道筋が良く分りました。
やはり8月15日に密着した臨場感は迫ってくるものが凄かった。
この後は「東京裁判」を観るべきなのですが、4時間超えの大作。
配信でも見当たりません。
ただポツダム宣言を受諾して戦争責任を負うことで、
東條英機などA級戦犯7名が死刑執行され、
それよりもっと驚いたのはB級C級の戦犯5600名が世界中で逮捕され、
日本、上海、シンガポール、マニラなどで1000名が処刑されたとの事。
この事実は重い。
罪無き原子爆弾の被害者たち。
240万人~310万人とされる戦没者。
それを招いたのは《戦争》
(今また世界はロシアとウクライナの戦争で平和が脅かされている)
戦争による多くの犠牲を私たちは
《決して忘れてはならない》
そう思いました。
最近では良い日本映画
なかなか緊張感のある映画で、終戦の直前にこれほどのこと(宮城事件)がおきていたことを知りませんでした。中学・高校の歴史授業ではほとんど近現代に辿りつくことなく、しかもたどり着いたとしてもちゃんと教えられていません。私は授業の参考資料として観る価値のある作品だと思いました。
戦中、日本はもともとアメリカとまともに戦って勝てるとは思ってはおらず、全てはアメリカの世論を考慮しながら早期講和に持ち込む予定だったはずなのにずるずると最後まで行ってしまい『負ける戦争』をしてしまいました。負ける戦争を先導した大本営の中枢の人間模様に天皇が加わり我々には伺い知れない状況の一部を映画を通して知ることができて勉強になりました。
最近では良い日本映画だったと思います
狂気が足りなかった
私の想像では日本軍はもっと狂っていたのではないかと思う。ちょうど3ヶ月前に劇場で「戦場のメリークリスマス」を鑑賞したからか余計にそう思った。坂本龍一の演技の方が狂気に感じた。戦争体験した監督としていない監督の違いなのか。普通すぎてびっくりして、作品が入ってこなかった。
伝えること、伝わること!
この様な作品を観る度々思うのだが、事実部、脚色部各々有りますが「国」「国民」の運命はこうして決まって行く、人の、人々の命とは視野を狭くし暴走したエネルギーの何とも愚かしい事。
今、2023.2においてもロシア国内等世界の各地で進行している何とも愚かしい事。
「国」をいかにして存続させんとするか!の攻防戦を描いているが、どうも足元をすくわれた感が強い作品でした。
戦争の前線ではなく、会議室の中での出来事なので緊迫感に欠ける。 正...
戦争の前線ではなく、会議室の中での出来事なので緊迫感に欠ける。
正直前半はかなり退屈だった。
後半はポツダム宣言受諾反対の過激派が活発に動くが、所詮は敗戦が決まった中での悪あがきに過ぎない。
ただ、昭和天皇の国民への思いやりのコメントはよかった。
人間としての昭和天皇が活躍する初めての映画?
原田眞人監督による2015年製作の日本映画。
配給:松竹、アスミック・エース。
傑作との評判も高い岡本喜八監督による前作は見ている。何故再度作ったかが良く分からず、原田監督・脚本ということで期待度があまり高くなかったせいもあるかもしれないが、映画全体としてはかなりの好印象を持った。
8/15に至る前史、例えば山崎勉演ずる鈴木貫太郎首相の天皇による任命から、役所広司の阿南惟幾の陸軍大臣任命等、が丁寧に描かれていてストーリーは分かりやすかった。山崎と役所の演技もとても良く、史実との整合性は不明ながら、首相も陸大臣も随分と信念を有する魅力的な人物に見えることになった。
そして、何より昭和天皇演じた元木雅弘の演技がとても良かった。意識的に力を抜いたナチュラルな演技と話し方が育ちの良さと知性を醸し出し、天皇としてのリアリティを感じさせた。人間としての天皇陛下が活躍する映画は初めて見た気がする。とても新鮮であった。ポツダム宣言受諾を推し進めた官邸・内閣書記官長の迫水久常を演じた堤真一も好演。力まない自然な演技が素敵だ。
大臣達の会議(御前会議)で何とか受諾派と本土決戦派で互角に持ち込み、超法規的だが天皇の英断(聖断)で降伏を決定するシナリオは、迫水久常が考えたらしい。8/14になっても尚、本土決戦の主張は強力で、降伏決定は際どかったという事実が恐ろしい。映画の描かれ方、即ち首相や天皇が良く頑張ったということでは確かに有るが、際どかった理由には、意思決定に全体利益でなく組織利害が入りこんでしまう日本の意思決定のあり方の欠陥がある様にも思えた。
