劇場公開日 2011年3月26日

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「私の心を掴んで離さない、ショックが心から離れない衝撃の問題作。」わたしを離さないで Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5私の心を掴んで離さない、ショックが心から離れない衝撃の問題作。

2011年10月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

怖い

これは、近未来SF作品では無い、もしかして、知らない何処かで本当に行われているかも知れないと言う恐怖に駆られた映画だった。
医学の進歩により、本来なら助からない命を、ドナーの臓器提供により生き延びる事が可能となった現在、それは犯罪では無いし、双方が納得していれば、臓器提供するドナーは、
現在まで生きていた肉体は、死滅しても、身体の一部の臓器が、他の人の臓器となり、新しい肉体で生き始める事で、新しい命を得て生きる事になるのだ。
それ自体は決して悪い事ではないだろう。ドナーの家族も、時にそうして、命がバトンされる事で、ドナーとの死別の心の悲しみを和らげられる事すら時にはある。
海外では、脳死や事故死等で、死が判定された時、臓器提供をするドナーは、生前、臓器提供する事に同意しているので、自分の肉体の死を受け入れる。が、それはあくまでも
不慮の事態であり、ドナーが生れ付き、本人の意思で判断出来ない年齢から、ドナーとして生きる事が運命付けられているのでは決して無い。
ドナーの生産工場と言える、寄宿舎ヘールシャムでの青春物語は、余りにも残酷だ。
改めて、生命とは?生きるとは?人生の目的は?人を愛するとは?生と死とは?
生命の領域、それは人間と神との関係の領域でもあるが、敢えてこの映画は神の領域を無視している。
人間は、死を間近にすると、自己の人生の清算を誰でもするのだろうか?
2回に及ぶ臓器提供を済ませて、衰弱したルースが、キャッシーとトミーに、最後の償いをしようと試みたが、その願いも結果的には、キャッシーとトミーが一抹の夢をも叶える事が出来ない、悲しいラスト、
3人が、初めて外出したシーンが蘇る、そして、3度目の臓器提供をするトミーの笑顔が脳裏から離れない。只ガラス越しに、見守る事しか許されないキャッシーの虚ろな顔が心を捉えて離さない。
暫らくは、未だ、心の整理が付かないだろう。予告を見た時から見たかった。映画館では、怖くて無理と判断して、DVDが出る迄待ってから観たが、予想はしていても、此処まで引きずる映画になるとは・・・
片田舎の風景が、そして海に打ち上げられた、古船が、ルース、キャッシー、トミーの悲運をより印象深いものにする。
私たちは、この一瞬一瞬を、日々大切に、愛しんで、生き抜いて行きたい。
そうだ、自分の人生を大切に生きる事、愛する事は、それはきっと他の人の人生を同時に豊かに、活かす事になる。人の心は決して、離れずに繋がっているのだから!
愛する大切な人と、是非一緒に観て欲しい作品だ。
生きる事、命の尊厳についての映画なら、『ミスタ・ノーバディ』や『最高の人生の見つけ方』そして『ミリオンダラー・ベイビー』『サイモン・バーチ』と観比べてみても、良いかも知れない。

ryuu topiann