アンダーグラウンド(1995)のレビュー・感想・評価
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好きになれない
ぼくが好きになれない映画には、3つのタイプがある。
第1は、リアリティの欠如から嘘っぽさを感じる映画。現実に起こらないことが起こるからこそ映画は面白いのだが、作り手が真剣なら嘘っぽさを感じる余裕がないはず。たとえば、大林宣彦監督の「野ゆき山ゆき海べゆき」は、セリフが棒読みであるにもかかわらず、独特の世界に引き込まれる。しかし、次から次へと「そんな馬鹿な」と思える場面が続くと、馬鹿馬鹿しくて見ていられなくなる。たとえば、「BRAVE HEARTS 海猿」がそう。嘘っぽさと臭い台詞についていけない。
第2は、主人公の人物像が好きになれない映画。醜男でも軽薄でも犯罪者でもかまわないが、生理的に受け付けない人物像だと、見ていてイライラしてくる。
第3は、作り手の意図がわからないか、共感できない映画。たとえば、武智鉄二監督の「白日夢」がそう。いくら歯科医が舞台とは言え、口の中をアップで延々と見せ続けるセンスについて行けない。
「アンダーグラウンド」は、第2と第3に該当する。第二次世界大戦以降のユーゴスラビアの激動を描き、カンヌ映画祭でパルムドールを受賞したというので期待したが、冒頭から意味不明の連続だ。冒頭、主人公二人が泥酔して運転する車の後を、ブラスバンドが祝賀らしい曲を演奏しながら、走って追いかける。車と同じ速度で走り続けて、管楽器を演奏できるわけがない。そのうち、主人公が拳銃を取り出し、同乗者や楽隊に向かって乱射し始める。運良く誰もけがはしないが、この常軌を逸した振る舞いにまずカチンと来た。その後の場面でも、意味不明の行進の謎は説明されない。それどころか、次から次へと意味不明が続く。コメディに仕立てたいらしいが、戦争の悲惨な状況になじまない。ベニーニ監督の「ライフ・イズ・ビューティフル」では、ホロコーストとコメディというまさかの組合せが成功していたが、本作ではずっと違和感が続く。謎の楽隊は何度も登場し、悲惨な場面で祝賀曲を奏で続ける。作り手には申し訳ないが、半分ほど見たところで、見るに堪えなくなった。作品としての評価は諸兄に任せるとして、私は好きになれない。
酒瓶は頭で割れ
WOWOWにて、前情報なく鑑賞。半ばぐらいで混乱してきたので一度情勢など調べて鑑賞再開。
前半は何を楽しめばいいのか分からず戸惑いながらも見続けると、後半からラストにかけての怒涛の展開に圧倒される。
第3章が恐らく伝えたかったことなのかと。
それを踏まえたテーマは「戦争は愚かで虚しく、狂ってないとやってられない。どれだけ汚くても祖国は一つ」かなぁ。
3年後くらいにまた観たい。
前半は戸惑った、と言いつつもマルコの前半のハイテンションなシーンはどれも好き。腕時計を外したらワクワクする。
誰か一人が狂っているのでなく、時代がまさに狂乱していたということだろうか。
地下は共産主義、地下は時代錯誤、地下は闘争、など様々なものを暗喩しているのか。
月は真昼に照り、太陽は真夜中に輝く。
太陽の輝きを誰も知らない。
最後の川のシーンは救いなのだろうか。
恐らくそうなんだと思う。
祖国の歴史はいろいろあった、許すけど忘れない。
以下、印象的なセリフ。
「正しい人はとても暮らせない」
「上官は?…祖国だ」
「許そう、だか忘れない」
「この物語に終わりはない。苦痛と悲しみと喜びなしには語り伝えられない。昔、ところに国があった」
ブラスバンドで奏でるセルビア音楽は強烈なインパクトです。
ナチスに対抗したレジスタンス二人と恋人の女優。3人を主役として第二次大戦からユーゴ内戦までを描く物語。
「ユーゴの近代史について学びたい」と考えての鑑賞でしたが、大失敗でした。
抽象的、風刺的、そして皮肉や嘲笑を「これでもか!!」と言うくらいに強烈に振りかけたストーリーは、「似非映画ファン」「ユーゴを上っ面でしか知らない」私にとって、難解で理解しがたいものでした。
ただ、内戦に入ってからの描き方は個人的にはとても魅力的に映りました。
炎に包まれた車いすのシーンは見事。また、ラストからエンディングロールに移るシーンも、ユーゴスラヴィアへの郷愁と愛情を感じ、切なくなりました。
こんな映画を「面白い」と思えたら、素敵なんでしょうね・・・
泣きたいのに泣き出せない、笑いたいのに笑えない
ラストに凝縮されたユーゴスラビアの激動の歴史。
ユーモラスかと思えば衝撃な場面へとサバサバと切り替わり、時間の長さを感じさせないが、一度ではわかりずらいため、この作品に関しては、前もってあらすじを噛んでいたほうが良いかと思う。
