ある精肉店のはなし

劇場公開日:

解説

大阪貝塚市で代々、育てた牛を家族で食肉処理し、販売している精肉店を営む一家を、温かなまなざしで見つめたドキュメンタリー。大阪貝塚市にある北出精肉店では、7代目の長男が肉質を見極めて切り分け、妻は接客にいそしみ、ガレージで太鼓屋の看板を掲げる次男も自ら牛を解体し、なめした皮を使ってだんじり太鼓の皮の張り替えを行っている。しかし、穏やかに暮らす一家の心の中には、その仕事ゆえにいわれなき差別を受け続けてきた父の姿があった。それでも仕事に対する誇りをもって自らを律して生き、命を食べて人は生きるという生の本質を見つめ続けている一家の1年間を記録した。原発開発計画に反対する山口県祝島の人々を描いて大きな反響を呼んだ「祝(ほうり)の島」の纐纈あや監督の第2作。

2013年製作/108分/日本
配給:やしほ映画社、ポレポレタイムス社
劇場公開日:2013年11月29日

スタッフ・キャスト

監督
プロデューサー
本橋成一
撮影
大久保千津奈
録音
増田岳彦
編集
鵜飼邦彦
サウンドデザイン・整音
江夏正晃
音楽
佐久間順平
製作統括
大槻貴宏
製作デスク
中植きさら
グラフィックデザイン
大橋祐介
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フォトギャラリー

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映画「ある精肉店のはなし」より

映画レビュー

4.0殺すと言わんのやで。貴重な命をいただくんやで。

2024年12月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

たいていの人は肉を食う。江戸時代の日本人はそうでもなかった(鳥や猪は食った)が、今では牛も豚も馬も食う。だけど、その牛や豚をどのように捌いて、店先に並ぶ肉となっていくのか、ほとんどの人は知らない。教えてくれようとしても、たぶん知りたくないし見たくもないだろう。それは、残酷だということを知ってるから。残酷だとわかっていても、肉はうまい。このジレンマを消化するには、動物の命をいただいているのだという感謝の気持ちで報いるしない。食用にする肉だけでなく、皮から何から無駄にしないのは、せめてもの罪滅ぼしのような気もする。この映画にでてくる、とある地方の小さな屠場には獣魂碑があり、その前で獣魂祭が定期的に行われてきたのもその表れで、牛に感謝し供養してきた。例えば日本人は鯨を例にあげても、髭からなにから、全部食うか、細工物にしたり、何かの道具にしたし、港の高台に鯨塚を作って供養もしてきた。その「いただく」という感謝の念があったのは、屠殺の作業が身近だったからだろう。
先日上映していた『うんこと死体の復権』もそうだが、なにやら現代社会は、屠畜、排泄物、死などなど、本来生活のすぐそばにあった穢れに属する物や作業から遠ざかったせいで、必要以上に忌み嫌うようになった気がする。屠殺は郊外の大型工場で機械化され、葬式は家ではなく斎場で済まし、排泄物は回収に車でもなく下水に流す。
この映画にでてくる家族は、代々この精肉業の仕事に携わってきた。正面から「被差別部落」のことも語っている通り、偏見やタブーの中で暮らしてきたことと思う。だけど、家族みな、誇らしげな顔をしている。羨ましいくらいに職人の顔をしている。それはこの家族が誠実な商売をしてきたからだろうし、客の満足を肌で感じてきたからだろうし、恥じることはないという矜持があるからだろう。

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栗太郎

4.5命を頂いて生きてゆく

2024年6月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

命を頂いて生きていることをもう一度見つめ直すドキュメンタリー。

命から食べ物にする過程もさることながら
残った皮を太鼓にしてゆく過程も興味深いし
被差別部落の歴史にも触れていて、
生きてゆくことの二重の罪、
他の命を頂いて体を維持し
他を貶めることで己の優位を保とうとする
人間というものの二重の罪を深く感じました。

