劇場公開日 2015年4月10日

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「承認欲求が導いた次のステージ」バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0承認欲求が導いた次のステージ

2015年4月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

所謂「嘗てハリウッドでの名声を全身余すことなく毛穴に入り込むまで浴びた俳優が、今は落ちぶれ一歩手前である自分自身を、再び栄光のステージへと上がらせる為の、最後のバクチを打つ」的な内容でございます。要約するとそんなお話ですかね(あんま要約してないか)。
そんな男の数日間(十数日?)を、全編長回しワンカット(ぽく)で追い続けるっつー非常にチャレンジングな映画です。

いやぁ、んー。つか、観ててめっちゃしんどかった。

色々しんどかった。まずマイケル・キートン演じるリーガン・トムソンの承認欲求の塊のような行動原理。また有名になりたい!返り咲きたい!と恥ずかしげもなく元妻に言ってしまえるほどにその欲求が大きい。だけどヒーロー映画『バードマン』で主役だった過去の黄金時代も同時に否定しているという。『バードマン』あっての名声だったのに、『バードマン』は否定する自己矛盾。このくすぶった現在の自分から脱却したい!最後の賭けはブロードウェイの舞台だ!という、リーガンから漂う尋常じゃない焦燥感。焦り。これがまずしんどい。
彼を取り囲む人間模様なんか、かなりキツイでしょ。主にエドワード・ノートン演じるマイク・シャイナーの存在がやば過ぎるでしょ。この自分大好き糞野郎の身勝手行為に振り回されるリーガン。そして利用されるリーガン。統合失調症気味なリーガン。お金のないリーガン。娘が言うこと聞いてくれないリーガン。セフレが妊娠しちゃったリーガン。批評家に拒絶されるリーガン。リーガンがどんどん追い詰められていく。それを無慈悲にワンカットで追っていく訳ですよ。そりゃあしんどいでしょ。彼の見てる幻覚(?)までもどしどしワンカットに取り入れたりして。いやしんどいしんどい。

「ハリウッドの現状に対する嘆き」「ヒーロー映画への皮肉」な要素、テーマ、メタファー(的なもの)なんかも入ってるんですけど、まあそこは自分にとっては、んー、何でしょ。あんまりピンとこなくて。
このリーガンという男はちゃんと独り立ちができるのか?と、鑑賞中はそこばっか気になっちゃって。まあね、あの衝撃(?)のラストに若干、心モニョらせつつ、劇場を後にしました。

つかああいうラスト、卑怯です。全編しんどくて、モニョった映画でした。

ロロ・トマシ