主役の1人松坂桃李外が演ずる畑中健二の描かれ方に関しては、脚本に違和感を覚えた。彼がひたすらエキセントリックで狂信的で、宮城事件はまるで全て彼が主導した様な描かれ方であった。原作は読んでいないが、上官達が主導している様に見える前作とはかなり描かれ方が異なる。一般的には事件の重要人物と目されている井田正孝陸軍中佐は主導していないのか?史実を捻じ曲げて縁者が乏しい畑中健二に宮城事件の罪を全てなすりつけていないか?事実ベースのリアリティを少々疑ってしまった。
原田作品では毎回思うのだが、説得力持たせる構成部分がいつも弱く、原田眞人は共同脚本にすべきだと思う。ただ今回は元木、山崎、役所、及び堤と主要俳優陣の頑張りで、かなり良い映画にはなっていた。
原作半藤一利、脚本原田眞人。
製作総指揮迫本淳一、エグゼクティブプロデューサー関根真吾、豊島雅郎、プロデューサ榎望、新垣弘隆、撮影柴主高秀、照明宮西孝明、録音照井康政、衣装宮本まさ江、美術原田哲男、編集原田遊人、音楽富貴晴美。
出演は、役所広司(阿南惟幾)、本木雅弘(昭和天皇)、松坂桃李(畑中健二)、堤真一(迫水久常)、山崎努(鈴木貫太郎)、 大場泰正(井田正孝陸軍中佐、軍務課員)、 関口晴雄(竹下正彦陸軍中佐、軍務課員、阿南陸軍大臣の義弟)、 田島俊弥(椎崎二郎陸軍中佐、軍務課員)、神野三鈴(阿南綾子)、蓮佛美沙子(蓮佛)、戸田恵梨香(保木玲子)、野間口徹(館野守男)、池坊由紀、松山ケンイチ(佐々木武雄)。
終戦に向かうまでの日々。閣僚を中心に描かれている。 玉音放送が行な...
終戦に向かうまでの日々。閣僚を中心に描かれている。
玉音放送が行なわれるまで大変であったと以前テレビで観たことがあったけど、命がけで放送されていたんだと。緊迫感があった。
日本国民を想っての昭和天皇の言葉は心打たれるものがあったし、演じた本木雅弘もよかった。青年将校を演じた松坂桃李も鬼気迫る演技でよかったと思う。
時系列的にもわかりやすく観ることができました。
太平洋戦争の記憶と歳月
本作は、半藤一利原作の再映画化であり、太平洋戦争末期、ポツダム宣言から玉音放送までの知られざる真実に迫った歴史群像劇である。豪華キャストで、日本政府と軍部の対立、戦争終結に反発する若手将校の暴走など、様々な困難を乗り越えて日本が如何にして終戦を迎えたかが克明に描かれている。当時を俯瞰して客観的に捉えているので、ストーリーは理解し易く、感情移入し易い。 歴史ドラマとして観ると面白い。
しかし、自国の終戦をここまで客観的に描かれると、日本人として釈然としない。戦争の責任者はいたはずなのに、登場人物全員が、戦争に翻弄された被害者に見えてくる。更に、登場人物は、皆、家庭的で優しい。政府と軍部の対立も、国会での政党間抗争のようだ。戦時下という緊迫感に乏しい。何より、実際に最前線で戦っていた人々の姿が皆無である。自国の終戦を悲劇として踏まえ、生々しい描写で、戦争の狂気にもっとリアルに迫るべきである。
1967年公開の前作は、ドキュメンタリーを観ているような臨場感があり、画面から戦争の狂気が迸り、作品全体が熱気を帯びていた。その鮮烈な印象は今でもはっきり覚えている。戦後22年の当時、太平洋戦争は歴史ではなく、忘れ難い過去だった。
両作を鑑賞して、両作の違いの背景にあるのは、戦争からの経過時間の差であり、戦後70年以上という歳月の経過で、太平洋戦争が日本人にとって遠い記憶になってしまったと実感した。戦後をいつまでも太平洋戦争後にするために、我々に出来ることは、当時を題材にした作品をたくさん観て、戦争の狂気の記憶を保持し、決して忘れないことであろう。
切なく悲しいし熱い思いは伝わってくる…けどそれこそが敗戦の原因…を体現した宮城事件
「ヒトラー 最後の12日間」とあわせて鑑賞。日独で同じ時期をテーマにした映画なのに全然違っていて、かつそれぞれの国柄がでているのが面白い。
