劇場公開日 2013年5月25日

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プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命 : 映画評論・批評

2013年5月14日更新

2013年5月25日より新宿バルト9ほかにてロードショー

躍動するキャメラで紡がれる、父と子の重厚なクロニクル

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現代劇ながら古典のような重厚な香りが立ちこめる。ドストエフスキー的な血の因果、運命の流転を刻み込み、それでいてキャメラは常にダイナミックに躍動し、主人公らの主観に寄り添い続ける。

その冒頭からして驚異的だ。扉を開くとそこには闇夜に輝く遊園地が広がっている。キャメラはライアン・ゴズリングの背中をひたすら追い掛け、その果てに彼は愛車にまたがり観衆の前で命がけのバイク・ショーへと身を投じる。ここまでがすべて長回しのワンショット。まるで後に父の背中を求めて彷徨うことになる息子の未来を暗示するかのようだ。

ゴズリングは「ドライヴ」に通底するクールな着火点と予測不能な危うさとで疾走する。そんな彼がかつての恋人と息子を養うために着手するのが銀行強盗だった。しかし運命は中盤、新米警官役のブラッドリー・クーパーの登場で大きくうねる。いつしか試練を乗り越え英雄となるクーパー。そして宿命は、さらに彼らの息子たちへと委ねられていく。

この大胆なバトンリレーの物語を紡ぐのは「ブルーバレンタイン」のデレク・シアンフランス監督だ。前作では夫婦の出逢いと終焉を巧みな構成で魅せたが、本作はそこで培った自信がより堂々と炸裂。微細な間口から現代アメリカのクロニクルを掘り起こそうとする執念は、141分、ひと時も揺らぐことがない。

ちなみに舞台の町“スケネクタディ”はモホーク語で「松林の向こう側」の意。なるほど、タイトルに据えると実に動的な余韻が溢れ出す。血に抗い、飲み込まれ、また乗り越えようとする父子たち。それぞれの運命に観客もまた並走する。そうやって到達する “向こう側”の情景に、誰もが感慨のあまり軽い眩暈すら覚えることだろう。

牛津厚信

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