その中で人の命を育む仕事(食肉業者)としての
矜持を持って生きて来た人々の
淡々とした日常に、ただただ頭が下がる思い。

で、月に8回程映画館に通う中途半端な映画好きとしては

私は皮革製品の販売をしており、
食べるという以上にもっと沢山、
牛さんの命の恩恵に預かっているので、
このドキュメンタリーは観ておくべき作品だと思って鑑賞。

牛さんが生きている時に、柵や檻に引っかかって
ちょっと擦りむいて出来たような小さな傷に
文句を言う様な罰当たりな客には
もう何も売りたくない気持ちになりました。

@お勧めの鑑賞方法は?
今は自主上映が主流になってますが
チャンスがあれば是非ご覧ください。

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星のナターシャnova

5.0大阪府貝塚市の精肉店 の屠畜

2023年12月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

知的

幸せ

ある精肉店のはなし
大阪十三にある映画館「第七芸術劇場」にて鑑賞 2023年12月3日 アンコール上映
パンフレット入手
大阪府貝塚市、どこかご存じでしょうか
人口 82,593人 38,472世帯 令和5年12月1日現在 (貝塚市役所)
映画の中に「だんじり祭り」がありました。岸和田が有名ですが、「貝塚だんじり祭り」があります。岸和田市はその隣に位置している。
大阪弁は大きくわけて、摂津弁・河内弁・泉州弁に分かれるのですが貝塚市は「泉州弁」となります。なお大阪市は「摂津弁」
大阪市内までは鉄道では主として南海本線を利用し1時間半ほど。自動車だと阪和自動車道などを経由し約1時間ほど。
大阪市のベッドタウンとしての役割がある一方で、農業畜産業があります。

大阪府貝塚市、北出精肉店 ここでは牛を飼育し屠畜し、さばいて、売ってきた北出家のひとたち。
江戸時代末期1847年からで7代目、2012年貝塚市立と畜場が閉鎖されることに伴い、屠畜は終わりを告げる。

屠畜が映像で流される。牛はハンマーで頭を叩かれ、一撃で死んでしまう。
このような映像は初めての経験でした。思わず見入ってしまいました。子供たちがそばでじっと見つめている。
これらの映像は、パンフレットではイラストで表現されている。良くできたパンフレットです。分かりやすいです。
解体処理となった時に、速やかに手早くおこなっている。そう、牛は「商品」。鮮度が優先しているのでしょう。職人技ですよこれ。
内臓なども入念に処理されている。余すことなく使用するのでしょう。

亡くなった動物たちを供養している。

和太鼓。牛の皮を伸ばし、巨大な和太鼓を作っている。この部分はパンフレットにはないのが残念だけど
けっこう手間がかかっている。力技なんだなって感じた。

タブーとなっている「被差別部落」に真正面から向き合っているのは良いと感じました。

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大岸弦

5.0生きてる人生きてる家族生きてる街

2023年11月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

肉屋さんが牛を育て、歩いて行けるところに屠殺場がありジブで屠殺してお肉にしていく。現実とは思えないけど、そこには身近な暮らし毎日の暮らしの営みがあり、命、生き物!自分、自分の家族、街全てを慈しむように大切に暮らす人々が気負いなく暮らしていた。
個人的には家族なんてクソ食らえと嘯きたい自分だが、いや敬服する。
食べていきる。
屠殺するものはころすとはいわない。
丁寧に処理され丁寧にカットされ、丁寧に売られていく。
自分の食生活の雑さ貧しさを恥じる。
部落のこと、なんで?という疑問からの活動。自然な活動で家族、街、世間が変わっていく。温厚な革命家。
そして祭りの太鼓の皮も、そうか
繋がっていたのか。
自然とインドの伝統音楽芸能と、太鼓作りの職人、カーストや宗教差別を扱った情熱のムリダンガムにも思いを馳せる。リングワールド繋がった世界。
素晴らしい記録。忘れないための記録忘れないための鑑賞
感謝の気持ちでいっぱい

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