なんだろう、泣きたいのに泣き出せない、笑いたいのに笑えない、不思議な映像。
【エミール・クストリッツァ監督ワールド全開のバルカン・ミュージックが全編に流れる、故郷旧ユーゴスラビアへの愛と哀しみを混沌とした世界観の中でコメディ要素を塗して描いた、物凄い吸引力を持つ傑作。】
■171分の長尺を全く感じさせない、度を遥かに超えた面白さを誇る作品。
・改めて、エミール・クストリッツァ監督の凄さを認識する。 バルカン・ミュージックの強烈さも映画の風合いを高めている。
・ボスニア・ヘルツェゴビア戦争により、故郷旧ユーゴスラビアを失った悲しみを芸術作品の数々を作り上げる事で、文化として昇華させているエミール監督の執念、郷土愛には敬服する。
・いつの日か、”5H20Mの完全版”を映画館の大スクリーンで観たいものである。
<2017年10月15日
自宅近くのイオンシネマが”名画ピックアップ”として掛けてくれた。今作を大スクリーンで鑑賞出来た事は、実に実に、有難く、嬉しかった・・・。>
とんでもない
20年ぐらい前にビデオで観た時は途中でウトウトして結局意味が全然わからず、ずっと刺さった小骨みたいになってた映画(サントラはCDでよく聴いてたけど)。映画館で小骨を抜くことができてよかった。ありがとう早稲田松竹!
しかしまあ、こんなにもとんでもない映画だったのか!
高田純次みたいな詐欺師の伊達男と、佐々木希みたいな超絶美人の男性依存女、あと生命力だけ異常に強い男の3人を中心とした大河ドラマなんだけど、とにかく3人ともアクが強くてめちゃくちゃで、バンバン人が死ぬんだけどかなり笑ってしまった。
3人とも正義とは無縁の超自己中で、ちょっと引くぐらいやりたい放題なんだけど、最後まで観終わると、あのくらいのことをしないと「自分の国がなくなる」みたいな過酷な現実を乗り越えられなかったのかな…と思ったり思わなかったり。高田純次の行動は明らかにやりすぎだけど。
手榴弾爆発シーンの笑っちゃう感じとか、結婚式シーンの「明らかにヤバいことが起こるぞ…」感とか、車椅子が燃えながら回るシーンの美しさとか、ラストのパーティーシーンの昂揚しながら泣けてくる感じとか、とにかく印象的なシーンがいっぱい。冒頭の動物園爆撃シーンとかどうやって撮ったんだろう…
最後まで観ると「社会的な映画を観た」って気持ちになるけど、みんな酔っ払ってる時に戦車の中にサルが入っていって、楽団の男が「とんでもないことになるぞ…」ってつぶやくとことか、完全に笑わせようとしてるよな…。
最初のほうで、爆撃受けてる中で男が不倫相手とセックスしてて、いよいよイキそう…って時に爆撃がいよいよ激しくなって、女が「いやまじで死ぬでしょこれ」って逃げ出して、えぇ~ってなった男が崩れそうな家の中で自分で抜いてるシーンも面白かったなぁw
この映画、永遠の名作!20世紀の傑作!みたいに言われてるからそういうモードで観に行ってしまったけど、公開した時は超賛否両論だったらしく、そりゃそうだよなーと。
すごい面白かったけど、こんな闇鍋みたいな映画が傑作!って言われてるのはちょっとなんか居心地悪いというか。
うわースゴイ。当事者だからこそ描けるのだろうなあ。完全部外者として...
うわースゴイ。当事者だからこそ描けるのだろうなあ。完全部外者としては、しばらくあっけに取られる&笑っていいの?と戸惑うけれど、観てるうちにおもしろくて楽しんでしまう。ラストは胸に痛い。
許そう でも忘れない
旧ユーゴの歴史や政治の知識を得て、以前はわからなかった暗喩や悲しみを少しは理解できた。
クストリッツァはどうしようもない暗さと悲劇を喜劇的に描く。冒頭の走りながらのブラスの躍動感といったらない。
イヴァンが戦争のはらわたの男の子と知り、大きくなったねえとずっと見守りました。
ユーゴの人たちはこの映画をどんな風に捉えたのか知りたいと思った。
「完全版」ヲ観た
前、後編を土日の二日に分けて鑑賞。
クストリッツァの作品を観るのは新作の「オン・ザ・ミルキー・ロード」に次いでニ作目。
名前は知っていたし去年にも特集などで気にはなっていたが足を運べずに。
彼のバンド「NO SMOKING ORCHESTRA」のアルバムを聴いて気に入り今ではクストリッツァのファン。
ライブに行けた人は羨ましい限りで。
本作の通常版も観ていない状態で完全版を長時間でリスキー覚悟で結果、文句無しの大正解。
魅力的な映像のLOOKに全く飽きない物語の展開と基本的に笑える滑稽な場面から最後には感動させられる不思議な感覚に!?
