流転(1956)

劇場公開日:

解説

“サンデー毎日”に掲載された井上靖の、厳しい芸の世界と愛情を描き、千葉賞を得た同名の原作を、「君美しく」の共同脚色者の一人、井手雅人が脚色、「大当り男一代」の大曽根辰保、石本秀雄のコンビが監督、撮影をそれぞれ担当した。主な出演者は「青空剣法 弁天夜叉」の高田浩吉、雪代敬子、「奥様は大学生」の香川京子、「旅がらす伊太郎」の北上弥太朗、「神州天馬峡」の市川段四郎、「続々獅子丸一平」の市川小太夫、「白井権八」の市川春代など。色彩はイーストマン松竹カラー。

1956年製作/94分/日本
原題:That Passionate Melody
配給:松竹
劇場公開日:1956年4月25日

ストーリー

天保十一年、江戸河原崎座は新作の勧進帳を成田屋が演るというので活気づいていた。作曲は名人杵屋六三郎だが、最も苦心した部分を成田屋の注文で変えられ、憤激した弟子の新二郎は成田屋と対立、遂に三味線を捨てた。ある日、寄席で、お秋という旅芸人の娘の、不思議に美しい踊りを見て、何者かに復讐するように、その芸に打込んだ。お秋の養父勘十は、娘を金のため成田屋の妻にしようとしたが、これを知った新二郎は杵屋の名跡も、慕い寄る師匠の娘おしのも捧に振り、お秋と寄席へ出る決心をした。その初演の日、お秋を奪おうとする勘十は小屋に放火した。新二郎は勘十と争うはずみに勘十を殺し、流浪の旅に出た。三年後、新二郎は、父の遺した三味線「谺」を売飛ばし、九州でヤクザに身を持崩していた。こうした一日、新二郎は、かつて成田屋にいた段六から、成田屋が贅沢三昧のあまり江戸お構いになり、最近その許しが出て江戸へ房るところだと聞き心に勃然と三味線への愛着が戻って来た。彼は「谺」を買戻そうとしたが何者かに買われた後だった。数日後、東海道を行く成田屋一行の宿に「谺」で勧進帳を復讐のように弾くお秋の姿があった。しかし成田屋に三年前の驕慢さはなく、お秋に詑びた上、江戸へ連れ帰った。成田屋は久々のお目見得に勧進帳を出そうと思ったが、新二郎は去り六三郎も中風とあって三味線を弾く者がなかった。そのころ江戸へ戻った新二郎は、六三郎の家を訪れたが、喧嘩で腕に傷を負い、しかも勘十殺しの罪で岡っ引源三に追われる身であった。その夜、新二郎は舞台稽古の成田屋を訪ねたが、そこには壊しい「谺」があった。お秋に助けられ憑かれたように三味線を弾く新二郎の昔に変らぬ力強い音。忍び寄った源三を制し「俺が負けた、そこにいるのは芸の鬼だ」という成田屋の静かな言葉が聞かれた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5芸道物語の佳作

2015年4月9日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

花形役者と対立した三味線の名手。
大曾根辰保監督による芸道物語の佳作。

溝口健二監督の名作『残菊物語』
成瀬巳喜男監督の名作『鶴八鶴次郎』
同じく成瀬監督&衣笠貞之助監督の名作『歌行灯』
井手雅人による脚本は、これらの名作映画の良い部分を繋ぎ合わせた様な内容に思える。
実際この作品の後、同じ年にやはり大曾根監督、高田浩吉主演、脚本井手雅人のコンビによって『鶴八鶴次郎』がリメイクされているだけに、単なるあてずっぽとも言い切れない気がする。

悲恋物語として観ると最後がやや唐突な感じがするのだが、作品中には明確に提示しないある事実。
ヒロイン役の香川京子と母親がどうしても教えなかった父親の名前。
そして師匠との恋愛関係及び旅先で知り合う親子…。

流石にこの当時としてこの関係は、若干濁して描かざるをえなかったとゆうことでしょうか。
勿論主人公との対比を目的としているのは明白ではあるし、この2人の恋愛関係の危なさを観客の想像に委ねての事ですが。
ちょっと強引すぎる気がしたのですが…。

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