「日本のいちばん長い日」ではポツダム宣言から受諾が決まるまで、延々と会議が続き誰もが決めきれない。陸軍と海軍はまるっきり逆のことを言ってるし、鈴木貫太郎首相もいまいち頼りない。会議は延々細かい文言の話だの、みんなで歌を歌うだの緊張感に欠ける。阿南陸相も役所広司はかっこいいけど言ってることは無茶苦茶、陸軍省内の暴発を避けたいのは分かるけど部下にきっぱりとは言えずあの手この手でなんとか乗り切ろうとする。内閣も陸軍省もなんとなくな空気で動いてる、そして一部が空気を自分に都合のいいほうに解釈して勝手に動く…そんなまさに日本的組織。
そんななかで聖断を下す昭和天皇の存在は一縷の光明というか、唯一の良心みたいな存在感がある。それでもよく言えば気配り・心配り、悪く言えばどっちともとれるふわっとした指示・発言が多く、感情を発しないのも相まって、責任者なのか責任者じゃないのかイマイチパッとしない。「ヒトラー 最後の12日間」を見た後だと、取り乱したり暴言吐いたり色々しつつもトップとして「俺が動かしてるんだぞ!」というヒトラーとの違いがありありと出ていて面白い。
そして、じゃあ天皇が決めたことなのでみんな従うかといったら、東條英機(元首相が!)が率先して「諫言するがそれが通らない場合は強制しても初心を断行する」なんて言ってしまう始末。昭和天皇、トップとして信頼されてない…(まあ史実なんだけど)。そしてその発言にたきつけられた熱い思いにたぎる若手将校たち。畑中少佐を演じる松坂桃李はなかなかの演技で、青筋たてるとか演技でできるんだな…と変なとこで感心した。しかし彼らは熱い思い「しか」ない。宮城突入までの作戦はかなり杜撰だし、蜂起すればほかの軍も同調してくれるというのも希望的観測にすぎず何か作戦や根回しがあるわけでもない。そもそも決起が成功していてもその先は本土決戦、国民2千万人が総突撃すれば勝てるなんて話だったけど、最後に放送局に押し入った際、局員は誰も協力せず一人ぼっちで決起を呼びかける虚しい姿…。ホントに熱い思い「しか」ない(陸軍的には必勝の信念ってやつか、まあほぼほぼ史実どおりなんだけど)。
で、蜂起の失敗と阿南陸相の切腹でこの映画は終わるが、映画では切腹そのものに焦点が当たっていたが史実では「全軍の信頼を集めている阿南将軍の切腹こそ全軍に最も強いショックを与え、~大臣の自刃は天皇の命令を最も忠実に伝える日本的方式であった」といわれ自決の結果、徹底抗戦や戦争継続の主張は止んだそうな。現代人には今一つわかるようなわからないよう感覚…。
「ヒトラー 最後の12日間」のほうと比べると、すべてがあいまいにもやもやとストーリーが進んでいく実に日本的な敗戦を現した映画だと感じた。
終戦
自分の内閣で戦争を終わらせるべく行動した鈴木貫太郎総理と、命をかけて陸軍のクーデターを許さなかった阿南陸軍大臣。
大和が沈没してから海軍では敗色濃厚だったが、陸軍は本土決戦による勝利を信じていた。
ポツダム宣言受諾の議論は平行線のまま、二度の聖断により結論を出すことになる。
天皇・総理と陸軍兵の間で板挟みとなった阿南はまさに孤軍奮闘であった。
昭和の日本男児の像を描いた作品。
切なく悲しく熱い日本人の物語
決起した青年将校と老練巧みな大臣のやり取り、登場人物皆が陛下の安全と陛下のお気持ちの中で揺れ、それぞれがそれぞれの形で終戦を迎えて行った。
役者陣の迫真の熱演は緊張感を盛り上げ、本当に引き込まれました。
いい映画だ
やっぱり岡本喜八版
鈴木貫太郎(山崎努)が総理大臣に任命され、陸軍大臣に阿南惟幾(役所)が推挙される。陸軍は沸き立つ。戦艦大和も沈み、海軍は金玉までも取られてる・・・と言った阿南。
天皇(本木)は国民のことを想いポツダム宣言受諾派で、阿南は国体護持が認められなければ戦争継続派。老齢の鈴木は自分の内閣で戦争を終わらせるという一点だ。そして陸軍少佐畑中(松阪)を中心とする陸軍将校たちは戦争続行派。
後半は主に陸軍将校たちの未遂に終わったクーデターを描くのは岡本喜八版と同じだが、もともとダラダラと描いていたのを何故また同じように描かなければならなかったのか。カラーになってることで人物がわかりやすいという利点だけ・・・
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