ラストの宴にソニが不在なのがまた泣けてしまい最後には色々と考えさせられる。
爆発的なパワーがゴオゴオと吹きすさぶような映画だ
クストリッツァ監督の集大成と言える作品だろう。
戦争の不条理を背景に展開されるエミールクストリッツァ監督独特の色を持ったドラマ。
時折挟まれるコメディ要素は笑えるのだが、悲しい。
不条理を背景にしつつも、どんよりとした暗さのないはつらつとした人間が出てくる。
その騒々しさは、なんでこいつらこんな元気なんだよっていう一種の狂気すら感じさせる。
素晴らしい音楽(ゴラン・ブレゴヴィッチ)は喧騒を感じさせるが、どこか遠くを見ているような、二ヒリスティックにも感じる、映画全体の印象と非常にマッチしている。
さいごらへんの展開からラストのシーンはすごい
この映画以上に感情をつき動かされた映画はなかなかない。
うわースゴイ。当事者だからこそ描けるのだろうなあ。完全部外者として...
うわースゴイ。当事者だからこそ描けるのだろうなあ。完全部外者としては、しばらくあっけに取られる&笑っていいの?と戸惑うけれど、観てるうちにおもしろくて楽しんでしまう。ラストは胸に痛い。
嫌だ。こんなの。
何も知らずに地下で生活していた方が幸せだったかな…
どれほど苦しいことか。
この世から自分の国が、自分の国の言語が、自分の国の文化がなくなる。
そして、ユーゴスラビアという国は、世の中から忘れられてしまう。
絶望だろうな。
残酷な世界
三時間と長いけれど後半は前半の伏線の回収だったり、怒涛の追い上げで三時間もの長さがあるということを忘れてしまっていた。
あまりユーゴスラビアのことは知らずに観ました。
正直見終わって一体これはなんだったんだろうかとおもったけれど、見終わってからいろいろと考えてみると、相当重たい話なんだと改めて考えさせられました。
前半はとても楽しそうで、地下生活なのに凄いなぁと思いました。
チンパンジーが戦車使ったり、楽しそうな音楽とそれに合わせて踊っていたりと、とても楽しそうでした。
でも、後半、とくにラストの一時間にかけてはとても残酷で、今までの楽しそうなのはどこにいったのかと言いたくなりました。
ラストシーンはなにも無かったような、楽しそうな姿があって、そんな楽しそうなことが続けばいいのにと思いました。
ユーゴスラビアのことをもっと知ってから観れば、もっと考えさせられるんだろうと思いました、今度は話の背景をもっと知ってからもう一度観たいと思います。
めちゃくちゃ
素晴らしい音楽。
こんなにフィクションなのに、こんなに現実を見せつける映画とは。
エゴと平和の希求とのバランスがはっきりわかりやすく描かれていて、でも、難解な感じもする。
私が特に心に残ったシーンは、川で泳いでいた時にヘリで襲撃を受けて父親が息子を見向きもしないところと、電動車椅子がぐるぐる回るところと、最後に半島から島となって離れていくところです。
ユーゴスラビアという、昔、存在した国。
美しくかつしたたかに、愚かで辛いことを忘れない。
怒涛の映画
す、すごかった、この映画・・・
のっけから、ものすごい勢いで畳み掛けてくるこのパワーはなんだろう。旧ユーゴの怒涛をそのままに体現しているかのような映画でした。
マルコとクロとエミリアの禍々しさと愛嬌と豪胆さが、混ぜこぜで降りかかってくるような感じで、異様なまでに彼らに惹きこまれます。
そしてこの音楽。どうしようもなく突き動かされ、踊り続けなくてはいけなかった彼らの躍動と悲哀が表現されているように感じました。
はちゃめちゃなんですけど、それがそのまま説得力を持っているような映画でした。
クストリッツァ監督、うなりましたです。
こんな映画あるんだ。
何年か前に映画館で観た時に冒頭10分でとんでも無い映画だと思った。
役者が役者に見えない。
このパワフルな人たちは世界の果てに実在する思える程、ストーリー性が無い、先なんて読めない。
ただ観ているだけで面白くて、綺麗で、ひたすら人間臭い。
普通計算したってこんな話は描け無いし、撮れない。
ラストシーンは完璧過ぎるし、乾いた悲しさに溢れている。
人間はゴールテープを切ればそれ以上走る必要は無い。それまでは必死に生きるしか無いのだ。
って感じの映画。
全46件中、21~40件目を表示