三姉妹 雲南の子

劇場公開日:

解説

「無言歌」のワン・ビン監督が、中国・雲南地方、標高3200メートルの高地にある貧しい村に暮らす幼い3人姉妹の生活に密着したドキュメンタリー。中国国内で最貧困と言われる雲南地方の山間の村に暮らす10歳の英英(インイン)、6歳の珍珍(チェンチェン)、4歳の粉粉(フェンフェン)の幼い3姉妹は、母親が家を出、父親は出稼ぎに行ってしまったため、長女が下の子の面倒を見ながら、家畜の世話や畑仕事に一日を費やし、子どもたちだけで暮らしている。貧しく厳しい環境の中、たくましく生きていく少女たちの姿をとらえた。第69回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門最優秀賞受賞。

2012年製作/153分/フランス・香港合作
原題:Three Sisters
配給:ムヴィオラ
劇場公開日:2013年5月25日

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(C)ALBUM Productions, Chinese Shadows

映画レビュー

5.0黙々と暮らす少女にまとわりつく世界は荒地

2022年9月15日
iPhoneアプリから投稿

配信で見ることができた、大変にありがたい。

画面に釘付け目が離せない。

雲南省標高3200メートルの、見捨てられたような暮らしをする村。洗羊塘(シーヤンタン)。雲南の子というタイトルでチベット族か雲南の山岳少数民族かと思っていたら、冒頭紹介される三姉妹も村の人もお名前から察するにみな漢民族のようだ。
風の音ひたすらゴーゴーと唸るような高地の風の音、犬、猫、羊山羊豚馬ロバ鶏家畜家畜家畜の鳴き声、人々の声、そうでなければ皆肺を病んでいるか結核のような乾咳の音、ナレーションも音楽もない。時折幼い姉妹が歌う歌。子を捨て出ていったからお母さんはいない。お父さんは時々出稼ぎに行くようだがうまくいってないようだ。
長女はほとんど笑わない。
貧しさとか、そんな言葉では表せない暮らしぶり。家畜の小屋とほぼ変わらない家。他の家の兄弟もお母さんが逃げて家も倒壊してしまったそうだ。親戚の家でご飯たべたりたまに泊まってTVをみたりするが、レベルの差が少し付いてるだけでみな貧しいから心からの助け合いでもないようだ。
風の音、家畜の糞と餌とほぼ混じり合うような生活。壊れた靴。それでもわずかな時間学校に行く。
貧しいがお父さんはとてもエレガント。
小さな妹たちはまだ幼く、笑顔でおもしろおかしく暮らしていたが、お父さんと街の生活をした後村に戻ると少し分別がついて母がいないことが身に染みるように。
ハイマツしかない高地、美しい山に囲まれているが誰が美しいと愛でるのだろうか、そんな生活。ハイマツの松ぼっくりや家畜の糞を集め、種イモを蒔いて細々と畑をつくり、人も豚もじゃがいもを食べる。
2012年香港フランス映画となっておりおそらくワンビンは中国当局に内緒で最貧の山の農村を撮影したのだろう、収穫祭として村の家にご馳走食べに集まった人々に村長は電気もガスも水道下水も、舗装した道もないこの村に、農村振興というスローガンの下政府は税金や社会保険料を取ろうとしていると話す。
大都会では普通の日本人より贅沢に暮らす富豪たちや、庶民もハリウッド映画やハリウッド顔負けの中国映画華やかな世界を楽しんでいる人もあるだろうう、そのような都会どころかバスで何とかたどり着くちかくの貧しく小さな市街地でも暮らしが成り立たない人たち。搾取と放置、無関心。
ひたすら村の主に家畜の喧騒と風の轟音と子どもや大人の咳の音を、ぬかるみを歩く足音を聴かせてワンビンは強くこの不条理世界を見せつける。

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redir

4.0ずうっと音のない

2013年6月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

ナレーションは一切入らず、映像だけで表現しようとした意欲作品。
映像だけで表現する、そうするからこそ映像である意味がある、と誰か偉い映画の人が言ってました。しかし実行には中々勇気がいるこの格言。

聞こえるのは高地を吹き上がる風の音、夕食後に見るテレビドラマの音、豚・羊・鶏・犬の鳴き声、急斜面を上るカメラマンの荒い息遣い、水道から滴って撥ねる飛沫。そして遊びまわる妹たちの声。
日は毎日暮れては昇り暮れては昇り、同じような日々が続いて行きます。
雄大と言ってしまえばそれで終わりの景色は、とても人間の足では脱出できないほど広く、どこまで行っても山、高地、ジャガイモ畑。
発狂しそう。

出稼ぎに出ている父と、失踪してしまった母。
世話になるのは伯母の家で、やっぱり肩身の狭い思いをしているようです。
伯母の家で物を食べるとき、一番上の姉はずっと立ちっぱなし。下の妹たちは壁際に座り、三人分の椅子はない。
家族ではない、ということが象徴されているようで、胸が締め付けられます。
長女はけっこうどこの家でも立ったまま食べているので癖なのかもしれませんが。

三姉妹で一緒にいるうちは、それでもまだ耐えられる。
一度帰ってきた父は再び都会へ出稼ぎに行きます。その際に、下のふたりの妹を連れていってしまいます。暗い家に一人きりになる。
別の家に住んでいる爺ちゃんが食事の面倒を見る、と父に約束してくれたので、夜は一人ではない。夜に料理をしにきてくれます。
だけど朝起きて、一人きりで電気のない暗がりで、昨日作った冷めたジャガイモの煮っ転がしか何かを食べている時の孤独感ったら……
映像に恣意的な音がないので余計に感じる。

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いずる

5.0貧しいが豊かだ

2012年12月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

一人っ子政策の中国なのに映画の題名が三姉妹というのはすごい(本当の題名は違うのかもしれないが)。この映画は中国の農村の貧しい生活を描きつつ実は都会では失われた豊かな生活を描いているのではと思ってしまった。
着の身着のままで、食事はジャガイモだけというのは確かに貧しい。寒そうなベットも貧しい。しかしそのジャガイモや立派な青菜のじつに美味しそうなこと。そして三姉妹が助け合って生きていることや親戚の仕事を手伝い食べさせてもらうなど、人と人とのつながりが濃密で豊かだ。
土壁がきれいだ。陽に照らされた土壁の前で談笑する姿は絵のようだ。
松ぼっくりを集めるシーンがある。特に意味を成さないシーンと思ったが、低い松の木がまばらに生えている山を見た時なぜ山に木が無いのだろう、なぜ松の木は低いのだろうと思った。木の乱伐によるせいなだろうか。
声高にメッセージを放つ映画ではないが、いろいろと語りかけてくる映画だった。映像がとてもいい。主人公の長女ががんばって勉強している姿がまたいい。

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目黒の二郎
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